中学受験対策のために塾に通おうと思ったとき、個別塾と集団塾のどちらが良いか迷いますよね。
良い塾を選べれば納得のいく受験対策ができます。
そこで、中学受験で個別塾と集団塾のどちらが良いかを判断する基準を紹介し、中学受験対策ができる個別塾の選び方と家庭でできるサポート方法をまとめてお伝えします。
※関連記事:共働き家庭の中学受験対策:直面する課題とその乗り切り方
中学受験は、小学生にとって初めての本格的な競争の舞台です。多くの家庭が合格の可能性を高めるために塾を利用しますが、どの塾を選ぶかによって学習の成果や受験結果が大きく変わることも少なくありません。
特に、近年では「集団塾」と「個別指導塾」それぞれのメリットを活かしながら、子どもに合った学習環境を選ぶことが求められています。
中学受験は、公立小学校で習う内容よりもはるかに高度な問題が出題されます。たとえば難関校では、算数で中学高校レベルの思考力を問う問題が登場することも。
これに対応するには、家庭学習だけでは限界があります。
塾には以下のような家庭では得られないメリットがあります:
一方、家庭学習は自由度が高い反面、自己管理が難しい・教えられる内容に限界があるというデメリットがあります。
塾は「通っていれば成績が上がる」ものではありません。大切なのは志望校や子どもの学習スタイルに合った塾を選ぶことです。
また、塾の進度・方針が家庭の考えと一致しているかも重要です。子どもに過度な負担がかかると、学習意欲が低下して逆効果になることもあります。
項目 | 集団塾 | 個別指導塾 |
---|---|---|
授業形式 | 決まったカリキュラム・時間割 | 生徒ごとのカスタマイズ指導 |
生徒数 | 10〜30人程度 | 1〜2人/講師1人 |
特徴 | ライバルと競い合える | 弱点を重点的に克服できる |
費用 | 比較的安価 | 高めになる傾向 |
向いている子 | 自主的に学習できる子 | マイペース型・質問が多い子 |
このように、両者には明確な違いがあります。単に「人気だから」と選ぶのではなく、子どもにとって最適な学びのスタイルを考慮することが、塾選びではもっとも大切です。
中学受験対策において、「集団塾」と「個別指導塾」のどちらを選ぶか、あるいは併用すべきかは、家庭にとって非常に重要な判断です。
それぞれに向き・不向きがあり、メリットとデメリットを正しく理解することが合格への第一歩となります。
集団塾は多くの場合、長年の受験データに基づいた体系的なカリキュラムを持っています。年間スケジュールがしっかり組まれており、いつ何を学ぶかが明確で、保護者も進捗を把握しやすいのが特徴です。
集団塾には多数のライバルが在籍しており、模試や成績表で常に順位が明示されることで、子どもにとって強い刺激になります。
進度が早く、集団向けに授業が進むため、一度つまずくとそのまま置いていかれてしまうことがあります。
集団塾はどうしても一斉指導が中心となるため、子ども一人ひとりの状況を細かく見ることは困難です。
個別指導塾では、生徒一人ひとりの理解度・苦手分野・性格に応じて、授業内容や進度を柔軟に調整できます。
講師と1対1または1対2の形式が多く、周囲を気にせず質問ができる環境が整っています。
個別指導はアルバイト講師が担当することも多く、講師の質に差が出やすいのが難点です。
個別対応ゆえに、1回あたりの授業料は集団塾よりも高くなる傾向があります。
中学受験対策をするなら個別塾と集団塾のどちらが良いか、判断基準はいくつかあります。
以下にまとめました。
中学受験対策で個別塾と集団塾のどちらが良いか、1つ目の判断基準は成績です。
塾の模擬試験を受けている方はその偏差値で判断しやすいです。
塾の模試や業者模試で偏差値55以上ある場合、集団塾のほうがおすすめです。
理由は下記の3点です。
中学入試の応用レベルの問題を解けるようになるには、標準問題を確実に解けるだけの学力、毎日2時間以上勉強する習慣が必要です。
偏差値がすでに55以上ある子は、基礎学力が高く、毎日の勉強習慣もついているはずです。
こういう子は、集団塾で教えているような「中学入試特有の解答テクニック」を身につけると応用問題も解きやすくなります。
例えば「1から99までの奇数の和」を求める問題では、等差数列の和の公式(「(最初の数+最後の数)×個数÷2」)を使うと簡単に答えが出ます。
こうした解き方も、「どの問題でどの解き方を用いれば良いか」が分からないと余計に間違いが増えてしまいます。
また、これまで勉強をがんばってきた子には「次の分かりやすい目標」=「ライバル」の存在が新たなモチベーションにつながります。
逆に、偏差値55未満なら「個別塾単独」か「集団塾と個別塾の併用」がおすすめです。
理由は下記の2つです。
偏差値が55未満の場合、基礎学力がまだまだ足りていない可能性があります。
算数の計算を速く・正確にする力、国語の漢字や語彙の知識、など。これらが不足していると苦手な単元が生まれやすくなり、それが偏差値アップをはばむ要因になっていることが多いです。
一定期間勉強して苦手単元や苦手教科があっても、集団塾では授業が先に進んでいきます。
苦手を克服できないままになってしまいかねません。
そこで、個別塾で本人に合わせた授業進度を取るか、集団塾に通いながら苦手科目だけ個別塾を併用するのが有効です。
模試で偏差値が45未満の場合、個別塾単独がおすすめです。
模試で正答率50%以上の標準問題を7-8割解ければ、偏差値は45以上になるはずです。
そこに到達していなければ、標準レベルまでの問題を網羅的に解きなおす必要があります。
理解が抜けてしまっている箇所を洗い出し、一つ一つ対策するほうが良いでしょう。
勉強の進み方はゆっくりになるかもしれませんが、長期的に見て実力が伸びやすくなります。
また、理解できていない内容を子ども自身が把握できていない可能性があります。
そういう意味でも個別塾で一人ひとり見てもらえる環境のほうが勉強しやすいです。
中学受験対策で個別塾が良いか集団塾が良いかを判断する2つ目の基準は、「塾に通いはじめる学年」です。
こちらも学年によっておすすめ内容を以下にまとめています。
4年生までに塾に通いはじめる場合、集団塾にしましょう。
前述のように、模試の偏差値で集団塾か個別塾かを判断できますが、4年生まではまだ何とも言えません。
大手塾のカリキュラム上、中学受験の勉強に本格的に突入するのが5年生からが多いからです。
まずはほかの子と同じ内容の授業・宿題で勉強し、成績や本人の様子を見守りましょう。
模試の成績が芳しくない場合には、上記のように個別塾単独にするか個別塾と集団塾の併用に切り替えるのが便利です。
※関連記事:難関中学に合格するにはいつから塾に通えばいいか:受験対策に強い塾の特徴と入塾テスト対策に役立つ問題集
5年生や6年生で塾に通いはじめる場合、個別塾が良いでしょう。
受験勉強の開始時点でほかの受験生のほうが先に勉強を進めています。急いで追いつくために、まず個別塾で勉強をスタートしましょう。
個別塾での対策に不安を感じる場合、定期的に集団塾の模試を受けておき、追いついてきたら集団塾に移ります。
※関連記事:中学受験は5年生からでは遅い?出遅れを取り返すための対策と親のサポート方法を解説
3つ目の判断基準は「子どもの性格」です。
塾の雰囲気や進め方と子どもの性格との相性も大切です。
競争心が強い性格の子だと集団塾が合っていると言えます。
集団塾はクラス単位ですから、同じクラスにライバルを見つけやすいです。
授業中にライバルが正解できていたら「自分も正解できるようにがんばろう!」とやる気に火がつきます。
競争にあまり興味がなく、マイペースに勉強したい子もいます。
そういう子の場合は個別塾のほうが合っています。
中学受験と言えば「ライバルとの切磋琢磨で学力アップ」が常套手段でしたが、そうではないタイプの子どももいます(ママスタより)。
問題に正解できていても納得するまで考えたい。分からない箇所をそのままにして先に勉強を進めたくない。
そう感じる子は個別授業で質疑応答をしたり、授業を進めるのを一時中断して復習に時間を回したりするほうが勉強しやすいです。
個別塾が良いか集団塾が良いか、ここまで3つの判断基準を紹介しました。
以下の表のようになります。
偏差値 | 通塾開始学年 | 子どもの性格 | |
個別塾が良い場合 | 55未満 | 5年生以降 | マイペース |
集団塾が良い場合 | 55以上 | 4年生まで | 競争心強い |
これらのなかで「偏差値55以上」の子の多くは難関中学を志望しています。
言いかえると、難関中学を志望していない子は個別塾で何ら問題ありません。
難関中学を志望している子のなかで、志望校と現在の学力にまだギャップが大きいか、本人がマイペースに勉強したいタイプなら個別塾での勉強を選択するのが有効です。
※関連記事:難関中学に合格できる勉強法
「集団塾か個別指導、どちらか一方にすべき?」という疑問を持つ保護者の方は多いですが、実は併用がベストな選択になるケースも多々あります。
ただし、併用には明確な目的や計画性が求められます。以下で、成功する併用の方法と注意点を詳しく見ていきましょう。
塾の併用を考える際、まず最も大切なのが「何のために併用するのか」という目的設定です。
このように、明確な課題と目的を意識して組み合わせることが成功の第一歩です。
すべての科目を集団または個別にするのではなく、科目ごとに最適な指導形式を選ぶことが効率的な学習につながります。
※塾の先生が教える「国語の読解法」について、以下の記事でくわしく解説しています。
中学受験国語の読解テクニック
他にも、「理科や社会は知識暗記中心なので集団塾で十分」といったように、教科の性質に応じた使い分けが効果を発揮します。
※なお、理科や社会の一問一答問題を以下の記事で紹介しています。
中学受験理科のよく出る一問一答問題
中学受験社会のよく出る一問一答問題
併用の最大の落とし穴は「過密なスケジュールによる子どもの負担増」です。学習効率を最大化するには、無理のない通塾スケジュールと、家庭学習のバランスが重要です。
また、手帳やスマホアプリで「見える化」し、本人が予定を把握できるようにするのも効果的です。
併用にはメリットが多い反面、保護者の関与が不十分だと以下のようなリスクが発生します。
これを防ぐには、
といったサポートが大切です。
集団塾と個別指導塾の併用は一見効率的ですが、使い方を誤ると、かえって逆効果になってしまうことも。以下でよくある失敗パターンを紹介しながら、それぞれの改善策をお伝えします。
【失敗例】
集団塾:週3日+個別指導:週2日+家庭学習2時間…と過密スケジュールになり、子どもが疲れ果てて集中力が低下。半年後には学力も右肩下がりに。
【原因】
【改善策】
▶ “量より質”の視点を常に意識しましょう。
【失敗例】
集団塾の先生は「応用問題をとにかくこなすように」と言い、個別塾の講師は「基礎固めを徹底しましょう」と言う。学習の方針が噛み合わず、子どもがどちらを信じればいいのかわからなくなる。
【原因】
【改善策】
▶ 受験戦略の“司令塔”をどちらにするのか(あるいは”家庭”)を決めておきましょう。
【失敗例】
「せっかく2つも塾に通っているのだから、毎回テストで合格判定Aをとって当然よね?」とプレッシャーをかけた結果、子どもが過剰に緊張し、メンタル的に限界に。
【原因】
【改善策】
▶ 「親は味方」であることを、行動と言葉で伝えましょう。
塾の併用は、上手に使えば中学受験の強力な武器になりますが、失敗すれば時間もお金も無駄になってしまいます。
その差を分けるのは、保護者の「調整力」と「子どもとの信頼関係」です。
集団塾と個別指導塾の併用に成功した家庭には、共通する「習慣」や「考え方」があります。単に塾を“組み合わせる”のではなく、「目的をもって使いこなす姿勢」が結果につながっています。
【成功例】
月に1度、集団塾の塾長と個別指導の担当講師とそれぞれ面談し、指導方針のズレを早期に調整。志望校や模試結果の共有も行い、子どもにとってブレのない学習環境を構築。
【ポイント】
▶「塾との面談=報告の場」ではなく「作戦会議」と捉えると◎。
【成功例】
親が先走って塾を決めるのではなく、子どもと体験授業に複数参加。「どの先生が一番わかりやすかった?」「この授業、楽しかった?」といった会話を重ね、子どもの意思を尊重。
【ポイント】
▶ 合わない塾に“親のメンツ”で通わせ続けるのは逆効果です。
【成功例】
「夜9時以降は勉強しない」「土曜午後は自由時間」など家庭ルールを子どもと一緒に設定。ルールを守ることで生活のリズムが安定し、本人も“自分で決めたこと”として責任感を持って行動。
【ポイント】
▶ ルールは“押しつけ”でなく“合意”でつくることがカギです。
塾そのものの“質”ももちろん大切ですが、同じ塾でも「どう付き合うか」によって成果は大きく変わります。
▶このように役割を整理し、子どもの学習状況に応じて柔軟に使い分ける姿勢が理想です。
▶ 子どもが「やらされている」ではなく「自分でやっている」と思える環境が、最強の学習サイクルを生み出します。
中学受験は“塾に通うこと”がゴールではありません。
「どの塾に通うか」よりも、「どう活用するか」「どう関わるか」が成功の分かれ道です。
集団塾と個別塾を上手に使い分け、子どもとともに成長できるような受験生活を目指していきましょう。
This website uses cookies.