東京都は中学入試が盛んです。私立中学だけでなく公立中高一貫校も人気があり、難易度も非常に高いです。
そこで、この記事では東京都立両国高校附属中学校の試験情報を紹介し、適性検査の傾向と対策を説明します。
6年間の教育環境だけでなくその後の進路にも大きな影響を与える受検ですから、しっかり情報収集して対策したいですね。
※関連記事:公立中高一貫校の魅力とは:学校の種類や入試制度について解説
東京には11校の公立中高一貫校があります。
都立両国高校附属中学校の入試対策について、概要から紹介します。
都立両国高校附属中学校の偏差値は男子68、女子68です(首都圏模試センターより)。
ただし、公立中高一貫校の偏差値は参考程度にとどめておきましょう。当日の問題によって大きく得点が変わります。
±10くらいの幅で捉えるほうが良いでしょう。
都立両国高校附属中学校の進学実績は下記のとおりです。
国公私立大学(一部) | 現浪 | 現役 |
北海道 | 3 | 3 |
東北 | 5 | 3 |
東京 | 6 | 5 |
一橋 | 4 | 3 |
東京工業 | 4 | 4 |
東京医科歯科 | 1 | 1 |
横浜国立 | 5 | 5 |
早慶上理 | 147 | 118- |
※最新の状況はHPなどでご確認ください。
都立両国高校附属中学校の選抜方法を確認します。
「報告書200点」+「適性検査800点」の「合計1000点満点」で選抜されます。
報告書というのは、5、6年生の2年間の成績です。
配点は下記のとおりです。
5年生:9教科×40点満点⇒360点
6年生:9教科×40点満点⇒360点
9教科:国語・算数・理科・社会・音楽・図画工作・家庭・体育・外国語
合計450点を400点に換算します。
当日の適性検査は下記のように分かれています。
適性検査Ⅰ:100点満点→300点に換算
適性検査Ⅱ:100点満点→200点に換算
適性検査Ⅲ:100点満点→300点に換算
合計800点満点で計算します。
概要が分かったところで、両国高校附属中学校の適性検査対策を問題ごとに見てみましょう。
※関連記事:都立の中学受験に合格できる問題集
つづいて、東京都立両国高校附属中学校適性検査の対策方法を見ていきましょう。
まず適性検査Ⅰから紹介します。適性検査Ⅰは国語の長文読解です。
この試験の方針は下記のように規定されています。
文章の内容を的確に読み取ったり、自分の考えを論理的かつ適切に表現したりする力をみる。
東京都立両国高校附属中学校 適性検査問題等より
説明文を2つ読み(合計4ページほど)、以下の問題に答えます。
(1)本文中の傍線部について、筆者がそのように主張する理由を以下の空欄に当てはまるように20字以上30字以内で説明してください(抜き出してください)。
(2)本文中の傍線部の内容について説明してください。
(3)あなたはこれからの学校生活でどう学んでいこうと思うか400字以上440字以内で書いてください。
2種類の説明文を読んで解答を記述するため、長文ごとのポイントを整理しながら読む必要があります。
これら3点を適切に捉えながら読む練習が必要です。
前述のように、両国高校附属中学校では本文内容に関する問題が出されます。
これら2点を記述する練習と、そのための語彙力を高めるようにしましょう。
適性検査Ⅰでは、本文内容をもとにして受験生自身の意見を440字以内で書かせる問題も出ます。
文章を読んでその内容を捉えるだけでなく、その内容を自分のこれからの生活や意見につなげていきます。
国語の授業でも、本文をただ読んで終わりにならず、「その登場人物はなぜそのような言動を取ったのか」「自分ならどうしていたと思うか」を言葉にする練習をしましょう。
適性検査Ⅱは算数・理科・社会の資料問題です。
この試験の方針は下記のように規定されています。
資料から情報を読み取り、課題に対して思考・判断する力、論理的に考察・処理する力、的確に表現する力などをみる。
東京都立両国高校附属中学校 適性検査問題等より
算数的分野では以下のような図・グラフが出されます。
図1のボードに図2の棒状のマグネットをつけて得点板をつくる場面設定です。
マグネットシートに棒を書き、切り取ってボードに貼り付けます。作る数字は下記の図のようになります。
この作業を速くするための工夫の仕方を問う問題です。
0~9までの数字を一つ一つ入れ替えて得点を表示させるより、上記のように数字を入れ替えたり上下逆さにしたりするほうが得点表示の作業は早く済みます。
「456」を「987」にするのに最短で何秒かかるかを説明するように求められます。
解き始めるまえに、問題の解き方のポイントを整理しましょう。
適性検査では必ず考え方のヒントを提示してくれているので、それを利用します。
前述の問題なら、上記の画像のように「〔6〕→〔9〕…6のボードを180度回す」などの作業方法の一覧がヒントです。
これらの作業のなかで、「456→987」にするにはどの作業をすれば良いかを考えます。
すると、下記の3種類の作業を組み合わせれば良いと気づきます。
これらの作業をして「456」のうちどの数字を何に変えれば良いかを試行錯誤します。
このように、問題にあるヒントを使うと「試行錯誤するポイント」をしぼることができ、正解にたどりつくまでの時間を短縮できます。
制限時間(45分)に比べて問題文が長いです。
設定されたルールを理解し、解答を出すまで試行錯誤をする必要があります。
計算に手間取ってしまうとその時間が足りなくなる恐れがあります。
日ごろから速く・正確に計算する練習をしておきましょう。
算数で苦手単元が1つもないようにしておきましょう。
適性検査は問題数が少なく、1問あたりの配点が高いです。速さ・割合・図形などで苦手分野が1つでもあると、その問題が影響して得点が大きく下がります。
適性検査Ⅱではオリジナルの状況や設定がなされ、その説明文(対話文)が長々とつづきます
問題文のポイントは、問いが進むごとに変わっていきます。問いごとにポイントを読み取るようにしましょう。
さらに適性検査Ⅱでは、「条件を論理的に整理して解く力」が問われます。
前述の問題のように、数名の児童の発言内容とオリジナルのゲームルールから状況を整理します。
『5分で論理的思考力ドリル』(以下、Amazonのリンクにつながります)などで練習すると条件を整理する力がつきやすいです。
また、数字ロジックやロジックパズルを使うと楽しく論理性や集中力を養えます。
※関連記事:子ども向けロジックパズル
つづいて社会的分野では、以下のような図とともに問題が出ます。
上記は地域のふれあいタクシーの取り組みについてまとめた表です。
ほかに下記のグラフなど、合計4つのグラフ・表を見て「ふれあいタクシー導入の効果」について考えて書く問題が出ています。
社会の問題では資料が良く出てきます。資料を見て、その資料の目的や資料が示している内容を把握する練習をしておきましょう。
小学校では地元の地理や歴史も習います。校外学習やグループ学習(相談、発表)など、児童が自分たちで調べ、考える学習スタイルが取られることが多いです。
この授業に積極的に参加しましょう。
前述の出題例では地域のふれあいタクシー導入の効果が問われています。
地域学習で学んだ内容が入試に出るとは限りませんが、地域学習で発表をがんばると「考察の仕方」を学べます。
問題集を解くだけでは得られない生の体験ですから、小学校の授業に前向きに取り組むようにしましょう。
適性検査Ⅱの理科的分野では、以下のような図とともに問題が出ています。
理科分野については以下のような資料が提示されます。
プラスチック・金属・工作用の板の3種類の板をくっつけて斜面をすべらせる実験です。
どの板をどの順番でくっつけるか、組み合わせや順番を変えて6パターンの実験をしています。
このように、適性検査Ⅱの理科の実験は、教科書や問題集に載っていないオリジナルの実験について、実験条件が提示されて実験結果を予測したり結果の考察を書いたりします。
生物・地学・物理・化学の知識を満遍なくつけましょう。
知識を問う問題ではありませんが、苦手分野があると問題を解きづらくなります。
試験に出てくる実験はオリジナルですから、事前に結果や考察内容を暗記しておくことはできません。
実験条件をみてそれぞれの違いや共通点を整理し、条件を論理的に整理して解く力が問われます。
日ごろから、理科の勉強では「暗記一辺倒」にならないようにしましょう。
家庭でできる科学実験もたくさんありますので、遊びながら実験条件をいろいろ変えてみて親子で話し合うのも適性検査対策になります。
以下の図鑑に家でできる科学実験がくわしく紹介されています(Amazonのリンク付き)。
また、数字ロジックやロジックパズルを使うと楽しく論理性や集中力を養えます。
※関連記事:子ども向けロジックパズル
両国では身の回りの現象について考察させる問題もよく出ます。
日常生活で身の回りをよく観察し、「変化」や「違い」に注意してみましょう。
前述のように「金属のすべりかたの違い」や「降雨の後における葉の水滴の違い」などが出題されます。
理科の実験・観察の問題では、このように「変化」か「違い」を問うものがほとんどです。
日ごろから「変化」と「違い」に気を配り、それらに気づいたら「なぜそうなるのか?」を考えるようにしましょう。
適性検査Ⅲは算数の分析・課題解決問題です。
この試験の方針は下記のように規定されています。
課題に対して数理的・幾何的な分析を行い、総合的に考察し判断・解決する力をみる。
東京都立両国高校附属中学校 適性検査問題等より
ここで紹介する問題は、児童2人がおじいさんのお蕎麦屋さんを手伝う場面です。
メニューはそばの「小盛」「並盛」「大盛」の三種類です。下記の表のようにそばの量によって、使う小皿の数が変わります。
使う小皿の数 | |
小盛 | 2個 |
並盛 | 3個 |
大盛 | 5個 |
問題文では、おじいさんが下記のように説明しています。
この条件から小盛・並盛・大盛を頼んだお客さんがそれぞれ何人なのか、考えられる組み合わせを1つ書くように問われています。
長い対話文と複数の資料を見て問題に答えます。解答を出そうとするまえに、問題のポイントを整理しましょう。
前述の問題をみると、2皿・3皿・5皿を40個組み合わせて127皿(400皿-273皿)になれば良いと分かります。
2と3と5で合計127です。
もし40人のお客さんがすべて大盛(5皿)を頼んだとすると、200皿必要です。
実際の注文は127皿なので、差し引き73皿分だけ、2皿と3皿の注文だったことが分かります。
ここから条件に合う組み合わせを考えていっても良いでしょうが、ほかのパターンも考えてみましょう。
もし40人のお客さんがすべて並盛(3皿)を頼んだらどうなるか。
3皿×40人=120皿です。実際の注文より7皿足りません。
こちらの数字のほうが小さいので、問題の条件に合う組み合わせを考えやすいでしょう。
このように、解き始める前に問題のポイントを整理して解答の糸口を探しましょう。
両国の適性検査Ⅲでは、上記の問題のほかにも下記のように図形が出題されます。
適性検査の図形問題は、通常のドリル・問題集だけでなく、パズル教材も使って勉強しておくのが有効です。
教材をさわって、回転させて、特徴をイメージしやすくなります。
小学生向けの図形教材として、「ピタゴラス」という教材が便利です。「図形認識力」「創造力」を育てることを目的にしているパズル教材です。
三角形や正方形などのピースに磁石がついており、ピースを組み合わせていろいろな形をつくれます。
正三角形、直角二等辺三角形、正方形、ひし形、正五角形の5種類で、これらのピースを組み合わせて平行四辺形、台形、角柱、角錐などをつくることができます。
直角二等辺三角形を2つ組み合わせると正方形になる、正三角形を組み合わせればひし形になるなど、図形の特徴を遊びながら学べます。
特に秀逸なのが、「図形の問題を解くドリル」「透明のピース」があるという点です。
合同、対象な図形、展開図、体積といった5-6年生で習う図形の問題が載っており、パズルで図形の特徴をつかんだら算数の問題を解いて練習ができます。
適性検査の対策に便利な問題集を紹介します。
前述のように適性検査では思考力・分析力・表現力が求められており、それらの力をどう活かせばいいかを、問題演習をとおして身につけます。
AmazonのPRリンクをつけているので、リンク先でお得に購入いただけます。
算数的分野↓
理科的分野↓
社会的分野↓
出版社:朝日学生新聞社
特徴:
公立中高一貫校の教育方針に、将来、国際社会で活躍できるリーダーを育てることが
Amazonより引用
あります。リーダーには、身の回りの事象を数理的に分析・考察し、課題を解決する力、
課題を総合的に解決する力などが求められます。
算数分野の適性検査では、ものごとを数理的に分析・考察し、課題を解決する能力の
基礎が問われます。問題を解くためには、次のような力が必要となります。
●問題文を正確に読む力
●条件を整理し分析する力
●問題の本質や着眼点を見つける力
●解き方を工夫する力
●なぜ、そのような考え方、解き方で答えを求められるのか、理論的に説明する力
この本では、全国の適性検査から厳選した過去問をもとに、分野ごとに系統立てて、頻出問題の傾向と対策を伝授します。
中には難しい問題もありますが、これらの問題を解くことによって、一つひとつ求められる力を養ってください。
資料問題編↓
数と図形編↓
生活と科学編↓
出版社:東京学参
特徴:
【 公立中高一貫校適性検査対策問題集 資料問題編 】解答解説付き
●全国の中高一貫校の適性検査の問題から、資料をもとにした問題(理科・社会分野)を選び出し、10パターンに分類。
●地図やグラフ・表の読み取りなど資料を用いた問題対策に。着眼点、考え方・解き方をていねいに示した例題と的確なヒントが参考になる練習問題です。
●各単元ごとに集中的に取り組み、問題のパターンを掴めるようになりましょう。苦手単元の克服にもおすすめです。自分の力で公立中高一貫校適性検査を攻略するための一冊
Amazonより引用
・公立中高一貫校適性検査必須の出題形式「資料を使って解く問題」を完全攻略
・実際の出題から良問を精選
・資料をもとにした問題を選び、10パターンに分類
・例題で考え方・解法を身につけ、豊富な練習問題で実戦力を養う
・複合問題にも対応できる力を養う
問題のボリュームが多く、6年生がさまざまなパターンをしっかり演習するのに適しています。
東京では公立中高一貫校の難易度が非常にたかいです。
塾に行って対策するほうが良いのかなと気になるご家庭も多いと思います。
家庭だけで取り組むことも可能ですが、ラスト1-2年は塾に行くほうが便利でしょう。
子どもが4年生くらいまでなら、まずご家庭で対策しておきましょう。
具体的には下記の3点です。
塾に行く場合でもこれら3点は実施しておくほうが良いです。
算数の先取り学習や国語の長文読解の勉強には市販の問題集も便利です。
解説が丁寧で分かりやすく、繰り返し練習できます。
また、記述問題の解答にはルールがあるので、問題集でしっかり覚えて慣れておくと良いでしょう。
※関連記事:中学受験国語の記述問題を解くコツと自宅でできる勉強方法
※関連記事:中学受験国語の記述対策問題集
家庭学習に取り組まれていても、やはり5-6年生くらいになると塾で対策するほうが安心です。
必要な対策を網羅できますし、受検まで間に合うカリキュラムで勉強に取りくめます。
子どもによって得意・不得意は発生しますから、不得意内容については家庭で特訓するなどすると効果的に合格する力を養えます。
※関連記事:公立中高一貫校に向いている子・向いていない子の特徴:合格できる子になるための対策方法とは?
もし塾には行かず家庭学習のみで受検されるなら、Z会が便利です。
5年生から受けられる公立中高一貫校対策専用コースがありますし、4年生までに受けられる講座でも論理性や課題解決力、作文力を養う内容が豊富です。
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Z会 公立中高一貫校受検対策講座のご案内いかがでしょうか。
東京都立両国高校附属中学校の適性検査について、過去問をもとに傾向と対策を紹介しました。
資料問題や記述問題、論理性を問う問題がたくさん出てきます。論理性とパズル思考力がハイレベルで問われる問題です。
身近なものをよく観察し、ものの仕組みを考えるようにしましょう。初見のグラフをみて内容を的確に読み取れる力も必要です。
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