平安時代は日本史において重要な時代であり、桓武天皇や嵯峨天皇による政治改革、空海や最澄による仏教の発展が重要ポイントです。
高校日本史のテストでは、平安京遷都や律令制の再建、密教の導入などが頻出テーマです。
そこで、本記事ではこれらの重要ポイントを解説し、高校の定期テストや大学入試の対策に役立つ知識を提供します。
奈良時代後期、政治的混乱が続いていました。特に、道鏡のように僧が朝廷内で大きな政治力を持つなど、仏教勢力の増大が朝廷の権力を脅かし、深刻な問題となっていました。
この状況を打開するため、桓武天皇は奈良を離れて新たな都を築き、仏教勢力の影響を排除しようとしました。
【ポイント】
奈良の仏教勢力の排除
桓武天皇は、まず、784年に長岡京を建設します。ところが天皇の信頼篤い藤原種継の暗殺事件が起きたため、計画は頓挫しました。
この背景から、より安全で機能的な都の設立が急務となりました。
【ポイント】
藤原種継暗殺
長岡京は計画的に建設されましたが、天皇の近臣が暗殺されるなど不吉な事件が続き、王権の象徴として不適切とされました。794年に平安京が選ばれたのは、地理的な利点と治水の安定性が評価されたためです。
平安京は山に囲まれた天然の要塞であり、防御力が高いだけでなく、桂川や鴨川の豊富な水資源が都市の発展を支えました。
さらに、仏教勢力からの距離を保つため、寺院の建設は都の外側に限定されました。この点もテストではよく問われます。
平安京は平安時代を通じて日本の政治・文化の中心地となり、京都として長い歴史を築きました。
遷都によって、朝廷は仏教勢力から一定の距離を保ちつつ、律令国家としての基盤を強化しました。
また、都市計画において中国の長安と洛陽を模倣したことで、東アジア文化圏の影響を受けた洗練された文化が発展しました。この時代の文化的繁栄は、後世の日本文化にも大きな影響を与えています。
【ポイント】
平城京：長安を模倣
平安京：長安と洛陽を模倣
桓武天皇は東北地方に住む蝦夷（えみし）の抵抗を鎮めるため、3度におよぶ蝦夷征討を行いました。
なかでも、坂上田村麻呂を征夷大将軍に任命して行われた戦いは桓武朝廷側の勝利に終わっています。田村麻呂は陸奥国に胆沢城と志波城を築いて、軍事的圧力をかけるだけでなく和平交渉も行い、蝦夷との共存を模索しました。
この政策は東北地方の安定化に寄与し、朝廷の支配領域を拡大する重要な転換点となりました。
また、征討が成功したことで、桓武天皇の権威が高まり、中央集権化が進みました。
【ポイント】
多賀城、胆沢城、志波城の場所
古代の蝦夷征討について、以下の記事で詳しく解説しています。
高校日本史テスト対策！古代の蝦夷征討の歴史を徹底解説：テストによく出るポイントは？
桓武天皇は地方行政の混乱を防ぐため、勘解由使（かげゆし）を設置しました。
この官職は令外官のひとつで、地方官の不正を監視し、交代時に事務引継ぎを厳格化する役割を担いました。これにより、地方政治の透明性が高まり、律令制の運用が改善されました。
特に、地方豪族の台頭を抑える効果があり、中央政府の支配力を強化しました。
令外官：大宝律令以降に定められた役職
（現代の「内閣府特命担当大臣」のようなもの）
班田収授法の崩壊が進む中、桓武天皇は税制改革を実施し、負担を軽減することで地方農民の支持を得ようとしました。
具体的には、雑徭（労役）の負担を減らし、軍事的必要性に応じて新たな税を課しました。これにより、農民が生産活動に専念できる環境が整い、農業生産力の向上が期待されました。
ただし、改革の効果は限定的であり、地方の不満を完全には解消できませんでした。
なお、律令時代の税については以下の記事でくわしく解説しています。
奈良時代の税を分かりやすく解説！：租・庸・調・雑徭・防人・出挙・義倉【中学生・高校生向けテスト対策】
701年に施行された大宝律令ですが、社会の変化に合わない部分が顕在化してきました。時代に合わせて律令を整備する必要が出てきました。
そこで、嵯峨天皇は律令を補うための「格式（弘仁格式）」を編纂させました。
弘仁格式は、嵯峨天皇の時代に編纂された律令の補足法です。律令制度が現実の社会状況に合わなくなったため、それを補完する目的で作られました。
具体的には、律令に基づく条文を時代の状況に応じて解釈・運用するための基準を作成しました。
この形式は、後の貞観格式、延喜格式へと受け継がれ、律令国家の運営において重要な役割を果たしました。
【ポイント】
格：律令を加筆・修正した法令
式：格を実施するための規則
嵯峨天皇は、律令制度の再建を目指し、規律の厳格な適用を進めました。これにより、地方行政が効率化し、中央政府の財政がやや安定しました。
また、税制や軍事の改善も進み、地方社会の不満を一定程度緩和する成果を上げました。
これらの施策は、律令国家の基盤を強化する上で不可欠なものでした。
嵯峨天皇は政治だけでなく文化振興にも力を入れました。特に漢文学や書道を重視し、自ら詩作を行うなど、平安時代の貴族文化の基礎を築きました。
また、弘仁格式の整備を通じて文教政策を進めたことは、後の平安文化の発展に大きく貢献しました。
なお、嵯峨天皇は三筆のひとりに数えられています。
【三筆】
空海
嵯峨天皇
橘逸勢
嵯峨天皇は空海（弘法大師）の真言密教に注目し、朝廷の儀式や祈祷に取り入れました。
密教は仏像や曼荼羅を通じて悟りに至る方法を示し、呪術的な側面が国家の安定や繁栄を祈る儀式に適していました。特に、災害や疫病の平定を願う場面でその影響が顕著に表れました。
真言密教の導入は、神仏習合の流れを加速させ、日本特有の宗教文化を形成する要因となりました。
嵯峨天皇が空海を重用した背景には、空海の卓越した知識と宗教的カリスマ性がありました。空海は遣唐使に随行して唐に渡り、密教の深い教義を学んで帰国しました。
彼の知識は政治的にも文化的にも重要であり、嵯峨天皇はその能力を高く評価しました。
また、空海に高野山金剛峯寺の建立を許可するなど、密教の普及を支援しました。これにより、嵯峨天皇は仏教を政治の一部として取り入れることで、権威の強化と国の安定を図りました。
空海と同時期に最澄も唐から新しい仏教宗派（天台宗）を持ち帰り、日本に広めました。
最澄は比叡山に延暦寺を建立し、天台宗を日本に広めました。天台宗はすべての人が悟りを開けると説き、「法華経」を中心に教えを展開しました。
この教義は、平等性を重視し、貴族だけでなく庶民にも受け入れられる特徴を持っていました。最澄の思想は後の日本仏教に大きな影響を与え、鎌倉仏教の発展にもつながりました。
なお、鎌倉新仏教については以下の記事でくわしく解説しています。
【鎌倉時代 文化史】高校生必見！日本史テストでよく出る文化の特徴とポイントを解説（鎌倉新仏教など）
延暦寺は日本仏教の中心地として、多くの僧侶を育成する場となりました。
平安時代を通じて、仏教だけでなく学問や文化の発展にも寄与しました。
延暦寺の影響力は中世にも続き、武士や庶民にまで広がる仏教文化の基盤を築きました。
空海は唐に渡り、密教を直接学ぶことで日本にもたらしました。密教は儀式を通じて悟りに近づくという実践的な側面があり、当時の日本社会に適していました。
特に、国家安泰や豊穣祈願など、現実的な問題解決に焦点を当てた密教は朝廷から支持されました。
空海が建立した高野山金剛峯寺は、真言宗の中心地として機能しました。この寺院は密教の学びの場であると同時に、宗教的儀式を通じて国家の安定を支える役割を果たしました。
現在でも密教の聖地として、多くの参拝者を集めています。
真言宗は貴族社会の精神的支柱となり、平安時代の文化や芸術に大きな影響を与えました。曼荼羅や仏像などの密教美術が発展し、これらは後の日本美術にも引き継がれています。
また、貴族たちは真言宗の教義を通じて、自身の地位や権威を正当化する思想的基盤を得ました。
最澄と空海は同時期に活躍しましたが、その思想には大きな違いがありました。最澄は万人が悟りに至る可能性を重視し、簡明な教義を展開しました。
一方、空海は密教の深遠な教義を中心に据え、専門的な修行を求めました。この違いは、日本仏教における思想の多様性を生み出しました。
天台宗は法華経を中心にした普遍的な教えを広め、真言宗は密教を通じて儀式的な面で影響力を発揮しました。この2つの宗派は相互に刺激を与え合い、日本仏教の発展を促しました。
両者の存在は、平安時代の仏教文化を豊かにし、後の宗派形成にも大きな影響を与えました。
参考：ベネッセ教育情報「【平安時代（摂関政治まで）】平安時代の頻出ポイントはどこですか？」
平安時代の初期を語るうえで重要な人物として桓武天皇、嵯峨天皇、空海、最澄が挙げられます。
桓武天皇は平安京遷都を行い、政治・税制改革を推進しました。一方、嵯峨天皇は律令制の再建に尽力し、勘解由使の設置や弘仁格式の編纂を指導しました。
仏教界では、空海が真言宗を、最澄が天台宗を日本に広め、それぞれ独自の宗教的影響を与えました。
これらの人物の業績はテストで頻出です。特に、改革や宗教的影響に関する記述問題に注意しましょう。
なお、こうした重要人物を以下の記事でくわしく解説しています。
平安時代初期の重要人物を解説！(桓武天皇・嵯峨天皇、最澄・空海)：高校日本史のテスト対策向け
「弘仁格式」は嵯峨天皇時代に編纂された律令を補完する法体系で、律令制の再建を目指した重要な改革です。
701年に施行された大宝律令が701年に施行されてから100年ほど経ち、時代の変化に合わない部分が多々出てきました。そのため、変化に合わせて律令を一部改訂して格式がたびたびつくられました。
弘仁格式、貞観格式、延喜格式の3つの名前を「編纂させた天皇」と一緒に覚えておきましょう。
弘仁格式-嵯峨天皇
貞観格式-清和天皇
延喜格式-醍醐天皇
「延暦寺」は最澄によって比叡山に建立され、日本仏教の中心地となりました。「高野山」は空海が真言宗の根本道場として整備した場所で、密教の普及の拠点となりました。
これらの「開祖・山・寺院」のセットは、政治と宗教の結びつきを理解する上で重要であり、試験に出題されることが多いです。
| 天台宗 | 真言宗 | |
| 開祖 | 最澄 | 空海 |
| 本山 | 比叡山延暦寺 | 高野山金剛峰寺 |
| 著作 | 顕戒論 | 三教指帰（さんごうしいき） |
| 密教 | 台密 | 東密 |
| 特色 | 弟子の円仁・円珍によって密教化 | 加持祈祷による現世利益の追求 |
記述問題の例：「桓武天皇の改革が地方政治に与えた影響を述べよ」
記述問題では、桓武天皇の勘解由使設置や税制改革の内容を具体的に説明し、地方政治の安定や中央集権化への影響をまとめることが求められます。
例えば、「勘解由使の設置によって国司の交代が円滑になり、地方行政の不正が減少した」と記述すれば、具体性が高まり、点数アップにつながります。
記述のポイントと答え方
記述問題では、具体的な政策や改革の目的とその成果を簡潔に述べることが大切です。また、改革の背景や当時の課題を示すと、答案に深みが出ます。
模範解答例を参考にしながら、自分の言葉で書けるよう練習しておきましょう。
平安時代の主要な出来事を時系列で整理すると、学習効率が上がります。
例えば、794年の平安京遷都、805年の最澄帰国と天台宗設立、806年の空海帰国と真言宗開始など、重要な年号を順に覚えることで、平安時代の流れが明確になります。
| 794年（延暦13年） | 桓武天皇 | 桓武天皇が平安京に遷都 |
| 797年（延暦16年） | ・勘解由使が設置される ※勘解由使…国司などの官吏が交代するときに引き継ぎ状況を監視・評価する役人 ・坂上田村麻呂が征夷大将軍に任命される | |
| 804年（延暦23年） | 空海と最澄が遣唐使船に乗って唐に派遣される | |
| 805年（延暦24年） | ・最澄が帰国する ・最澄が高尾山寺で灌頂を行う | |
| 806年（大同1年） | 平城天皇 | ・桓武天皇、崩御 ・平城天皇、即位 ・空海が帰国する ・最澄が天台宗を開く |
| 809年（大同4年） | 嵯峨天皇 | ・平城天皇が譲位、上皇となる ・嵯峨天皇、即位 |
| 810年（大同5年・ 弘仁元年） | 薬子の変（平城上皇の乱）が起こる | |
| 815年（弘仁6年） | 検非違使が設置される ※検非違使…京都の治安維持を担当する、今の裁判官と警察官を合わせた役職 | |
| 816年（弘仁7年） | 空海に高野山が下賜される | |
| 819年（弘仁10年） | 空海が高野山に金剛峯寺を建立する | |
| 820年（弘仁11年） | 弘仁格式が制定される | |
| 823年（弘仁14年） | 淳和天皇 | ・空海が東寺を下賜され、教王護国寺と称する ・嵯峨天皇が譲位 ・淳和天皇が即位 |
| 827年（天長4年） | 空海が大僧都に任じられる | |
| 830年（天長7年） | 薬師寺の最勝会が始まる | |
| 833年（天長10年） | 仁明天皇 | ・令義解が完成する ※令義解…淳和天皇の勅令で作成された律令の解説書 ・淳和天皇が譲位 ・仁明天皇が即位 |
もっと詳しい年表を以下の記事で紹介しています。
平安時代の年表：平安時代の出来事や重要人物をまとめています（年号と在位した天皇名付き）
年表を作る際は、重要な出来事ごとに短い説明を加えると記憶に残りやすくなります。
また、語呂合わせやイラストを活用すると、年号と出来事を関連づけて覚えやすくなります。例として「鳴くよ（794）ウグイス平安京」といった語呂合わせは、平安京遷都の年号を覚える助けになります。
なお、日本史年号の語呂合わせは以下の記事でくわしく解説しています。
【大学受験】日本史の年号一覧と覚えやすい語呂合わせ
なお、平安時代の乱や変は以下の記事でくわしく解説しています。
平安時代の一問一答：薬子の変から後三年の役まで平安時代の変、乱、合戦を総まとめ
平安時代は政治改革と文化の発展が大きな特徴です。
桓武天皇による平安京遷都や税制改革、嵯峨天皇による律令政治の再建、空海と最澄がもたらした仏教の多様性は、いずれも日本史の重要な要素です。
この記事を通じて、高校日本史のテストで得点するための基礎知識をしっかり身につけましょう。
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