辞書は小学生の学習ツールの定番で、辞書を使えば賢い子に育つとよく言われます。
辞書には紙の辞書と電子辞書があり、
「子どもの間は電子辞書(スマホ)より紙の辞書のほうがいい」
という意見もあります。
中学受験でも紙の辞書を勧める塾は多いですね。結局どちらのほうがいいのか、辞書をどう使えば学力があがるのかはわかりにくいかもしれません。
そこで今回の記事では下記の2点を紹介します。
この記事は下記の方向けです。
※関連記事:【中学受験】国語辞典を使う習慣をつくって語彙力・読解力を伸ばす方法(小学校低学年・高学年)
辞書には電子辞書と紙の辞書があります。小学生が使うにはどちらのほうが良いでしょうか。
結論としては、どちらが良いとは言えません。
子どもの性格や使用目的、ご家庭のニーズによって変わります。
紙の辞書、電子辞書それぞれにメリット・デメリットがあります。それぞれの特徴を活かした使い分けをするのがおすすめです。
紙の辞書と電子辞書(スマホ)は特徴がことなります。それぞれのメリット・デメリットをまとめました。
紙の辞書のメリットは2点あります。
紙の辞書で単語の意味を調べると、
その単語以外の単語も見開きのページにたくさん出てきます。
たまたま目に入ってきたほかの単語がふと目に入ってきて、興味を引かれることがあります。
辞書や図鑑で、目的のページ以外もパラパラとめくり、
読み物感覚でいろいろな単語や動植物の説明をながめて楽しんだことのある人は多いと思います。
興味を持って調べた内容は頭に残ります。
しかも1冊の辞書をパラパラとめくっていると、複数の情報が関連して区別しながら頭に入ってきます。
人間の脳は独立した情報を1つ1つ覚えるより、関連する複数の情報をまとめて覚えてまとめて思い出すほうが得意です。
例えば日本の都道府県を覚えるときはバラバラではなく地域別に覚えます。
思い出すときも、「東北地方にあるのは青森県・岩手県・秋田県…」のように地域別です。
紙の辞書は、覚える・思い出すという作業に興味を持って自然に取り組めるツールなのです。
2つ目のメリットは、使い込み感が出ることです。
線を引いたり付箋を貼ったりしていくと、ちょっとボロボロになりますよね。
ページの端がペラっと折れてしまったり、指でよくなぞったところが黒ずんだりします。
こうした使い込んだ跡が出てくると、その辞書に対して「自分の辞書」だという愛着がわきます。
わからない単語が出てきたときに、「あの辞書で調べよう」と気軽に手に取るようになります。
使い込み感が出てくると、辞書を引く習慣がつきやすくなってくるのです。
一方で、紙の辞書にはデメリットもあります。
まず、何といっても紙の辞書は重いです。
たとえば、『こども ことば絵じてん 増補新装版』(三省堂)は2~6歳用ですが、1,4kgあります。
この辞典自体はとてもわかりやすくて好きな辞典なのですが、どんな辞典も掲載している情報量が多くなればなるほど重くなります。
情報量の多さは辞典の魅力ですが、重くなると子どもには持てません。
ちなみに広辞苑は約2.5kgあります。新生児並みの重量です。
次に、紙の辞書は電子辞書(スマホ)にくらべて意味を調べるのに時間がかかります。
※関連記事:低学年・高学年におすすめの国語辞典:子どもに合う辞書の選び方や辞書の引き方も解説!
特に使い慣れていない時期には、1つの単語を調べるのに1分ほどかかります。
慣れれば数秒で調べられますが、慣れるまでのハードルがやや高いです。
それでは、電子辞書(スマホ)にはどのようなメリットがあるでしょうか。
何といっても、電子辞書(アプリ)のメリットは情報量の多さです。
たとえば、小学生用の「CASIO XD-SX2800」には国語辞典だけでも下記のコンテンツが収録されています(CASIO製品別収録コンテンツ一覧より)。
ほかに英語辞典も入っていますから、もしこれを紙の辞書でそろえようとしたら、子ども部屋が辞書でいっぱいになりそうです。
軽いというも、とても大きなメリットです。
電子辞書で約300g、スマホで約200gです。紙の辞書1冊で1kg以上することと比べると、軽い・小さいというのは持ち運びに本当に便利です。
電子辞書やスマホは紙の辞書よりも調べるのが簡単です。
文字を入力すると、瞬時に回答を出してくれます。
頭から思い出せない言葉を調べたいときや対義語を調べたいときも、入力すればすぐ出てきます。
しかも、その単語に関連する内容もすぐ調べられます。
小学生は集中が持続しませんから、ちょっと調べてすぐに目的の情報にたどりづけなかったら早々に諦めてしまいます。
その点、電子辞書やスマホなら集中が切れる前に欲しい情報をゲットできます。
そんな便利な電子辞書(スマホ)にもデメリットはあります。
まず、値段が高いです。
例えば小学生に人気の「CASIO XD-SX2800」は23,220円(税込)します。
3-6年生向けの、英語の日記付きの電子辞書もあります。↓
コンテンツが多くて便利なのですが、「ちょっと買ってみようか」と手を出してみるような金額ではないですね。
あれこれ調べて、
本当にこれでいいか検討して、
誕生日などに思い切って購入して
すぐアスファルトに落として画面が真っ黒になってしまったらショックです。
電子辞書(スマホ)はすぐに求める情報を取り出せるというメリットがあります。
このメリットは一方ではデメリットにもなります。
人間が何かを学習するとき、身につけるまでに紆余曲折を経るほうが定着します。簡単に手に入った情報は簡単に忘れてしまいます。
「こういうことかな?」考えに考えたアイデアは頭に残りますが、思いつきのアイデアは3分後には忘れますよね。
手間をかけて調べて情報を得ると満足感が大きくなります。
ここまでの内容をまとめて表にしました。
メリット | デメリット | |
紙の辞書 | ・付加情報が多い ・使い込み感が出る | ・重い ・掲載語数が限られている ・調べるのに時間がかかる |
電子辞書 (スマホ) | ・掲載語数が非常に多い ・軽い(持ち運びしやすい) ・調べやすい | ・高い、壊れやすい ・記憶に定着しづらい |
紙の辞書、電子辞書それぞれにメリット・デメリットがあり、「どちらが良いか」は一概には言えないでしょう。
むしろ、学習目的に応じて使い分けるほうがそれぞれのメリットを活かせます。
紙の辞書と電子辞書(スマホ)は別々のツールではありません。前述のように、どちらが良いかは決められませんが、目的に応じて使い分けると学習効果を発揮しやすくなります。
自ら学ぶ姿勢をつくり、単純な勉強は素早く済ませ、むずかしい問題に本質から取り組めるような習慣をつくることができます。
オンライン絵画教室のアタムアカデミー【ATAM ACADEMY】紙の辞書、電子辞書のメリットを活かすには、下記のような使い分け方がおすすめです。
この使い分けを基準にすると、学習を3段階にわけてステップアップさせられます。
第1段階で自ら学ぶという学習姿勢をつくります。
この段階が1番大切です。ここで手間をかけるとその後大きく伸びていきます。
この段階で使うのは主に紙の辞書です。
日常生活や勉強でわからない言葉やあいまいな言葉が出てくれば、とにかく辞書で意味を調べましょう。 子どもに意味を聞かれてもすぐに教えず、一緒に辞書を引くようにしてあげてください。
すぐ教えてあげるほうが早く済みますが、聞いたらすぐ答えが手に入る経験ばかりしていると、学習に対して受け身や待ちの姿勢になります。
時間のあるときは、調べる前に「どういう意味だと思う?」と子どもに聞いてみてください。自分で調べたり誰かに聞く前に仮説をたてて、より積極的な学習姿勢をつけるためです。
自ら考え、学ぶ姿勢ができてきたら、次は学習を早く的確に進める工夫を自分でできるようにしていきましょう。
この段階では電子辞書(スマホ)を与えて使い方を教えれば十分です。
大人でもそうですが、早く進めたい・間違いたくないと思っていますよね。子どももそうです。
そのためのツールがあれば、子どもは自分で使いこなせるようになろうとします。
ただ、子どもによって性格はさまざまですから、
「早く調べものが済んだらOK」
と思ってしまって、勉強を雑にしてしまう子もいます。
これだと、せっかくの電子辞書(スマホ)を使いこなせているとは言えません。
低学年の間は第1段階(学習姿勢づくり)に集中して、小学校4-5年生くらいから電子辞書(スマホ)も使わせるようにして、同時並行で進めるようにしてみてください。
下記は、小3-6におすすめの「CASIO XD-SX2800」(英語アニメ付き)です↓
3-6年生向けの、英語の日記付きの電子辞書もあります↓
最後は、society4.0からsociety5.0に移行していく現代で求められている力です。
電子辞書(スマホ)から得られた多種多様な情報を自分なりにつなげて理解しなおし、本質をつかみとれるようにしていきます。
子どもの間にみんながみんな出来るようにならなくてもいいでしょうが、中学受験をさせる場合、この力をたかめると私立中入試の算数や国語を得意にしやすくなります。
また、最近注目を集めてきている公立中高一貫校の入試では問題文から状況を整理して必要な解法を考え出す思考力が求められます。この力の高い子は難なく合格していきます。
※関連記事:人気急上昇中の公立中高一貫校の魅力とは?私立中との入試制度の違いや対策方法を解説します!
複数の情報をまとめて本質を理解するというとややこしく聞こえますが、することは単純です。子どもに下記の質問を投げかけてあげてください。
これらの質問を投げかけてあげると、子どもが考えながら情報をひろうようになっていきます。
小さい子どもって、「空はなぜ青いの?」のような質問を投げかけてきたりしますよね。
大人になるにつれて、当たり前だと思って疑問にすら思わなくなります。
ですが、そうした当たり前のことを「本当に?」「どうして?」と疑問に思って考えたり調べたりする習慣を持ったまま大人になると、いくつもの楽しい発見につながっていきます。
辞書や図鑑は子どもの学力と精神面の成長に役立つとされています。
では、小学生は辞書をいつから・どれくらい所有しているのでしょうか。
下記のグラフは小学生の保護者を対象に、「子どもにいつ辞書を持たせたか」を調査した結果です。
という結果でした。
半分以上(51%)のご家庭では、1年生から3年生までの間に子どもに辞書を持たせています。
※関連記事:小学生のための国語辞典アプリガイド:おすすめアプリと使いこなすポイント!
辞書があると成績はあがるのでしょうか。
下記のグラフは、首都圏のある小学校を対象に、辞書引き学習(深谷啓助氏が愛発した、辞書を引いて勉強する方法)に
「2年間取り組んだグループ」と
「取り組まなかったグループ」の成績を比較したものです。
「辞書引き学習を行った児童のグループは、そうでない児童のグループよりも平均10点高かった」
という結果が出ています。
特に「活用問題」については、大きな差が出ています。
単に知識があるかないかだけでなく、知識をどう活用するかでも差が大きくなっていくことがわかります。
では、中学受験生に限定してみるとどうなるでしょうか。
下記のグラフは中学受験生を対象に、電子辞書の所有率を調査した結果です。
しかも、電子辞書を所有している子ほど、上位クラスに所属していたそうです。
小学校1年生で電子辞書を利用している子は、
「全生徒では3%」でしたが、
「成績上位クラスでは12%」もいました。
この割合は学年が上がるにつれて高くなっているそうです。
自分専用か家族共有の電子辞書を持っている生徒は、
「全クラスでは43%」なのに対して、
「成績最上位クラスでは51%」にもなっています。
もちろん、子どもに辞書を持たせただけでみるみる成績が上がっていくということはないでしょう。
前述のように、辞書を「日常の学習ツール」として活かすことが欠かせません。
いかがでしょうか。紙の辞書と電子辞書(スマホ)は別々のツールではなく、完全に代替可能なものでもありません。
積極的な学習姿勢や習慣といった土台をつくるのが紙の辞書で、
その土台を活かして学習を早く正確に進めていく強力なツールが電子辞書(スマホ)です。
私立中入試や公立中入試で大きな武器になります。
コツは、「完璧を求めず、できる範囲内でつづけること」です。
子どもの学びを後押しするためのツールとして上手に活用していきたいですね。
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