中学受験の勉強をしていて、多くの子どもは算数で苦労します。問題がむずかしくて1問解くごとに詰まってしまう…。こうなると勉強が楽しくなくなりますよね。保護者という立場からすれば、楽しく積極的に勉強に向かってほしいものです。
今回は、
・中学受験の算数でなぜ苦労する子が多いのか
・算数が得意な子はなぜ有利なのか
・算数が苦手な子はどうすればいいか
の3点を紹介します。
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そもそも中学受験の算数が苦手になる子は、なぜ苦手になるのでしょうか。そのヒントになる調査結果があります。
下記のグラフは、中学受験生を対象に「得意な科目」と「苦手な科目」を調査した結果です。最初のグラフが「得意な科目」で、2つ目のグラフが「苦手な科目」です。
好きな科目も嫌いな科目も算数と国語が上位にランクインしています。文科省など、いくつものほかの調査でも同様の結果です。「算数・国語のどちらかが好きで、どちらかが嫌い」という子が多いです。
では、算数・国語の好きな理由は何でしょうか。それぞれ以下のとおりです。
算数と国語では解くためのアプローチがちがっています。解法が明確に決まっているのが好きな子は算数が得意で、解法があいまいで本文に応じて考えるのが好きな子は国語が得意になりがちです。
科目による解法の違いが、好き嫌いをわけるポイントになっています。
「中学入試の合否は算数で決まる」とよく言われます。私は個人的にそこまで算数一択ではないと思っていますが、算数が得意だと有利なのは間違いないです。理由は2つあります。
上記2点についてそれぞれ説明します。
中学入試では、学校によって科目ごとの配点がちがいます。算数、国語、理科、社会ぜんぶ100点満点ではないのです。入試は合計点で競いますから、配点のたかい科目で高得点をとると有利になります。例えば、下記のようなぐあいです。
A中学は4科目均等配点で、B中学は国語・算数の比率がたかい配点です。どちらも同じレベルで、どちらも合格ラインが5割だったとします。すると、下記のような結果が起こり得ます。
A中学:算数100点、国語30点、理科30点、社会30点(合格ライン200点)
→ 合計190点で不合格…
B中学:算数100点、国語30点、理科15点、社会15点(合格ライン150点)
→ 合計160点で合格!!
どちらも算数が満点でほかの3科目は3割の得点率です。得点率は同じなのに、均等配点のA中学は不合格になり、傾斜配点のあるB中学は合格しています。同じ実力で同じ得点率なのに、一方は笑顔咲く結果でもう一方は涙です。
ここまで極端な点の取り方は少ないですが、配点次第では算数で貯金を大きくつくって合格を取ってしまうケースはよくあります。
実際、首都圏のトップ校25校の配点をみてみると、25校中21校(8割以上)の学校で算数の配点がたかくなっています。
関西圏でも同様です。関西地方の難関7校をくらべると、下記のとおりになります。
算数 | 国語 | 理科 | 社会 | 算数配点率 | |
灘 | 200点 | 200点 | 100点 | (なし) | 40% |
神戸女学院 | 120点 | 120点 | 100点 | 100点 | 26% (ほかに体育20点) |
洛南 | 150点 | 150点 | 50点 (3科受験の場合100点) | 50点 (3科受験の場合、試験なし) | 37.5% |
東大寺 | 100点 | 100点 | 100点 | 100点 | 25% |
西大和 | 150点 | 150点 | 100点 | 100点 | 30% |
四天王寺 | 120点 | 120点 | 80点 | 80点 | 30% |
大阪星光 | 120点 | 120点 | 80点 | 80点 | 30% |
東大寺中学以外のすべての難関校で、算数の配点率が均等配分の25%を超えています。また、関西圏の中学入試は算数・国語の2科受験や算数・国語・理科の3科受験も多く、算数の得点がさらに合否に影響します。
理科の計算問題は算数の文章題とよく似ています。理科の計算問題は実験や観察の問題が大半です。そういう問題は条件が端的に整理されており、しかも客観的事実だけが書かれています。
「気温がたかくなって暑いからAさんはBさんと一緒にアイスを食べて楽しみました」のような主観的な言動は問題文に書かれていません。
算数が得意な子は客観的事実を整理するのが得意なので、理科の計算問題を解くときにも同じ方法で解けます。
算数が得意なら理科でも高得点が狙えるようになります。
ここまで、中学受験で算数がいかに重要かをお伝えしました。では、算数が苦手な子は中学受験では不利になるのでしょうか。結論から申し上げると、そんなことはありません。
算数が苦手な子にぜひ実践してほしいおすすめの対策方法を4つお伝えします。
算数が苦手な子はほとんどの場合、計算力が十分ではありません。じっくり考えれば解ける、複雑な計算でなければ解けるというのでは不十分です。
なにしろ入試に出てくる問題は難易度がたかいです。文章題や図形問題で条件がややこしく、状況を整理するのに頭をフル回転させる必要があります。そのためには、複雑な計算も楽勝で解けるようにしておき、脳のスペックを余らせておく必要があります。
「計算問題は正解を重ねる」ことで実力がつきます。入試問題でつかえるようにと、解けそうにない難しい問題ばかり解いていると、ただ疲れるだけでなかなか計算力があがりません。
人間の脳は正解を繰り返すことで、正しいアウトプットができるようになります。毎日、正解できる程度のレベルの計算問題で、全問正解するようにしてみましょう。
①速さ・正確さをたかめる
②正解を繰り返す
中学入試の文章題は、問題文だけで3-4行あります。
「家から学校まで徒歩で出発した兄を10分後に弟が自転車で追いかけて(①)、兄は途中で家に向かって違う道から走って戻ろうとして(②)、弟は兄を追い越してしまって学校に先に着いて(③)、帰りはスピードをゆるめて自転車で走ったら(④)、兄弟は家から何mのところで出会った(⑤)。」
なんていうややこしい状況が設定されます。この問題では線を引いた箇所が5つあり、5つの条件が設定されていることになります。1度読んだだけでは何がどうなっているのか状況がわかりづらいです。
①~⑤それぞれの条件を少しずつ図に描いてみるといいです。棒人間の兄弟が自転車に乗ったり走ったりしている図です。いきなり5つすべてを描こうとしなくても、描けるところからでも構いません。
人間は頭でイメージできるようになると、格段に理解しやすくなります。文章題を解くときに必ず図を描くようにしてみましょう。
算数が苦手な子の大きな特徴の1つに、「正解しているが、実は理解できていない」という特徴があります。算数の問題集は単元ごとに並んでいて、同一の単元内でも同じ解き方をする問題を大問でくくっています。これをブロック学習といいます。
はじめて習う内容はブロック学習が効率的ですが、慣れてくると機械的に解くようになりがちです。
今日の授業ではかけ算をつかって解く問題がたくさんあったから、宿題もかけ算をつかって解く。なぜかけ算にするのかはわからない。という具合です。
解き方を理解できていないので、次の単元に勉強が移るとそれまで正解できていた問題も解けなくなります。
こういうとき、「解き方を忘れた」と子どもはよく言いますが、忘れたのではなく最初から身についていないのです。もちろん、子ども自身は一生懸命に勉強しています。適当にやっているわけではありません。
すでに正解している問題を指さして、「なぜこの解き方なの?」と子どもに質問して答えさせてあげましょう。「どうしてこういう解き方なんだろう?」と子どもがハタと考え、自分なりに答えてくれます。
うまく回答できなければ、問題集やノートを見直して、途中式を指さしながら「ここはどうしてこの解き方だと思う?」と聞いてあげます。これで、理解を深めてあげられます。
この方法は「ラーニングピラミッド」で説明されることの多い方法です。ラーニングピラミッドとは、学習方法のちがいによる学習定着度の違いを表した図です。下記のような図です。
単に講義を聞くだけだと定着率が1番低く、人に教える(説明する)学習方法が1番たかくなっています。90%などの数字にはあまり根拠はないと言われていますが、「能動的に学習すると定着率があがる」ことを示した、わかりやすい図ですね。
4つ目は、最後にして最大の効果を発揮する方法です。算数は配点がたかいから入試で有利になるとお伝えしました。算数と同程度の配点を持つ科目がもう1つあります。そう、国語です!
算数が得意な子が有利なら、国語が得意な子も同じように有利になります。
「なんだそれだけか」と思われたからもしれませんが、もう1つ、国語を得意にすると入試で有利になる理由があります。それは、「国語を得意にすると算数も得意にしやすくなる」ということです。
この記事の最初のほうで、私は「算数が得意な子と国語が得意な子にわかれやすい」と言いました。現象としては確かにそうなのですが、実は国語が得意な子は算数の文章題を楽々正解できるようになるポテンシャルを持ち合わせています。そのポテンシャルを発揮できていないから、算数が苦手になっているだけです。
算数の文章題と国語の長文読解はどちらも読解力が求められますが、読み方が少し違います。より広い意味での読解力が必要なのは国語で、算数の文章題は国語で必要な読解力をちょっと使ってあげれば読み解けます。
【ポイント】
■国語が得意 → 算数の文章題も得意にできる!
■算数の文章題が得意 → 国語も得意になる、かもしれない…
国語は長い文章のなかでポイントを整理しながら読む力が必要です。長い文章ですから、読んでいるうちに最初のほうのポイントを忘れてしまったり記憶違いしてしまったりします。そのため、本文中に線を引き、表にまとめて理解しやすくします。
算数の文章題も条件を整理しながら読みます。国語との違いは文章がそもそも短いのと、条件が端的にまとめられている点です。箇条書きにすると整理しやすくなります。
特徴 | ポイントの整理方法 | |
国語 | ・文章が長い ・ポイントをさまざまな言葉や表現で言いかえている ・登場人物や論者の視点で意見や見え方がことなる | ・本文中に線を引く(同じ意味の表現には同じタイプの線を引く) ・登場人物や論者の立場によって内容を分類する |
算数 | ・文章が短い ・ポイントが端的にまとまっている ・視点が客観的 | ・ポイントを1つずつ図に表す (ややこしい場合は、箇条書きにする) |
家庭学習で受験算数を得意にするなら、
通信教育もおすすめです。
算数の立体図形を3D動画で解説していたり、
受験頻出問題をあつめた教材で対策もできます。
何より、アニメーションや音楽で
勉強につかれてきた小学生が楽しみながら算数に興味を持てるようになります。
中学受験対策で実績をあげている通信教育を2つ紹介します。
【進研ゼミ小学講座の利点】
・小学生の利用者数No. 1
・タブレット(チャレンジタッチ)と紙の教材(チャレンジ)から好みの教材を選べる
・チャレンジタッチは子どもがタブレットに直接手をついて書ける(2022年4月より)
・国算理社以外の講座も充実(英語、外国人講師との英会話、プログラミング、作文・表現力、思考力)
・中学受験対策もある
・2か月から受講可能
・入会金0円
【支払方法】
・毎月、6か月一括、12か月一括から選べる
・クレジットカード、口座引落、コンビニ振込、郵便振込から選べる
【Z会の利点】
・中学受験対策に強い
・受験情報が豊富
・2年生からハイレベルとスタンダードからレベルを選べる
・入会金なし
・教室受講もできる
・算数の文章題、国語の長文読解の量が多い
【支払方法】
・毎月、6か月一括、12か月一括から選べる
・クレジットカード、口座引落支払い、振込から選べる
※ほかの通信教育も含めて大手5社をこちらの記事で紹介しています。
【最新版】小学生向けオススメの通信教育5社を比較!楽しい学びから最難関中学受験対策まで!
いかがでしょうか。算数は中学受験で重要科目です。
算数が得意になれば配点率においても、理科の計算問題においても有利になります。
苦手な子もあきらめる必要はまったくありません。苦手には理由があります。その苦手を1つ1つ丁寧につぶしていけば、自信を持って取り組めるようになります。
また、見逃されがちですが、国語が得意な子はもっと有利なポジションを獲得できるチャンスがあります。
自分の特徴をふまえ、苦手を克服し、強みを活かして第一志望校に向かって進んでいきましょう。
受験が終わったとき、「受験勉強をがんばって良かった!」と心の底から思えるように、がんばっていきましょう!
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