算数や国語にくらべて社会の勉強を後回しにしている人は多いです。
ですが、第一志望校合格に向けて社会は重要な得点源にできる科目です。
そこで、中学受験生向けに、社会の実力を今よりワンステップ・ツーステップアップさせる勉強法を紹介します。
※関連記事:中学受験社会の勉強:いつからはじめる?どの問題集を使うべき?
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中学受験において、社会は「暗記科目」として軽視されがちですが、実際には得点差が大きく開きやすい重要科目です。
地理・歴史・公民と幅広い分野にまたがり、理解力・読解力・記述力も求められるため、正しい勉強法を実践しているかどうかで合否を左右する決定的な差がつきます。
「社会は覚えるだけの科目だから簡単」と思っていると、本番の入試で思うように点が取れずに後悔することが多いです。実際の入試問題では、単純な一問一答形式よりも、以下のような「思考力」や「応用力」が求められる問題が増えています。
このような問題に対応するには、単なる暗記ではなく「なぜそうなるのか」「どうつながっているのか」を理解しながら学ぶ必要があります。
国語・算数・理科に比べて、社会は比較的早い段階から本格的に対策を始める家庭が少ない傾向にあります。そのため、以下のような理由で差がつきやすくなっています。
また、社会は1問の配点が比較的大きい学校もあり、特に記述式問題で得点できるかどうかで大きな差が出ます。これは偏差値50〜60の中堅校でも顕著に見られる傾向です。
近年の中学入試では、社会の出題傾向にも大きな変化が見られます。以下のような特徴が強まっており、単なる暗記科目から「実力を試される科目」へと進化しています。
これにより、社会は単なる得点源ではなく、受験生の思考力や総合力を見抜く科目として位置づけられています。
特に難関校では「社会=記述勝負」になるケースも増えており、しっかりとした準備が合否を分けるカギとなります。
中学入試の社会では、非常に細かい知識や高度な理解を求められます。
一気に知識や理解を高めるのは大変なので、段階的に実力を高める方法が有効です。
そこで、社会の実力をステップアップさせていく勉強法を紹介します。
最初のステップは、社会に出てくる大枠の理解と基本的な知識の暗記です。
参考書や図鑑でイメージをつかみ、重要なポイントをメモにまとめます。
基礎がしっかりしていると、後のステップがスムーズに進みます。
難関中学を目指す子は3年生終わりまでにこのステップを卒業するのが目安です。
具体的にどのように勉強すれば良いか、以下にまとめています。
社会の勉強のスタートは「興味」です。
丸暗記するより、興味を持って覚えるほうが理解しやすく、後々の応用力が身につきます。
下記の3点を実施しておくと、子どもが地理や歴史に興味を持つきっかけになります。
※関連記事:中学受験をする小学生におすすめの図鑑(理科、社会、国語、算数)
日本地図のパズルを使って遊びながら都道府県名や地域ごとの特産品を勉強します。小学校低学年の間に実施するのがおすすめです。
大抵の日本地図や日本地図パズルには都道府県名以外に、地域別の特産品や歴史的建造物も書かれています。
パズルで遊びながらそれらを一緒に学びます。
※関連記事:中学受験をする小学生におすすめの日本地図パズル
テレビや新聞のニュースについて、親子で話すようにします。特に政治・経済・貿易・国際情勢について話しましょう。
中学入試の社会では地理・歴史・公民の融合問題や時事問題も出てきます。最近の話題についての知っておくと時事問題に正解しやすくなります。
なかでも、現代の日本と諸外国との関係は地理・歴史とからめて出題されやすいです。
地理はエネルギー問題や災害(台風、地震など)に関係しますし、地域ごとの天気(雨量、降雪など)や特産品は歴史にも関係します。
最近のニュースを話題にすることで融合問題や時事問題、また思考力問題を解くための重要なヒントを得られます。
社会に興味を持ち、地理や歴史の大枠を把握できたら、問題集で細かく暗記していきましょう。
この時点で一度、過去問や模擬試験を解いてみるとどこまで暗記が必要そうかイメージしやすくなります。
最終ゴールのイメージをつかんでおくと、知識の定着や応用力の向上につなげられます。
このステップでは、解答を確認し、間違えた部分を再度復習することがたいせつです。
なお、難関中学志望の子は4年生でこの段階に入りたいところです。
※関連記事:難関中学に合格できる勉強法
このステップでは、以下の方法で勉強すると効果的です。
まずは教科書を読み、各分野の基礎知識を把握します。
教科書は重要ポイントを文字や写真、イラストで具体的に解説しているので、知識のベースづくりとして便利です。
適切な難易度の問題集を選びます。
最初は基本的な問題からはじめ、徐々に難易度を上げていくと良いでしょう。
中学受験向けで、イラストや写真が豊富な参考書を選ぶと、より勉強しやすくなります。
問題は一度解くだけでなく、繰り返し解きましょう。
同じ単元の問題を繰り返し解くことで、知識が定着しやすくなります。
正解・不正解だけでなく、解説にもしっかり目をとおします。
なぜその事件が起きたのか、なぜ答えがその地域なのか、誤った選択肢はどこが間違っているのかを理解すると知識を補充できます。
問題集を解いていて間違えた問題や理解が浅い部分をみつけたら、それらをまとめた誤答ノートを作成します。
自分だけのオリジナル参考書・問題集です。
このノートを活用して、同じ間違いを繰り返さないように勉強します。
問題集での演習が進んだら、模擬試験を受けてみます。
緊張感のある雰囲気で制限時間内に問題を解くことで、実際の試験に近い状況で対応する力を養えます。
記憶があいまいになっている範囲も確認でき、その後の勉強に活かせます。
模試を受けてわからない部分や疑問点があれば、教科書や参考書を再度確認します。
社会の先生に質問をするとさらに理解を深められます。
次に、難易度の高い問題や記述対策に移ります。
参考書や実践的な問題集を使って、深い理解を目指しましょう。
人に説明できるほど理解できれば、入試の社会で高得点の可能性が広がります。
基本的な知識を覚えたら、参考書の発展的な部分(ワンポイントアドバイスなど)や特集もしっかり読みます。
そこには地理や歴史の詳細な情報や事例が含まれており、赤字や太字の用語だけでは把握しきれない知識を知ることができます。
この内容が入試社会の資料読み取り問題や思考力問題を解く力につながります。
用語や地名、人名や歴史上の出来事を単独で覚えるだけでなく、それが他の事柄とどのように関連しているかを考えましょう。
例えば、地理の範囲で伊万里焼を勉強します。佐賀県や長崎県で有名な焼き物です。
伊万里焼の発祥は、実は豊臣秀吉による朝鮮出兵です。朝鮮半島から日本に連れてこられた陶工たちが朝鮮半島の優れた焼き物技術を日本に伝え、それがきっかけで伊万里焼など現代に残る多くの有名な焼き物につながりました。
このように事象や知識の関連性を理解すると、より広範で実践的な深い理解が得られます。
学習した知識を実際の事例やニュースに結びつけてみると、理解がより深まります。
入試社会では、現代の社会との関わりが出題されやすい傾向があります。
白地図を用意し、そこに地名や特産品、その土地で起こった歴史上の出来事を書き込みましょう。
例えば兵庫県なら下記のような内容を書き込みます。
ほかにも、都道府県別に必須事項を書き込むと地理・歴史・公民の知識を整理できます。
思考力問題や記述問題に対応するため、専用の問題集で演習します。
入試社会は事象の因果関係をとらえ、論理的に書かせる問題が出てきます。
グラフや表の読み方、地形図から年間雨量や農産物の推定の仕方、歴史資料の読み取り方を練習して身につけましょう。
勉強がハイレベルになってくると、一度覚えた知識を忘れ、戦乱の名前や時代が混乱するなどしてきます。
この頃には定期的な復習が必要です。
週ごと・月ごとに、過去に解いた問題や問題集を取りだし、忘れがちなポイントを再確認します。
中学入試当日まで復習を続けることで、社会を重要な得点源にしやすくなります。
塾の授業がある日は、授業で学んだ内容を同日中に復習しましょう。
理解が追いついているか確認することが重要です。
週に一度、その週に学んだ・覚えた社会の内容をまとめて復習することで、知識が定着しやすくなります。
重要なポイントや記述問題など難しい箇所に焦点を当てて復習すると効果的です。
塾の教材や市販問題集の学習した日付を書いておけば、どこからどこまで復習すれば良いか一目瞭然です。
月ごと、あるいは祝日がくるたびに復習しましょう。
授業→その日の復習→週末の復習→月ごとの復習
上記のように、1か月の間に同じ範囲を4回勉強する計算です。
何度も勉強することで勉強時間が長くなるように感じるかもしれませんが、実際はむしろ短くなります。
一度学習してから早く復習すると短時間で勉強がすむことがわかっています(一般社団法人 日本経営心理士協会より)。
入試2~3か月前からは、仕上げとして「広い範囲の問題を解く力」を養いましょう。
単元別演習なら解けるのに範囲が広くなると解き方を思い出せない単元は、まだ理解や定着が足りていない範囲です。
そこで最終ステップとして、過去問演習と模擬試験の活用に重点を置きます。
入試までのラスト3か月は月1~2回は入試過去問や模擬試験の過去問を解きましょう。
入試問題や模擬試験の問題はコンパクトにまとまった良質な総合問題です。
弱点になっている問題や苦手な範囲を探しだします。もちろん、時間配分の練習にもなります。
さらに、模擬試験の過去問題も解いて総合演習を行います。確認テストの代わりです。
苦手範囲を見つけたら、改めて単元別に演習をしましょう。
中学受験の社会は「地理・歴史・公民」の3分野に分かれ、それぞれに異なるアプローチが必要です。ここでは、分野ごとの具体的な勉強法を、プロ講師の視点からわかりやすく紹介します。
地理の勉強でまず活用すべきは、「地図帳」と「統計資料集」です。特に中学受験用の地図帳は、受験に出やすい情報がコンパクトにまとめられており、視覚的な記憶と情報整理に非常に役立ちます。
受験では「データを読み解いて答える」形式も増えているため、統計に強い子は地理で安定して得点できます。
地理の学習では、「位置」「その地域の特色」「代表的な産業」をセットで覚えることが重要です。
例)
愛知県
→ 中部地方に位置/人口多い/自動車工業が盛ん(トヨタ)
セット暗記のポイント:
このように「なぜその産業なのか?」を意識すると、記憶が定着しやすくなります。
白地図は、アウトプット中心の勉強に欠かせないツールです。書いて覚えることで、理解度と定着度が飛躍的にアップします。
効果的な使い方:
おすすめ白地図プリント:
中学受験では、年号の丸暗記よりも「歴史の流れ」や「因果関係」の理解が重視されます。
具体的な学習法:
「○○のあとに△△が起きたのはなぜ?」という問いを自分で立てて考えることで、本番の記述対策にもつながります。
歴史は「人物名」「出来事」「背景」を関連づけて覚えると圧倒的に理解が深まります。
例)
聖徳太子 → 十七条の憲法 → 中央集権国家の始まり
勉強のコツ:
出題が多い時代やテーマを優先的に押さえることも効率的です。
【頻出テーマ例】
各時代の「政治・経済・文化」をセットで押さえると応用問題にも対応可能です。
公民は小学生には抽象的な言葉が多く、苦手意識を持ちやすい分野です。まずは用語の意味をかみくだいて理解することが第一歩。
勉強のポイント:
例)
「三権分立」→「国を動かす3つの役割があって、力を分けてバランスをとってる」
時事問題は公民分野と深く関わるため、ニュースに関心を持つことがそのまま入試対策になります。
活用法:
例)
「選挙のニュース」→「民主主義ってどういう仕組み?」と公民の基礎につながる
公民分野では、「言葉を覚える」よりも「仕組みを理解する」ことが重要です。例えば…
このような疑問に答えられるようになるには、図解や動画教材、親子の対話が有効。理解を深めた分だけ、記述問題でも得点源になります。
中学受験において「社会」は、効率的な教材選びと継続的な学習ツールの活用が大きな差を生む教科です。
ここでは、実際に合格者が使っていた役立つアプリ・YouTubeの活用法を具体的に紹介します。
つづいて、受験合格者が社会の受験対策におすすめの問題集を紹介します。
その名のとおり、マンガで地理や歴史を学べる学研のシリーズです。
「勉強しよう!」と言わなくても、リビングに置いておけば子どもが勝手に手に取ってくれるので、社会の勉強のスタートとして子どもに取りくませやすいです。
地理上巻↓
地理下巻↓
歴史上巻↓
歴史下巻↓
政治・国際↓
中学受験対策の定番、「自由自在」です。大容量で、毎日コツコツ、長い期間かけて勉強できます。
これ1冊仕上げれば、あとは過去問だけでも大丈夫です。
歴史の流れを理解するのに非常に便利な図鑑です。
問題集とセットで使うとかなり覚えやすく、忘れにくくなります。
難関中学対策として必須の記述問題対策です。
記述の勉強をとおして「なぜ?」から学べるので、苦手克服にも役立ちます。
つづいても、難関中学対策として定番のシリーズです。難関中学対策用につくられており、特に首都圏の受験者には必須です。
中学受験の社会は「覚える量が多い」「用語が難しい」と感じやすく、子ども一人ではモチベーションを保つのが難しい場面もあります。そんなとき、保護者ができるちょっとした声かけや日常の工夫が、大きな支えになります。
地理の学習では、「地図帳をどれだけ使いこなせるか」が得点力を左右します。
しかし、子どもにとっては地図帳がただの「本」に見えてしまうことも。そこで、保護者の関わりが有効です。
子どもが「地図は役に立つ」と実感するには、「一人で黙々と」よりも「誰かと一緒に」が効果的。
親が関心をもって接するだけで、社会=つまらない科目 という印象をガラリと変えることができます。
公民の分野では、「政治・経済・国際関係」など普段の生活では馴染みが薄い内容が問われます。
ただし、これらの内容は時事問題としても頻出であり、実は日常生活と密接に関係している分野です。
子どもが自分の意見を持つには、日常の会話の中で思考を促すことが重要です。
「社会って、意外と身近なんだ」と気づくことができれば、公民への苦手意識も減っていきます。
社会科は、中学受験4科の中でも特に「覚えることが多い」と言われる科目です。
地理・歴史・公民と3分野にわかれ、それぞれに大量の用語・図・統計などが登場します。
また、保護者が「〇〇覚えた?」「復習した?」と毎回詰問するのではなく、
「この白地図、塗ってみた?」など楽しさや工夫を共有する姿勢が、子どもの不安を和らげます。
子どもが感じる困難 | 保護者のサポート例 |
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地図が苦手 | 一緒に地図帳を見て、特産物や地形を話題にする |
公民がわからない | ニュースや子ども新聞を一緒に読む習慣をつける |
覚えることが多くて疲れた | 一気に詰め込まず、小分けにして達成感を重視 |
子どもは、親の反応をとても敏感に受け取ります。
「社会はおもしろい!」「できるかも」と感じられるような伴走型の関わりこそが、長期戦である中学受験を乗り越える力になります。
社会は「覚えるだけ」と誤解されがちですが、実際の入試では思考力・読解力・分析力が求められるケースが増えています。
ここでは、ありがちな学習の失敗例と、そこから抜け出す具体策を紹介します。
「語句をひたすら暗記する」やり方は、一見効率がよさそうに思えても、入試本番では応用問題に対応できず点が伸びないという落とし穴があります。
例:
・地図上の地域と特産物は暗記したが、「なぜその産業が盛んなのか」と問われると答えられない
・用語は覚えたが、資料の読み取り問題になると手が止まる
過去問を早くから解き始めたことで安心し、「点数を取ること」だけが目的になってしまうケース。
結果として、解きっぱなしで復習が不十分になり、同じミスを繰り返してしまうことが多いです。
「忙しくて時間が取れない」「やる気が続かない」など、日々の勉強が続かないケース。
社会は短期間の詰め込みが効きづらい科目なので、継続できないと知識が定着しません。
社会は出題傾向を読み解き、適切な復習を積み重ねることで確実に得点源になる科目です。過去問は単なる演習ツールではなく、戦略的に使うことで合格に近づきます。
誤った学習法 | 正しい対策 |
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暗記だけで覚えようとする | 背景・理由と一緒に覚える |
過去問を解くだけで満足 | 解き直しと復習ノートで定着 |
続かないからあきらめる | スモールステップと習慣化が重要 |
社会は「戦略的に取り組めば確実に伸びる科目」です。
過去問と復習の質を高め、合格点を安定して取れるようにしていきましょう。
中学入試の社会は、単なる暗記では通用しない時代に突入しました。2025年度入試では「思考力型」「時事対応型」「記述式・資料読解型」の3大トレンドが明確に出ています。
近年の入試では、教科書の枠を超えた“社会の本質理解”を問うテーマの出題が増えています。
例:
「北海道でホタテ養殖が発展した理由を資料と地図から読み取りなさい」(2024年入試)
2026年度以降の社会入試でも、SDGsやESG、カーボンニュートラルといった「時事と教科のつながり」を問う問題が急増する見込みです。
例:
「SDGsの観点から、過疎化が進む地域の課題と取り組みを説明しなさい」(東京の私立中学)
2025年は、「考えを説明する力」「複数資料を読み取る力」が合否を左右します。
社会は「やっただけ伸びる」科目です。しかし、時代に合った学び方を選ばないと、努力が結果に結びつきません。
受験社会の最新傾向 | 伸びる勉強法 |
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時事との関連問題が増加 | ニュースと教科書をリンクさせる習慣をつける |
記述式・思考型問題が中心に | 解き直し+理由まで説明する練習を積む |
地理・歴史・公民の融合型出題も | 分野を横断して「流れ」をつかむ |
国算理の対策に時間を取られる受験生が多い中、社会で安定して得点できる子は差をつけやすいです。
トレンドと出題傾向を意識し、“理解型・思考型”の学びに切り替えることが合格への近道です。
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