中学公民で必ずおさえておきたいのが「労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)」です。これらは働く人を守るために憲法で認められている大切な権利で、定期テストや高校入試にもよく出題されます。でも、「名前が似ていてわかりにくい」「どう違うの?」と思う中学生も多いはず。
そこでこの記事では、労働三権の意味や違いを中学生にもわかりやすく、イラストや例をまじえて丁寧に解説します。
語呂合わせや覚え方、テスト対策のポイントもまとめてあるので、定期テスト対策にも入試対策にもピッタリです!
働く人(労働者)は、会社などで働いてお金(給料)をもらっています。でも、労働者は会社(使用者)に比べて立場が弱く、給料や労働時間のことで不利な条件を押しつけられることもあります。
たとえば、
…そんなことが起こらないように、労働者にも会社と対等に交渉できる権利が必要です。
そこで、国(憲法)は、働く人の立場を守るために「労働三権(ろうどうさんけん)」という大切な権利を決めました。
労働三権とは、次の3つの権利のことです。
労働三権の名前 | 内容(中学生向けの説明) |
---|---|
団結権(だんけつけん) | 労働組合を作って、みんなで力を合わせる権利 |
団体交渉権(だんたいこうしょうけん) | 会社と話し合って、給料や働く条件を良くしてもらうための権利 |
団体行動権(だんたいこうどうけん) | ストライキなどの行動で、自分たちの意見を会社に伝える権利 |
この3つの権利は、日本国憲法の第28条でしっかりと守られています。
【憲法第28条】
日本国憲法 第28条より
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
つまり、国がしっかりと働く人を守っているということですね。
テストでよく出る労働三権は、覚え方にコツがあります。
「団結(団結権)して、コショウ(団体交渉権)を振るのはどう(団体行動権)?」
「団で始まる3つの権利」と覚えておいて、いまいち自信がなければ「みんなでコショウを振っている様子」を想像すれば、選択肢問題や記述でも思い出しやすいです。
また、次のようにストーリーで覚えるのもおすすめ:
「みんなで団結して、会社と団体交渉して、それでもダメなら団体行動(ストライキ)!」
テストでは、用語の「言い換え」にも注意が必要です。次のような表現が出ることがあります。
出題されやすい言い換え | 実際の権利名 |
---|---|
働く人がグループを作る権利 | 団結権 |
労働条件の話し合いをする権利 | 団体交渉権 |
ストライキをする権利 | 団体行動権 |
労働組合を作ることができる権利 | 団結権 |
団体で行動することを保障する権利 | 団体行動権 |
また、「労働三権」全体をまとめて、
労働三権はどれも「働く人のための大切な権利」ですが、それぞれ役割や使うタイミングが違います。ここでは、3つの権利の違いや意味を詳しく説明します。
団結権(だんけつけん)とは、働く人どうしが力を合わせて、グループ(団体)を作ることができる権利です。
会社に対して一人で文句を言っても、聞いてもらえないことがあります。でも、みんなでまとまって声を上げれば、会社も話を聞かざるを得ません。
このときの「グループ」が、次の「労働組合」です。
労働組合(ろうどうくみあい)とは、働く人が集まって作る「会社に対して意見を言うためのグループ」です。
労働組合は、次のような活動をします:
など、働く人の働きやすさを守るために行動する団体です。
中学生にとっては「クラスで意見を言うとき、みんなで話し合って先生にお願いする感じ」と考えると分かりやすいです。
団体交渉権(だんたいこうしょうけん)とは、労働組合が会社に対して、「給料を上げてほしい」「働く時間を短くしてほしい」といった要求を話し合うことができる権利です。
これは、団結してできた労働組合が、その力を使って会社と向き合う場面です。会社は、この話し合いに応じなければいけないとされています。
例:ある会社で、長時間労働が問題になっているとします。
という流れになります。
団体行動権(だんたいこうどうけん)とは、労働組合が会社との交渉がうまくいかなかったときに、ストライキ(仕事を一時的に止める)などの行動をとることができる権利です。
ストライキとは、労働者が一斉に働くのをやめて、「このままでは働けません」という意思をはっきり会社に伝える行動です。
ストライキの例:
こうした行動によって会社にプレッシャーをかけ、再び話し合いを求めます。
ただし、どんなストライキでも許されるわけではありません。
労働組合がルールを守って行う正当なストライキであれば、法律で守られます。でも、次のような行動は問題です。
つまり、団体行動権とは、「正しく、ルールを守ったうえでの行動」だけが認められるのです。
この3つの労働三権は、順番に使われることが多く、次のような流れになります:
団結(労働組合を作る)
→ 団体交渉(話し合い)
→ 団体行動(ストライキなどの行動)
テストでもよくこの流れを理解しているかが問われるので、しっかりおさえておきましょう!
「労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)」は、日本国憲法と法律によってしっかり守られています。ここでは、そのつながりと意味をやさしく解説します。
労働三権は、日本国憲法第28条という部分で保障されています。原文は次のとおりです。
「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」
日本国憲法 第28条より
この文章を中学生向けにわかりやすく言いかえると、こうなります。
「働く人がグループを作ったり、会社と話し合ったり、ストライキなどの行動をすることは、しっかり守られているよ。」
つまり、労働三権は憲法でしっかり認められている、重要な人権の一つなのです。
昔は、働く人の立場がとても弱く、会社に文句を言えばクビにされることもありました。
でも、民主主義の国では、みんなが平等で、弱い立場の人ほど守るべきだという考え方があります。
だからこそ、日本国憲法では、働く人が力を合わせて声を上げられるように、労働三権をしっかりと守ることが決められているのです。
これは「人間らしく働く」ことを守るために、国家が約束しているルールであり、基本的人権の一部として憲法で保障されています。
※なお、労働三権を保障している「基本的人権」について、以下の記事でくわしく解説しています。
【中学公民】基本的人権とは?自由権や社会権など種類・違いをわかりやすく解説|定期テスト&入試対策!
憲法で「労働三権を保障する」と言っても、具体的にどう守るかまでは書かれていません。
そこで登場するのが「労働組合法(ろうどうくみあいほう)」です。
この法律では、次のようなことが定められています。
このように、労働組合法は、憲法の考えを具体的に実現するための法律で、働く人を守る強い味方です。
もし会社がこの法律を守らずに、次のようなことをしたらどうなるのでしょうか?
これらはすべて「不当労働行為(ふとうろうどうこうい)」と呼ばれ、違法行為になります。
労働者や労働組合は、労働委員会(ろうどういいんかい)に申し立てて、会社の行為を止めさせることができます。
つまり、法律違反にはちゃんと罰則や指導があるということです。
内容 | 働く人を守る役割 |
---|---|
憲法第28条 | 労働三権を「基本的人権」として保障している |
労働組合法 | 労働三権を守るための具体的なルールを決めている |
労働委員会などの制度 | 違反した会社に対して対処してくれる |
このように、憲法と法律がセットで、労働者の権利を守っていることが分かります。
中学公民の定期テストや入試では、「憲法と法律の役割の違い」に注意しておきましょう!
定期テストや高校入試では、労働三権に関する問題がさまざまな形で出題されます。
この章では、よく出る出題パターンや、記述問題のコツ、高校入試の応用問題までをわかりやすく解説します。
定期テストでは、以下の語句がよく問われます。しっかり意味を覚えておきましょう。
用語 | 意味 |
---|---|
労働三権 | 労働者が人間らしく働くための3つの権利(団結権・団体交渉権・団体行動権) |
団結権 | 労働組合を作る・入る権利 |
団体交渉権 | 会社と給料や労働条件について話し合う権利 |
団体行動権 | ストライキなどの行動をする権利 |
労働組合 | 労働者が団結して作るグループ |
不当労働行為 | 労働組合を理由に社員を不利に扱うなどの違法行為 |
労働委員会 | 労働者の権利を守るための相談・調査を行う機関 |
憲法第28条 | 労働三権を保障している憲法の条文 |
中学公民の記述問題では、「だれが」「なにを」「なぜ」の3点セットで説明できるようにしましょう。
例題:
「団体交渉権とはどのような権利ですか?」
良い答え方の例:
労働者が労働条件をよくするために、会社と話し合うことができる権利。
【ポイント】
高校入試では、図表や資料とセットで出題されることが多いです。特に次のような内容がよく問われます。
例題(都道府県入試より):
「資料を見て、労働組合の加入率が下がっている理由を説明しなさい。」
解答例:
非正規労働者が増えたことで、労働組合に入らない人が多くなったから。
→ 図の読み取りと、労働三権の知識の両方が求められる典型的なパターンです。
※なお、定期テスト対策用にもっと問題を解きたい人向けに、以下の記事で一問一答問題を多数掲載しています。
【中3公民の一問一答問題】人権と共生社会:自由権の種類など定期テストによく出る問題!
【例1:東京都公立高校入試(社会)】
問:労働者を保護する様々な法律を定めている。とあるが、次の文章で述べている法律に当てはまるのは、下のア~エのうちではどれか。
令和7年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表より
「労働時間を原則として1日8時間、週40時間を超えてはならないと定めており、毎週少なくとも1回の休日を与えることや男女同一賃金の原則などを規定している。
(ア~エの内容は割愛)
【例2:埼玉県高校入試】
問:Kさんは,労働者の権利を守る法律について調べ,ある法律の主な内容を次のようにまとめました。この法律の名称を書きなさい。
・労働条件は,労働者と使用者が,対等の立場において決定すべきものとする。
埼玉県入学者選抜学力検査より
・男女は同一の賃金とする。
・労働時間は原則として,週 40 時間,1 日 8 時間以内とする。
・労働者には,少なくとも週 1 日の休日が与えられるものとする。
現代では、アルバイトやパート、契約社員などの非正規雇用が増えています。これらの人たちは、正社員とちがって、
といった問題があります。
【ポイント】
労働三権はすべての働く人に認められているけれど、現実には十分に使えない人も多いのが今の課題です。
「働く」と聞くと大人の話のように思えますが、労働三権はあなたの将来にも深く関係しています。
例えば――
こうしたトラブルも、「労働組合」や「団体交渉」で解決をめざすことができます。
【中学生に伝えたいこと】
将来、どんな仕事についても「労働三権」は自分を守る大切な武器になります。
今は、リモートワークやAIなど新しい働き方が増えている一方で、
といった職場の問題も多く報道されています。
【ポイント】
こうした時代だからこそ、「みんなで声をあげる」「不当な扱いに対して立ち向かう」ために、労働三権が今も必要なのです。
「ブラック企業」とは、労働者に対して以下のようなひどい扱いをする会社のことです。
労働三権があることで、こうした会社と戦ったり、改善を求めることができるようになります。
権利 | 内容 |
---|---|
団結権 | 労働者が労働組合をつくる権利 |
団体交渉権 | 労働組合が会社と話し合う権利 |
団体行動権 | ストライキなどの行動をする権利 |
この3つをセットで覚えるのがテストでも入試でも重要です。
This website uses cookies.