入試で英語資格による優遇制度を設けている大学はたくさんあります。
優遇制度のあるほとんどの大学で英検を利用できるため、早い段階から英検利用を考えている人は多いです。
ですが、良いことばかりではなくいくつかの注意点も存在します。
そこで、大学受験で英検利用を考えている人向けに「英検利用のメリット」と、英検取得のタイミングや対策法、英検利用の注意点を紹介します。
※関連記事:大学受験の英検利用制度の内容と活用手順
かつての大学入試では、「読む」「書く」が中心の英語力が問われていました。しかし、近年のグローバル化や大学教育の変化により、英語の4技能(読む・聞く・話す・書く)をバランスよく評価することが求められるようになっています。
その流れの中で、英検(実用英語技能検定)を活用する大学が急増しており、「英検を持っていること」が大学受験の合否に直接関わる時代になりつつあります。
以下では、その背景や英検の役割、共通テストとの比較を詳しく解説します。
英検が大学入試で注目されている最大の理由は、大学側のニーズと高校生の準備段階での負担軽減が両立できるからです。具体的な背景には以下の3つが挙げられます。
文部科学省は、これまでの読解中心の入試から、英語の「実践的運用能力」を測る方向に転換しています。これにより、英語4技能を網羅的に測定できる外部試験(英検など)の活用が推奨されるようになりました。
英検は、スコアや合格級を提出することで、出願条件を満たせたり、加点される制度が多くの大学で導入されています。特に総合型選抜や推薦入試では、学力の証明として英検のスコアが高く評価されます。
英検は年に3回(S-CBT含めればさらに多く)実施されるため、大学入試に向けて早い段階から計画的に取り組めます。これは、1発勝負の入試に比べて精神的・戦略的な負担を大幅に軽減できます。
※なお、英検S-CBTについては、以下の記事でくわしく解説しています。
英検scbtと従来型英検との違い
大学入試改革の中で、英語は以下の4つの力をバランスよく評価することが求められています。
従来の大学入試では、特に「書く」「話す」の評価が難しかったため、外部試験の導入が検討されてきました。その中でも英検は、すべての級において4技能を測定できる試験として、特に信頼されています。
技能 | 英検での評価方法 |
---|---|
読む | 長文読解問題で語彙力・理解力を測定 |
聞く | ネイティブ音声によるリスニング問題 |
書く | ライティング問題(自由記述) |
話す | 面接形式のスピーキングテスト |
このように、1つの検定で全技能が測れるのは英検の大きな強みであり、入試においても大学側が評価しやすいのです。
英検と大学入学共通テスト(英語)の違いを比較すると、それぞれにメリットがありますが、英検には「加点」や「免除」などの直接的なメリットが多く存在します。
比較項目 | 共通テスト | 英検 |
---|---|---|
評価される技能 | 主にリーディング・リスニング | 4技能(読む・聞く・書く・話す) |
実施回数 | 年1回 | 年3回+CBT(複数回) |
結果の使い方 | 点数 | 級またはスコアで提出 |
加点・免除の仕組み | 制限あり | 多くの大学で加点・免除制度あり |
難易度の調整可能性 | 不可(1回のみ) | 受け直し可能 |
特に英検準1級・2級を取得していれば、MARCH以上の私立大学や国公立大学でも優遇されるケースが多数あります。
大学受験での英検利用のメリットを以下にまとめました。
参考:日本英語検定協会
※関連記事:大学受験で英検準2級が利用できる大学の一覧
※関連記事:大学受験で英検2級が利用できる大学の一覧
大学・学部のなかには「英検の級を一定レベル以上取得しておくこと」が出願条件になっているところがあります。
中央大の総合型選抜や関西大学・商学部の公募推薦などでは推薦入試で出願資格として英検の取得を義務付けています。
そうした大学・学部では、英検を取得してはじめて出願できます。
出願資格としては英検2級以上が多く、取得している高校生が少ないため、出願資格を満たしている時点で合格の可能性は高いです。
入試当日の英語試験に加点されたり、一定以上の得点に換算される優遇制度も多いです。
例えば秋田の国際教養大学では英検準1級で共通テストの英語を「満点」扱いしてくれます。
ほかにも英検準2級で7割に換算してくれるところも多いです。
なお、当日の入試で7割を越えれば高いほうの点数を得点に算入してくれます。
英検の取得級やスコアによっては英語の入試自体を免除してくれる大学もあります。
例えば明治大学・経営学部の一般入試では英検スコア2200以上で当日の英語試験が免除・加点されます。
ここまで、英検優遇制度のメリットを3つお伝えしてきました。
加点や得点換算される場合、英検を入試より前に取得しておくと高3になってから英語の受験勉強にあまり時間を回さなくても済みます。
浮いた時間を英語以外の科目(国語・数学など)に回せます。
結果的に、英語だけでなくほかの入試科目でも高得点をねらえるようになります。
英語資格利用制度は、こうした「ダブルのメリットがある制度」と言えます。
大学入試で英検を活用する際、「どの級を持っているか」によってチャンスが大きく変わります。
ここでは、英検準1級・2級・準2級のそれぞれがどんな大学で有利に働くのか、どのように勉強すればよいかを詳しく解説していきます。
英検準1級は、大学入試英語レベルの最上位層に位置付けられます。合格していれば、早慶・上智・国公立最難関・G-MARCHの中でも上位校などで大きな評価を受けることができます。
※英検準1級を利用できる大学一覧はこちら:
英検準1級が利用できる大学の一覧
英検準1級は、大学英語〜英語専門職レベルの読解力・語彙力が求められます。特に語彙と長文読解、英作文の対策が重要です。
※なお、以下の記事で英検準1級の対策についてくわしく解説しています。
英検準1級リスニングのコツ
英検準1級ライティングの対策
英検準一級ライティング予想問題25問と模範解答例50
英検2級は「高校卒業程度」とされる級で、MARCHレベルや国公立大学で非常に多く活用されています。
準1級ほどのハードルはなく、英語に自信のある高校生なら高2・高3で十分狙える級です。
※英検2級を利用できる大学一覧はこちら
英検2級が利用できる大学の一覧
※以下の記事で、英検2級の対策におすすめの問題集を紹介しています。
英検2級問題集おすすめ
英検準2級は「高校中級レベル」に該当し、中堅私立大学や公募推薦・指定校推薦などの出願資格として使われることが多いです。
英検準2級を利用できる大学一覧はこちら:
英検準2級が大学受験で優遇される大学一覧
※なお、以下の記事で英検準2級対策におすすめの問題集を紹介しています。
英検準2級問題集おすすめ10選
時期 | 学習内容 |
---|---|
4〜6月 | 単語・熟語・文法の基礎固め |
7〜8月 | 過去問演習&ライティング対策 |
9〜10月 | 二次試験対策・模擬面接練習 |
11月〜1月 | 仕上げ・CBTやS-CBT受験などで実力確認 |
英検を取得できていると加点などの優遇を受けられます。
大学入試で有利になるとはいえ、高校の勉強もあるので英検対策はできるだけ効率よく進めたいところです。
そこで、英検を時短で取得するための対策法を紹介します。
※関連記事:英検2級の問題集
英検に合格するには、何より英単語の知識を豊富にする必要があります。
単語帳を使って単語を一気に覚えておきましょう。
英検の各級合格に必要な目安単語数を表にしました。
級 | 必要単語数(目安) | 学力目安 |
1級 | 13000語 | 大学上級 |
準1級 | 9000語 | 最難関大学受験 |
2級 | 5000語 | 難関大学受験 |
準2級 | 3000語 | 高2~中堅大学受験 |
3級 | 1800語 | 中3 |
4級 | 1200語 | 中2 |
5級 | 600語 | 中1 |
英検合格を目指すうえで、英文法のハードルが高くなります。学校でまだ習っていない範囲を自力で勉強しないといけません。
参考書や問題集を何周も繰り返す必要がありますが、その時間がない人も多いかもしれません。
そんなときは簡単な英文や参考書に載っている例文を暗記しましょう。
参考書の例文は、学習している範囲の文法について最もベーシックな使い方をしている基本文です。
この文法はこういう使い方をするというベースとなる文を覚えておけば、応用がききやすくなります。
これにより、文法問題で練習するときに早く文法を使えるようになります。
早く英検に合格するには、リスニングの音源などを使ってシャドーイングする方法が非常に有効です。
シャドーイングとは、英語の音声を聞いてその1-2秒遅れで真似して発音する勉強法です。
英検3級までは出題傾向に合わせた対策だけでも合格を取りやすいです。言いかえれば、英語力を上げなくてもテクニックで合格の可能性は上げられます。
ですが、準2級以上は英語力がないと正解しづらい問題構成になっています。
英検合格に必要な英語力は下記の2点です。
シャドーイングするには①英文を聞き取り、②どういう意味なのかを理解して、③その意味の英文をつくる作業を同時に行う必要があります。
シャドーイングをはじめてしばらくは、英語の音声につづいて真似するのに非常に苦労するでしょう。
同じ音源で繰り返しシャドーイングすると、次第にスムーズに真似できるようになります。
英検の長文は、はじめから最後までじっくり読む必要はありません。
先に問題を見て「何を問われているか」を確認し、答えを本文から探すようにしましょう。
ある程度の読解力は必要ですが、すみからすみまで正確に読み解かなくて済みます。
英検合格者の多くはライティングで点数をかせいでいます。
ライティングは形式が決まっているうえに、自分の知っている単語・文法だけで解答を作成できます。
2級になると社会の動きや国際問題がテーマです。テーマが無限にあるわけではないので、過去問や予想問題でテーマと解答を覚え込んでおきましょう。
試験時には、事前に暗記した解答をカスタマイズします。
これで減点を大きく減らして、高得点を見込めます。
リーディング・ライティング終わってリスニングに問題が移るときには、音声が始まるまえに問題文を先に見ておきましょう。
上記の3点を確認したうえで音声を聞けば、かなり聞き取りやすくなります。
英検S-CBTで受検するとヘッドフォンやイヤフォンで音声を聞けるので聞き取りやすくなります。
一方で、先読みするには画面を切り替える必要があるため、紙の受検にくらべて先読みに時間がかかるというデメリットもあります。
両方受けてみて、自宅のネット環境や好みで選びましょう。
英検3級以上は面接(二次試験)があります。面接では英語で質問されて英語で回答します。
このとき、面接官のほうを見て「はっきり・ゆっくり」発音しましょう。
英検を勉強している人のなかには、「早く英語を発音しないと!」と焦ってしまっている人もいます。
言うまでもありませんが、私たち日本人にとって英語は外国語です。スラスラとよどみなく話さなくて大丈夫です。
むしろ、早く話そうとして聞き取りづらい発音になるほうがマイナスです。
ゆっくり・はっきり発音しましょう。
最後に、大学入試で英検利用をする際の注意点をお伝えします。
※関連記事:英検scbtは大学受験に使えない?scbtの入試利用やスピーキングで有利になる理由を解説します
英検利用のメリットはいくつかありますが、出願資格・得点加算の場合、注意が必要です。
英語以外の科目が高得点勝負になるからです。
英検利用で受ける場合、自身だけでなくほかの受験生も英語の得点が8割や満点扱いになります。
ということは、同じ制度を利用しているほかの受験生に差をつけるには英語以外の科目で高得点を取らないといけなくなります。
しかも英検を早めに取得できていれば英語の大学入試対策に時間を回さなくて良くなるので、必然的に英語以外の科目で高得点を取りやすくなります。
「英検を取れたからもう大学に受かったようなものだ」と油断しないようにしましょう。
英検受検時に自身の生年月日を登録します。このとき、生年月日を間違えないよう注意しましょう。
大学への出願書類と英検の登録で生年月日が違っていると、大学入試に英検資格を利用できなくなる可能性があります。
スマホで登録すると、数字の入力間違いが起こりやすいです。入力後、確認しておくと良いですね。
高3で英検利用しようと思ったら、英検利用にこだわる期限を設定しておきましょう。
前述のように、英検取得は高2までがおすすめです。
大学受験勉強に時間を回さないと、高3になっても英検の目標級に合格できなかった場合にかなり不利になります。
高2最終までに目標の級を取得できなかったら英検利用をあきらめるなど、撤退のタイミングを事前に決めておきましょう。
ほとんどの大学では、英語の外部検定資格として英検を利用できます。ですが、一部の大学では英検が利用できません。
例えば、上智大学はTEAP利用です。
英検を利用できるかどうか、志望大学の募集要項を確認しておきましょう。
英検を大学受験に活かすには、単に合格するだけでは不十分です。スコアの提出方法や大学ごとの活用条件、最新の入試情報の把握が重要になります。以下では、受験生が押さえておくべき3つのポイントを解説します。
大学にスコアを提出する方法は大きく分けて2つあります。
多くの大学では、英検から発行される「合格証明書」「CSEスコア証明書」のコピーを出願書類に添付する方式を採用しています。大学指定のフォーマットがある場合は、それに従って提出が必要です。
一部の大学では、英検協会から大学に直接スコアを送信してもらう「Score Direct方式」を採用しています。CBTやS-CBTで受験した場合は特にこの方式が多いです。出願前に大学の要項でスコア提出形式を必ず確認しましょう。
英検が使える入試方式や条件は大学ごとに異なります。以下のポイントを必ずチェックしてください。
各大学の英検利用状況をまとめた情報は、大学公式HPや英検協会の英検活用校でも確認できます。
大学入試制度は毎年のように変わっています。 英検の扱いが翌年には変更されていることもあるため、常に最新の情報を得る姿勢が大切です。
SNSの情報だけで判断せず、必ず大学公式の発表を確認しましょう。
英検を大学受験で活用するにあたって、受験生や保護者からよく寄せられる質問にお答えします。
多くの大学では、「2年以内に取得したスコア」が有効とされています。たとえば、2026年4月に大学に入学する場合、2024年4月以降に取得した英検スコアが有効となる大学が多いです。
ただし、大学によっては「試験日から出願締切日まで1年以内」など独自のルールを定めている場合もあるので、必ず要項で確認しましょう。
大学入試で英検を使う際、評価対象は多くの場合「CSEスコアの合計」または「Reading + Listening」です。つまり、スピーキングやライティングが不得意でも一定のスコアがあれば評価されることが多いのです。
ただし、準1級以上を狙う場合や面接(英検二次)を突破する必要がある場合は、スピーキング対策も必要です。
S-CBT受験(1日で完結)なら、受験の回数も多く挑戦しやすいです。
※以下の記事で、英検S-CBTについて解説しています。
英検scbtと従来型英検との違い
試験 | 特徴 | 大学入試での活用 |
---|---|---|
英検 | 日本国内向け、4技能評価、階級制(5級~1級) | 多くの大学が利用、共通テスト代替や加点制度あり |
TOEIC L&R | ビジネス英語、リスニング+リーディングのみ | 一部の大学で利用可だが、スピーキング評価なし |
TOEFL iBT | 海外留学向け、アカデミック英語、全世界で評価 | 難関国立・私立大学や国際系学部で評価されることあり |
国内の大学受験では英検が最も対応校が多く、制度にも対応しやすいのが特徴です。
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