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小学校の英語と中学校の英語はどう違うのか:中学生になる前に身につけておくべき学力や英語学習の習慣

「中学校に入ってから英語で苦労しないようにするにはどうすればいいの?」
「小学校の英語の勉強を見ていると、中学校で大丈夫か不安になる」

このような不安を感じている保護者の方は多いのではないでしょうか。実際、中学校に入って1年以内に英語が一気に苦手になる子が多いです(ベネッセ教育総合研究所)。

ですが、英語は中学校でも高校でも一番重要な科目です。英語が得意な子は受験でも断然有利になります。

そこで、小学校の英語と中学校の英語はどのように違うのかを解説し、その内容を踏まえて小学生の間にどのように英語の勉強をすれば良いか、いつから始めれば良いかなどを紹介します。

※関連記事:中学英語の文法一覧:三人称単数など中1、中2、中3で習う英文法のまとめと英語の勉強の仕方

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小学校英語と中学校英語の違い

小学校の英語と中学校の英語の授業は目的や学習方法など、いくつかの点で違いが明確にあります。

学習目的の違い

まず、小学校英語と中学校英語は学習目的が違っています。

小学校英語はコミュニケーションを重視する

コミュニケーション力を養うことが主な目的で、英語に「慣れ親しむ」ことが中心です。特に「聞く」「話す」が重視され、英語に対する抵抗感をなくし、興味を持たせることが目標です(文部科学省「小学校における英語教育に関する主な論点」)。

そのため、簡単な日常会話や挨拶、身近な単語を通して、楽しみながら英語に触れる授業が行われます。

中学校英語は単語力と英文法の正確さが求められる

一方、中学の英語では英文法や書き方、読み書きなど、よりアカデミックな内容が増えます。

定期テストでも基礎的な文法の理解や文法的正確さ、文章の読解力が求められ、英語を「正確に使える力」が必要です。

外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う。

文部科学省・学習指導要領・外国語より

学習内容の違い

目的が異なることから、小学校英語と中学校英語では学習内容にも違いがみられます。

小学校英語は対話中心

小学校英語はコミュニケーション重視なので、「先生・児童」か「児童・児童」による対話での学習が中心です。

そのため、以下のような対話がひんぱんに行われます。

先生:What fruits do you like?(好きな果物は何ですか?)
児童:Banana!(バナナ!)

中学校英語は4技能のスキルアップ中心

一方、中学校英語は4技能(話す・聞く・書く・読む)のスキルアップが中心です。長文を読み、長文内に出てくる英単語や英文法を習い、リスニングのテストを受けます。

また、「話す」(スピーキング)も高校入試に入ってきており、4技能それぞれ学びます。

指導方法の違い

学習内容が異なるため、小学校英語と中学校英語では指導方法にも違いがあります。

小学校英語はアクティビティ中心

小学校英語はコミュニケーションを取ることが目標なので、アクティビティやゲーム、視覚的な教材を多用し、楽しさを重視した指導が中心です。

ALT(外国語指導助手)との会話や、歌やチャンツを使った学習も行われます。

中学校英語は講義と問題演習、試験が中心

一方、中学校英語は教科書を使った本格的な授業が行われます。英語での説明や文法解説が加わり、宿題や試験が増えます。

授業は文法的な説明を含む講義形式で行われ、リーディングやライティングの練習が中心になります。

学習評価の違い

学習目標の違いにより、小学校英語と中学校英語では学習評価の仕方に違いが生まれています。

小学校英語は積極性が評価される

小学校英語での評価は、主に学習態度や積極性、コミュニケーションを取ることが中心です。成績表にくわしい評価が記載されることは少ないです。

中学校英語はテストの点数で客観的に英語力が評価される

一方、中学校英語にはテストや宿題があり、より具体的で客観的な評価がなされます。英語の理解度や知識力をテストで測ります。

一生懸命に勉強したかどうか、授業中に発言が多かったかなどの「態度」はあまり評価に含まれず、テストの点数と提出物が評価のメインを占めます。

中学校で英語に苦労する子の特徴

冒頭でお伝えしたように、中学校に入ってすぐに英語嫌いになる子が激増します。では中学校に入って英語嫌いになる子は、中学英語のどのような点で苦労するのでしょうか。

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英単語の暗記の仕方を知らない

中学校に入って最初の壁は「英単語の暗記」です。

小学校では英単語は「覚えるもの」ではなく「(間違ってもいいから)使うもの」でした。それが、1文字1文字正確に書けないといけなくなります。

正確に書くにはきちんと「暗記」しないといけませんが、暗記の仕方は小学校でも中学校でも教わらないため、どうすれば良いか分からなくて結局何もせずに中学最初のテストを迎える子も少なくありません。

※関連記事:中1最初のテスト:初めての中間テスト範囲はどこで、勉強をいつからどうやってすれば良いか紹介します

英文法を理解していない(形で覚えている)

つづいてのポイントは「英文法の不十分な理解」です。

小学校ではbe動詞と一般動詞の違いや時制(現在、過去など)といった文法知識はほぼ教わりません。「私は~です」「私は~しました」といった日本語を英語に置きかえて使う練習をします。

そのため、英文法の説明を学校の授業で聞いても右から左です。

定期テストで70点以上取っている子でも、「be動詞・一般動詞」という言葉すら知らないのが普通になっています。

※関連記事:be動詞と一般動詞の違い

その結果、「I(私)の次はとりあえずamを書く」という独自ルールで形式的に対応している中1が多いです。

国文法の知識が足りていない

3つ目は国文法の知識不足です。

英語は原則として、「主語+動詞」を文の最初に書きます。日本語の文が出てきたら、その文の主語と動詞(述語)は何なのかが分からないと英語の語順がぐちゃぐちゃになりやすくなります。

例えば、「私の犬は白い。」という文だと主語は「犬」ですが、「私の」が主語だと思ってしまう中学生が少なくありません。そうすると、「I am dog white.」という色々間違っている英文になってしまったりします(正しくは、My dog is white.)。

中学校英語で苦労しないための準備

中学生になってから英語で苦労せずに済むように、小学校の間では以下のような学力や英語学習をしておきましょう。

アルファベットのつづりと発音を覚える

まず、アルファベットを大文字、小文字それぞれスラスラと書けるようにしましょう。

英単語を覚えようとしても、肝心のアルファベットがあやふやだと覚えづらいです。知らない漢字が1字でもあると四字熟語を覚えにくいのと同じような状況です。

また、英単語は「発音」と「つづり」の両方分かると覚えやすく、忘れにくいです。

例えば「Thursday(木曜日)」という単語はカタカナで書くと「サーズデイ」です。この発音を知らないまま、「Tの次はdで、その次はu…」という覚え方をする子が多いです。

この覚え方だと次の日には記憶があいまいになり、つづりを間違えやすくなります。

dは「だ行」の音で、fは「ふぁ行」の音というように、「アルファベットがどの音になるのか」を覚えておくだけで単語の発音を想像しやすくなり、結果的に単語を覚えやすくなります。

英単語の暗記の習慣や方法を身につけておく

知らない英単語が出てきたら、その都度覚えるような習慣をつけておきましょう。

高校入試までに2000-2500語覚える必要があります。「後でまとめて覚える」というやり方で乗り切れる数ではありません。

また、暗記のアルファベットをしっかり書けるようになったら、英単語の暗記の仕方を身につけておきましょう。

※関連記事:中1で習う英語の単語:名詞・動詞・形容詞・副詞など品詞ごとの一覧と英単語の覚え方を紹介

中学入学前に英検5級の単語帳を使って英単語を覚えておくとかなり役立ちます。


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英作文の練習をする

英文法の勉強をする際には、英作文の練習を中心にしましょう。

中学校の英語のテストには穴埋め問題、並び替え問題、書きかえ問題などがあります。

こうしたタイプの問題では、単語や文法を正しく使えなくてもある程度正解できてしまいます。そのため、単語・文法の知識や理解があいまいなまま英語の授業が進んでしまい、学年があがるごとに英語の点数がみるみる下がっていく子がたくさん出ます。

中1の1学期は80-90点取っていた子が、早くて中1の2学期から70点→60点→50点と下がっていくことがよくあります。中2までは70点前後をなんとかキープして、中3になってから50点くらいにガクンと下がってしまう子もいます。

例えば、動詞にはbe動詞と一般動詞の2種類ありますが、それを把握しなくても中1の間は70点くらいまでなら取れます。ですが、be動詞と一般動詞の区別がつかないままだと中3になっても「I am play tennis.」という間違った使い方をたびたびしてしまいます。(正しくはI play tennis.かI am playing tennis.)

※関連記事:be動詞と一般動詞の使い分けの問題

中学校に上がる前には、「英作文の練習」をメインにしておきましょう。英作ができれば穴埋めも並び替えも楽々できます。

※関連記事:英語の文法の覚え方(中学生向け):英文法を覚えられない人におすすめの英単語帳と英文法の参考書を紹介

国文法を勉強しておく

国文法をあらかじめ勉強しておくと、英文法をとても理解しやすくなります。英語は主語と動詞を先に書きます。国文法でいえば主語と述語(動詞)です。

(例文)
昨日私は公園でテニスをしました。

上記の例文だと、「私は」が主語で、「しました」が動詞です。英語で書くと、「I played」です。「played(しました)」と書いたわけですから、「何をしたのか」が次にきます。ですので、「I played tennis」の語順になります。

後は、in the parkとyesterdayを付け足してあげれば完成です。

このように、主語と動詞を先に見つけて書けば、それ以降は単語を付け足していけば英文が完成します。

ところが、小学校では国文法をあまり習わないため、「主語がどれか」が分からない子が多いです。

一般的に中学生の年齢だと、脳は日本語の文法知識をベースにして外国語の文法を理解しようとします。「日本語なら主語と述語は『私は~しました』だから、英語だったら『I played』になるはずだ」と考えます。

こうした解き方ができるようになるには、国文法の知識が不可欠です。

具体的には、文節分け、主語・述語、動詞・名詞・形容詞の区別をできるようにしておきましょう。

中学英語の予習はいつからはじめれば良いか

中学英語を先取りしようと思ったら、いつからはじめれば良いでしょうか。

5年生からはじめるのがおすすめ

中学英語の予習をしっかりやっておくには、5年生から英語の勉強をはじめるのがおすすめです。

5年生ではローマ字も習い終えていますし、小学校でも英語の授業がやや本格化するタイミングです。この頃に英語の単語・文法をきちんと勉強しはじめると、学校の英語の授業と相乗効果を生みやすくできます。

学校で出てきた英単語を自宅で覚え、覚えた単語を学校の授業でパシっと使えます。子ども心に「自分は英語が得意!」と自信がつき、さらに英語の勉強を前向きにがんばるようになります。

6年生の1-2月にはほとんどの子が中学英語を予習している

ほとんどの小学生は6年生の2月ごろからは中学校の英語を先取り学習しています。そのため、「英語の勉強は6年生の3学期くらいからで大丈夫なのでは?」と考える人も少なくありません。

ですが、ほとんどの小学生が6年生の3学期くらいから中学英語の先取りをしていても、前述のように「中1で英語嫌いになる子が一気に増える」という調査結果が出ています。

もちろん勉強には個人差がありますが、一般的には6年生の1-2月からのスタートでは「遅い」と言えるのではないかと個人的には考えています。

高校入試で英検を使うなら4年生までには英語学習をはじめよう

最近では高校入試で英検を使う人も多いです。高校入試では英検2級以上あるとかなり有利です。

※関連記事:高校受験の英検優遇制度(加点など):2級を取得すると有利になる理由を解説

中3時点で英検2級を取得するには、中学校入学時点で最低でも3級までは取得しておきたいです。5級→4級→3級で1.5年はかかりますから、4年生までには英語の勉強をはじめておくと、子どもにとって過度な負担にならない程度に英語学習がしやすいです。

※関連記事:英検2級合格に必要な時間:0から始めて合格するまでの時間と効果的な英検対策法を完全ガイド!

まとめ

いかがでしょうか。

小学校英語と中学校英語の違いを説明しました。小学校英語は「英語に対するポジティブな態度を育てること」を目的としており、中学校は「英語を使うスキルを強化し、高校や将来に向けて英語の基礎力を築くこと」を目的としています。

こうした方向性の違いがあるため、中1で英語嫌いになる子が多いです。

英語嫌いにならないようにするには、英単語や英文法をきちんと勉強しつつ国文法の勉強も小学生の間にしておくほうが良いでしょう。

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福地 暁です。 個別指導の塾を経営しています。 これまで3000組以上のご家庭を担当させていただきました。 中学受験、高校受験、大学受験、英検・TOEIC対策、中学生・高校生の定期テスト対策など、さまざまな学習支援をしています。 みなさまの学びにプラスになる情報をお伝えしていきます! よろしくお願いします。 1男1女の父。 どうやら娘には「甘いパパ」と思われているようで、 アイスやジュースをねだるときは必ずパパのところにきます。

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