「室町時代の文化は覚えることがたくさんあってややこしい」
このように、室町時代の文化を苦手に感じている高校生は多いのではないでしょうか。
南北朝文化、北山文化、東山文化の3つに分かれており、どの作品がどの文化なのか区別する必要があります。
室町の文化は、時代ごとの特徴をとらえると覚えやすくなります。
そこで、南北朝文化、北山文化、東山文化の3つに分けて特徴と覚えるべきことがらをまとめて紹介します。テスト対策用に練習問題も用意しました。
※関連記事:日本史文化史の参考書と覚え方
室町時代には大きく3つの文化が栄えました。南北朝文化、北山文化、東山文化です。
各文化は時代背景を反映した特徴を持っていました。
南北朝文化は1336年から1392年の南北朝時代に発展した文化です。
南朝と北朝に分かれて争っていた時代であり、南北朝の動乱が反映された軍記物語や歴史物語が中心でした。
また、朝廷では後醍醐天皇を中心に「平安時代の朝廷の姿」に戻そうと有職故実が盛んでした。官位の決め方、任官手続き方法やしきたりなど、朝廷で行う業務マニュアルのようなものです。
キーワード:南北朝の動乱、歴史書・軍記物、有職故実
南北朝文化で覚えておくべき作品とその作者を以下の表にまとめました。
作品名 | 作者名 | ポイント |
神皇正統記 | 北畠親房 | 南朝の正統性を主張 |
梅松論 | – | 北朝の正統性を主張 |
太平記 | 不詳 | 鎌倉幕府滅亡から南北朝動乱までを南朝寄りで記述 |
難太平記 | 今川貞世(了俊) | 鎌倉幕府滅亡から南北朝動乱までを北朝寄りで記述 |
増鏡 | 二条良基? | 後鳥羽天皇から後醍醐天皇までの朝廷を題材 |
建武年中行事 | 後醍醐天皇 | 朝廷の年中行事を月別にまとめた書物。有職故実。 |
職原抄 | 北畠親房 | 官位の任官手続きなどをまとめた書物。有職故実。 |
五山文学 | 義堂周信、絶海中津ら | 京都や鎌倉の禅僧の間で行われた漢文学全般 |
天竜寺庭園 | 夢窓疎石 | 禅の精神を取り入れた枯山水の庭園 |
西芳寺庭園 | 夢窓疎石 | 禅の精神を取り入れた枯山水の庭園 |
菟玖波集 | 二条良基 | 準勅撰連歌集 |
応安新式 | 二条良基 | 連歌の規則をまとめた書物 |
北山文化は15世紀はじめ、3代将軍足利義満の時代にさかえた文化です。室町幕府の最盛期ともされた時代です。
南北朝が合一され、室町幕府と朝廷が良好な関係を築いていました。
公家文化と武家文化が融合された新たな文化や禅宗の影響を受けた文化が誕生しています。
キーワード:武家と公家の融合、禅宗
北山文化で覚えておくべき作品とその作者を以下の表にまとめました。
作品名 | 作者名 | ポイント |
鹿苑寺金閣 | 足利義満 | 第1層が寝殿造風、第3層が禅宗様 |
瓢鮎図(ひょうねんず) | 如拙(じょせつ) | 公案(禅で与えられる課題)を題材とした水墨画 |
寒山拾得図(かんざんじっとくず) | 周文 | 水墨画 |
能の大成 | 観阿弥・世阿弥 | 足利義満の保護 |
風姿花伝(花伝書) | 世阿弥 | 能の理論を記した書物 |
南宋の官寺の制にならい、足利義満が臨済宗の寺を管理下に置くためにつくった制度です。
京都と鎌倉の寺を五山と十刹にまとめ、格付けします。南禅寺がトップ(「別格」)、次が「五山」、その下が「十刹」、最後に「諸山」というランク分けです。
所属する僧侶を管理し人事権を持つ「僧録」を置きました。僧録の事務所を僧録司といいます。初代僧録司は春屋妙葩(しゅんおくみょうは)です。
別格本山南禅寺 | ||
京都五山 | 鎌倉五山 | |
天竜寺 | 1位 | 建長寺 |
相国寺 | 2位 | 円覚寺 |
建仁寺 | 3位 | 寿福寺 |
東福寺 | 4位 | 浄智寺 |
万寿寺 | 5位 | 浄明寺 |
京都十刹 | 鎌倉十刹 | |
諸山 |
寺側からすると「幕府の管理下に置かれる」というデメリットがありますが、「幕府の保護を受けられる」というメリットもあります。
東山文化は15世紀後半の8代将軍足利義政の時代にさかえた文化です。禅の精神にもとづいた洗練された「侘(わび)」(閑寂な趣)と「幽玄(ゆうげん)」(趣が深く味わいが尽きないこと)の文化です。
キーワード:侘、幽玄
東山文化で覚えておくべき作品とその作者を以下の表にまとめました。
作品名 | 作者名 | ポイント |
慈照寺銀閣 | 足利義政 | 下層が書院造、上層が禅宗様 |
慈照寺東求堂同仁斎(じしょうじとうぐどうどうじんさい) | – | 書院造の代表例 |
龍安寺石庭 | – | 枯山水の庭。龍安寺は世界遺産に登録。 |
大徳寺大仙院庭園 | – | 枯山水の庭 |
四季山水図巻 | 雪舟 | 水墨画 |
四季花鳥図 | 狩野元信 | 狩野派の2代目 |
新撰菟玖波集 | 宗祇 | 正風連歌の確立 |
犬菟玖波集 | 山崎宗鑑 | 正風連歌を自由なものにした俳諧連歌の確立 |
樵談治要 | 一条兼良 | 足利義尚に政治の仕方を教えるための書物 |
公事根源 | 一条兼良 | 宮中の行事の解説書。有職故実。 |
立正治国論 | 日親 | 法華経のみを信じるべきという考え方。民衆に広まった。法華一揆、天文法華の乱につながる。 |
閑吟集 | – | 小歌の歌集 |
御伽草子 | – | 一寸法師、浦島太郎などの短編物語集 |
芸術の名称 | 大成・創出した人物 | ポイント |
水墨画 | 雪舟 | 墨の濃淡で表現する絵画 |
大和絵 | 土佐光信 | 唐絵に対して、日本の風景を描いた絵 |
狩野派 | 狩野正信・元信 | 室町幕府の御用絵師となった |
侘茶の創出 | 村田珠光 | 村田珠光が創出して、武野紹鷗が発展 |
生け花 | 池坊専慶 | |
正風連歌 | 宗祇 | |
俳諧連歌 | 山崎宗鑑 | 正風連歌より庶民的 |
唯一神道 | 吉田兼俱(かねとも) | 反本地垂迹説:神がメインで、仏はその化身であるとする考え方 |
浄土真宗中興 | 8世蓮如 | 越前吉崎道場などを創設。寺内町に発達。 |
練習問題を解いて、南北朝文化を暗記しましょう。
料理のプロも認める最上級のオリーブオイル!『オリーブハート』作品名 | 作者名 | ポイント |
( ) | ( ) | 南朝の正統性を主張 |
( ) | – | 北朝の正統性を主張 |
( ) | 不詳 | 鎌倉幕府滅亡から南北朝動乱までを南朝寄りで記述 |
難太平記 | ( ) | 鎌倉幕府滅亡から南北朝動乱までを北朝寄りで記述 |
( ) | – | 後鳥羽天皇から後醍醐天皇までの朝廷を題材 |
建武年中行事 | ( ) | 朝廷の年中行事を月別にまとめた書物。有職故実。 |
職原抄 | ( ) | 官位の任官手続きなどをまとめた書物。有職故実。 |
五山文学 | ( )、( )ら | 京都や鎌倉の禅僧の間で行われた漢文学全般 |
天竜寺庭園 | ( ) | 禅の精神を取り入れた枯山水の庭園 |
西芳寺庭園 | ( ) | 禅の精神を取り入れた枯山水の庭園 |
( ) | 二条良基 | 準勅撰連歌集 |
( ) | 二条良基 | 連歌の規則をまとめた書物 |
作品名 | 作者名 | ポイント |
神皇正統記 | 北畠親房 | 南朝の正統性を主張 |
梅松論 | – | 北朝の正統性を主張 |
太平記 | 不詳 | 鎌倉幕府滅亡から南北朝動乱までを南朝寄りで記述 |
難太平記 | 今川貞世(了俊) | 鎌倉幕府滅亡から南北朝動乱までを北朝寄りで記述 |
増鏡 | 二条良基? | 後鳥羽天皇から後醍醐天皇までの朝廷を題材 |
建武年中行事 | 後醍醐天皇 | 朝廷の年中行事を月別にまとめた書物。有職故実。 |
職原抄 | 北畠親房 | 官位の任官手続きなどをまとめた書物。有職故実。 |
五山文学 | 義堂周信、絶海中津ら | 京都や鎌倉の禅僧の間で行われた漢文学全般 |
天竜寺庭園 | 夢窓疎石 | 禅の精神を取り入れた枯山水の庭園 |
西芳寺庭園 | 夢窓疎石 | 禅の精神を取り入れた枯山水の庭園 |
菟玖波集 | 二条良基 | 準勅撰連歌集 |
応安新式 | 二条良基 | 連歌の規則をまとめた書物 |
(1)古来の先例にもとづいた、朝廷や公家の公式行事や官位・装束などを研究することを何といいますか。
(2)『神皇正統記』は北朝と南朝のどちら寄りに書かれていますか。
(3)『梅松論』は北朝と南朝のどちら寄りに書かれていますか。
(4)五山の禅僧たちによる漢字文学を何といいますか。
(5)北畠親房は北朝と南朝のどちら側の公家ですか。
(1)有職故実
(2)南朝
(3)北朝
(4)五山文学
(5)南朝
作品名 | 作者名 | ポイント |
( ) | 足利義満 | 第1層が寝殿造風、第3層が禅宗様 |
瓢鮎図(ひょうねんず) | 如拙(じょせつ) | ( )を題材とした水墨画 |
( ) | 周文 | 水墨画 |
能の大成 | 観阿弥・世阿弥 | ( )からの保護 |
風姿花伝(花伝書) | ( ) | 能の理論を記した書物 |
作品名 | 作者名 | ポイント |
鹿苑寺金閣 | 足利義満 | 第1層が寝殿造風、第3層が禅宗様 |
瓢鮎図(ひょうねんず) | 如拙(じょせつ) | 公案(禅で与えられる課題)を題材とした水墨画 |
寒山拾得図(かんざんじっとくず) | 周文 | 水墨画 |
能の大成 | 観阿弥・世阿弥 | 足利義満の保護 |
風姿花伝(花伝書) | 世阿弥 | 能の理論を記した書物 |
別格本山:( )寺 | ||
京都五山 | 鎌倉五山 | |
( )寺 | 1位 | ( )寺 |
( )寺 | 2位 | ( )寺 |
( )寺 | 3位 | ( )寺 |
東福寺 | 4位 | 浄智寺 |
万寿寺 | 5位 | 浄明寺 |
京都十刹 | 鎌倉十刹 | |
諸山 |
別格本山:南禅寺 | ||
京都五山 | 鎌倉五山 | |
天竜寺 | 1位 | 建長寺 |
相国寺 | 2位 | 円覚寺 |
建仁寺 | 3位 | 寿福寺 |
東福寺 | 4位 | 浄智寺 |
万寿寺 | 5位 | 浄明寺 |
京都十刹 | 鎌倉十刹 | |
諸山 |
(1)五山十刹の制をはじめたのは誰ですか。
(2)五山十刹の僧を管理する役職を何といいますか。
(3)初代の僧録司は誰ですか。
(4)観阿弥・世阿弥を保護した将軍は誰ですか。
(5)室町時代に座となって諸国で活躍した4つの能の集団をまとめて何と呼びますか。
(1)足利義満
(2)僧録司
(3)春屋妙葩
(4)足利義満
(5)大和猿楽四座
作品名 | 作者名 | ポイント |
( ) | 足利義政 | 下層が書院造、上層が禅宗様 |
( )東求堂同仁斎 | – | 書院造の代表例 |
( )石庭 | – | 枯山水の庭。龍安寺は世界遺産に登録。 |
大徳寺大仙院庭園 | – | 枯山水の庭 |
四季山水図巻 | ( ) | 水墨画 |
四季花鳥図 | ( ) | 狩野派の2代目 |
新撰菟玖波集 | 宗祇 | ( )の確立 |
( ) | 山崎宗鑑 | 正風連歌を自由なものにした( )の確立 |
樵談治要 | ( ) | 足利義尚に政治の仕方を教えるための書物 |
( ) | 一条兼良 | 宮中の行事の解説書。有職故実。 |
立正治国論 | ( ) | 法華経のみを信じるべきという考え方。民衆に広まった。法華一揆、天文法華の乱につながる。 |
閑吟集 | – | 小歌の歌集 |
( ) | – | 一寸法師、浦島太郎などの短編物語集 |
(2)
芸術の名称 | 大成・創出した人物 | ポイント |
( ) | 雪舟 | 墨の濃淡で表現する絵画 |
( ) | 土佐光信 | 唐絵に対して、日本の風景を描いた絵 |
狩野派 | ( 父 )と( 子 ) | 室町幕府の御用絵師となった |
( )の創出 | 村田珠光 | 村田珠光が創出して、武野紹鷗が発展 |
生け花 | 池坊専慶 | |
正風連歌 | ( ) | |
俳諧連歌 | ( ) | 正風連歌より庶民的 |
唯一神道 | 吉田兼俱(かねとも) | ( )説:神がメインで、仏はその化身であるとする考え方 |
浄土真宗中興 | 8世法主( ) | 越前吉崎道場などを創設。寺内町に発達。 |
(1)
作品名 | 作者名 | ポイント |
慈照寺銀閣 | 足利義政 | 下層が書院造、上層が禅宗様 |
慈照寺東求堂同仁斎(じしょうじとうぐどうどうじんさい) | – | 書院造の代表例 |
龍安寺石庭 | – | 枯山水の庭。龍安寺は世界遺産に登録。 |
大徳寺大仙院庭園 | – | 枯山水の庭 |
四季山水図巻 | 雪舟 | 水墨画 |
四季花鳥図 | 狩野元信 | 狩野派の2代目 |
新撰菟玖波集 | 宗祇 | 正風連歌の確立 |
犬菟玖波集 | 山崎宗鑑 | 正風連歌を自由なものにした俳諧連歌の確立 |
樵談治要 | 一条兼良 | 足利義尚に政治の仕方を教えるための書物 |
公事根源 | 一条兼良 | 宮中の行事の解説書。有職故実。 |
立正治国論 | 日親 | 法華経のみを信じるべきという考え方。民衆に広まった。法華一揆、天文法華の乱につながる。 |
閑吟集 | – | 小歌の歌集 |
御伽草子 | – | 一寸法師、浦島太郎などの短編物語集 |
(2)
芸術の名称 | 大成・創出した人物 | ポイント |
水墨画 | 雪舟 | 墨の濃淡で表現する絵画 |
大和絵 | 土佐光信 | 唐絵に対して、日本の風景を描いた絵 |
狩野派 | 狩野正信・元信 | 室町幕府の御用絵師となった |
侘茶の創出 | 村田珠光 | 村田珠光が創出して、武野紹鷗が発展 |
生け花 | 池坊専慶 | |
正風連歌 | 宗祇 | |
俳諧連歌 | 山崎宗鑑 | 正風連歌より庶民的 |
唯一神道 | 吉田兼俱(かねとも) | 反本地垂迹説:神がメインで、仏はその化身であるとする考え方 |
浄土真宗中興 | 8世法主蓮如 | 越前吉崎道場などを創設。寺内町に発達。 |
文化史は、時代ごとで覚える内容が異なっているため、苦手にしている人が多いです。
そこで、文化史を効率よく覚えられる勉強法を紹介します。
まず、時代ごとの背景から覚えましょう。
文化は人の営みですから、時代の特徴によって文化も変わります。
例えば室町時代なら以下のように時期によって時代の特徴が異なります。
時代背景から覚えると、文化の特徴をとらえやすくなり、どの芸術作品がどの時代のものなのか区別しやすくなります。
文化史を勉強するときには資料もみましょう。
特に絵画や建築物や作品の写真をみると視覚効果で覚えやすいです。共通テストなどでも資料をみて答える問題が多く、資料をみなれておくと解きやすくなります。
室町時代は武家文化と公家文化の区別をすると覚えやすいです。
例えば南北朝文化の有職故実は公家文化なので、『建武年中行事』や『職原抄、『応安新式』などは朝廷に関係する内容です。
時代がくだっていくにつれて武家文化と公家文化が融合していくので、武家である足利義満が寝殿造を一部取り入れた鹿苑寺金閣を建てます。お寺の支配下に置くために五山十刹の制をつくったのも武家である足利義満です。
武家と公家で別々だったものが次第に合わさっていく様子をイメージすると、どの作品がどの時代なのかを区別しやすくなります。
東山文化になると、武家・公家という区別はほぼなくなり、代わりに身分の高い人の文化と庶民の文化に分かれていきます。
宗祇によって正風連歌が生み出されてすぐ、それが庶民むけに俳諧連歌としてアレンジされます。こうした、身分の高い人向け・庶民向けで分けるとイメージしやすくなります。
いかがでしょうか。
室町時代の文化について、南北朝文化・北山文化・東山文化それぞれの特徴と覚えておくべく芸術作品をまとめ、覚えやすいように練習問題を用意しました。
文化史はテストにもよく出る範囲で、どの作品がどの時代なのかも覚える必要があります。複数の文化史を「特徴の違い」を意識しながら勉強すると記憶に残りやすくなります。
室町幕府時代について、以下の記事にもまとめています。ぜひご参考ください。
室町幕府の将軍一覧
室町時代の年表
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