中学受験の算数は小学校で習わない単元や、小学校で習った単元をさらに応用させている単元がたくさんあります。
なかでも「割合」は入試の中心であり、得意な子はかなり合格に近づけます。
割合を苦手にしている子も多いですが、コツを身につけてしまえば得意になります。
そこで、今回の記事では
- なぜ割合がむずかしいのか
- どうすれば割合を解けるようになるか
- 割合対策のおすすめの問題集
をお伝えます。
特に、割合の基本から応用に入るあたりでつまずいてしまっている人は参考にしてください。
受験算数のなかでの割合の重要性
そもそも、受験算数にはどのような単元があるのでしょうか。表にしてみました。
単元名 | 単元ごとの問題種別 |
和と差 | ■平均に関する問題 ■和差算と分配算 ■消去算 ■年令算 ■やりとりの問題は「割合に関する問題の一覧」内にあります。 ■とりちがえの問題 ■差集め算の問題 ■集合の問題 ■つるかめ算に関する問題 ■いもづる算(つるかめ算の応用) |
割合 | ■割合の3用法とその応用 ■割合のやりとり算 ■割合のつるかめ算 ■相当算(還元算) ■分配算 ■倍数算 ■売買損益 ■食塩水の問題 ■比の基本問題 |
平面図形 | ■角度や面積を求める ■対角線の本数 ■面積と辺の比 ■相似な図形 ■円とおうぎ形 ■正六角形の分割 ■図形の折り返し ■図形の平行移動 ■回転移動・転がり移動 ■格子点上の問題 ■図形の構成 ■影の問題 ■図形上の点の移動 |
数の性質 | ■倍数と約数の問題 ■わり算のあまりと等差数列 ■最大公約数と最小公倍数 ■素因数分解の問題 ■既約分数の個数 ■四捨五入とその範囲 ■分数と小数の応用 ■n進法に関する問題 ■整数の分解 |
速さ | ■速さと道のり(基本) ■往復の平均の速さ ■速さと比の問題(速さと比1) ■速さのつるかめ算 ■旅人算に関する問題 ■旅人算と比 ■旅人算とダイヤグラム ■円周上の旅人算(速さと比3) ■図形上の点の移 ■時計算 ■通過算 ■歩幅と歩数 ■動く歩道 ■エスカレーターの問題 ■流水算 |
仕事 | ■仕事算(のべ量) ■仕事算(穴のあいた水そう) ■ニュートン算 |
立体図形 | ■複合立体の求積 ■展開図の応用(立体表面上の最短距離) ■投影図の応用 ■(立体)立方体の切断 ■立体の構成の問題 ■積み木の投影図 ■立体に色をぬりばらばらにする ■図形の基本問題 ■容器と水量(水量変化と水深) ■サイコロの問題 |
数列と規則性 | ■植木算 ■周期算 ■曜日の問題 ■フィボナッチ数列 ■等差数列 ■階差数列 ■群数列 ■いろいろな数列 ■三角数 ■数表の問題 ■方陣算 |
割合は8つの単元のうち1つでしかありません。ところが毎年、「割合が苦手」という子がおり、しかも中学入試にはまず間違いなく出題されます。
5、6年生で割合が苦手になる
算数の苦手単元を学年別に調査したところ、下記の表のようになるそうです。

学年があがるにつれて苦手な子が減っていく単元、
逆に苦手な子が増えていく単元があります。
【苦手ではなくなっていく単元】
計算・図形・文章題
【苦手になっていく単元】
数の性質・比と割合・速さ・場合の数
比と割合は学年があがると苦手な子が増えていきます。
しかも、3-4年生に比べて5-6年生では苦手な子の比率が2倍にはねあがっています。
5年生で急に割合の苦手な子は増えるのは、塾のカリキュラムの影響が大きいと思われます。
大手の中学受験専門塾では、5年生から受験レベルの問題演習に入っていきます。問題のレベルがあがったときに比と割合の対応に苦労する子が多いのでしょう。
※比については下記の記事で解説しています
【中学受験】「比」の勉強方法
割合が苦手になる子の特徴
割合が苦手になる子は、なぜ苦手になったのでしょうか。
割合には「抽象的な数字を扱う」という特徴があります。この特徴がスムーズな理解をはばんでいるケースが大半です。
割合が苦手になる理由のなかで特に多いものは下記の3つです。
- 割合の表し方を統一していない
- いつまでも公式に当てはめている
- 比が苦手
それぞれ説明します。
割合の表し方を統一していない
1つ目は、「割合の表し方の統一」です。
割合の表し方は下記の4種類あります。
- 分数
- 小数
- 百分率
- 歩合
1つの状況を説明するのに4種類の数字を使うと、大人でもこんがらがってしまいます。
たとえば、「Aさんの家の近所にあるスーパーに売っている商品はどの種類が多いのかを比較する」とします。
4種類の数字で表すと以下のとおりになります。

このスーパーにはどの商品が多いのか、パッと見て把握できません。
表し方がバラバラなので、感覚的にわかりづらいのです。
分数に統一する
割合はすべて分数で表すようにすると理解しやすくなります。
分数にすると、下記のようになります。

こちらのほうがかなりわかりやすいですよね。冷凍食品が多いスーパーだなとわかります。
分数への変換方法は単純です。下記の3パターンを覚えておきましょう。


いつまでも公式に当てはめている
苦手になる2つ目の理由は、「いつまでも公式に当てはめて解こうとしていること」です。
割合の公式といえば、
- 割合= くらべる量÷もとにする量
- くらべる量=もとにする量×割合
- もとにする量=くらべる量÷割合
です。
この公式自体は便利で、割合を習いはじめた頃はこの公式に当てはめれば正解が出ました。下記のような方法で解きます。
【問題】
A. 200円の20%はいくらか。
※200円はもとにする量で、20%は割合
B. クラスの10%にあたる3人が受験する。クラス全員で何人か。
※10%が割合で、3人がくらべる量
【答え】
A. 200円×20%=40円
B. 3人÷10%=30人
割合、くらべる量、もとにする量が1つずつなら上記のように公式に当てはめるだけでスパっと答えが出ました。
4年生後半以降はそれぞれ複数出てきてややこくしなり、間違いの元になります。
例えば、下記のような問題です。
「Aくんは2500円持ってスーパーに行きました。持っているお金のうち、2割で野菜を買い、残ったお金の3割で魚を買い、さらに残りの15%で飲み物を買いました。
Bさんは3000円持って17時に同じスーパーに行って買い物をしました。3割で野菜を買い、残ったお金の2割で魚を買おうとしたところ25%割引をしていました。さらに残ったお金の4割で飲み物を買って、98円の菓子パンを3つ買いました。
残ったお金は、AくんとBさんのどちらのほうが多いでしょうか。」
どれが「くらべる量」で、どれが「もとにする量」かわかりづらいです。条件がたくさんあって、公式に当てはめようとするとミスをしてしまいます。
比が苦手
苦手になる3つ目の理由は、「比が苦手」です。
割合の応用問題は比をつかいます。特に比例式(「5:〇=4:7」のような式)をつかって解く問題がよく出てきます。
連比のような割合と比を組み合わせた問題は、比を理解していないとそもそも解けません。
割合を得意にする勉強方法3つ
どうすれば割合を得意にできるか。いくつかやり方がありますが、厳選して3つお伝えします。
ぜんぶかけ算からはじめる
割合の問題が出てきたら、とりあえず「全部かけ算からはじめましょう」。
割合の問題で、「割合を求めなさい」という問題はほぼ出ません。
「何人ですか?」「何kgですか?」など、具体的な数字を求めるか、
それをもとにして、「どちらがどれだけ多いか/重いか/安いか」などを求める問題が大半です。
ここで、最初の公式を活用します。割合を求めないのなら、使う公式は下記のどちらかです。
- くらべる量=もとにする量×割合
- もとにする量=くらべる量÷割合
「かけ算」か「わり算」です。割合の問題は、答えを出すまでに何度か計算をしますが、途中式は「くらべる量」を求める計算のほうが多いです。
とりあえずかけ算して答えを求めるようにしましょう。
例題
例えば、下記のような問題です。
【問題】
A. 120人の3割は何人?
B. 50kgの40%は何kg?
C. 1クラス40人のうちが男子で、今日は女子が3人欠席した。今日の出席者で、男子と女子はどちらがどれだけ多い?
【答え】

ご覧のように、かけ算で求められます。
わり算を使う問題で間違ってかけ算を使うと、異様に数字が大きくなります。数字が大きくなると、間違いに気づきやすくなります。
【問題】
A. 120人のうち36人は何割?
B. 20kgは50kgの何%?
C. 1クラス40人のうち、15人が男子。男子は女子の何%いる?
【正しい答え】

【とりあえずかけ算】
A. 120人×36人=4320割?
B. 20kg×50kg=1000%?
C. 40人-15人=25人…女子は25人
15人×25人=375=37500%?
「4320割」「1000%」なんて聞いたことないですね。
Cの問題でも、男子より女子が多いのが問題をみれば感覚的にわかりますが、かけ算をすると男子は女子の37500%もいることになってしまいます。
とりあえずかけ算にしてみれば、こうした「明らかに違和感のある大きな数字」になります。この時点で、「あ、違う!」と気づけます。
どうしてもわからないときはかけ算をしてみてください。
比例式を得意にする
2つ目の勉強方法は「比例式を得意にすること」です。
比例式は割合の問題を解くときによく使います。比例式は名前が小難しそうですが、仕組みは単純です。
「=」(イコール)をはさんで、外にある数字どうし、内にある数字どうしをかけます。
例題
たとえば、下記のような問題でつかえます。
【問題】
ホットケーキをつくるために、薄力粉と砂糖が必要です。ホットケーキ1枚で薄力粉80g、砂糖を20g使います。自宅にある薄力粉300gをすべて使うとすると、砂糖は何g使えばいいでしょうか。
【解答】
薄力粉と砂糖の分量を比で表します。
薄力粉 : 砂糖 = 80 : 20
薄力粉 : 砂糖 = 4 : 1
薄力粉を300g使うという条件を使って比例式で表します。
薄力粉300g : 砂糖□g = 4 : 1
□ × 4 = 300 × 1
□ = 300 ÷ 4
□ = 75g
比例式を使うと、「くらべる量」「もとにする量」といった概念を使いません。
すると、「かけ算かな?」「わり算かな?」と悩む必要がなくなります。
比例式を覚えておけば、とても強い味方になってくれます。
そのためには比の勉強が欠かせません。
※関連記事:【中学受験】むずかしい「比」の対策法:苦手克服のコツとおすすめの問題集を紹介します
※関連記事:【中学受験】入試によく出る比の問題
問題文に数字を書き込む
3つ目の勉強方法は「問題文に数字を書き込むこと」です。
割合の問題は、問題文に出てきている数字が不十分なのが普通です。問題の設定状況を把握するのに必要な数字を全部問題文に書き込みましょう。
これは平面図形・空間図形の解き方と同じですが、数字を書き込むだけでかなり解きやすくなります。
※関連記事:平面図形・空間図形の解き方
例題
先ほどの例題を使って説明します。
問題
ホットケーキをつくるために、薄力粉と砂糖が必要です。ホットケーキ1枚で薄力粉80g、砂糖を20g使います。自宅にある薄力粉300gをすべて使うとすると、砂糖は何g使えばいいでしょうか。
前述のように、薄力粉と砂糖の分量は4:1だとわかりました。わかった時点で問題文にそれを書き入れます。
ホットケーキ1枚で薄力粉80g(④)、砂糖を20g(①)使います。自宅にある薄力粉300g(④)をすべて使うとすると、砂糖(①)は何g使えばいいでしょうか。
のような具合です。
解説文をいくら読んでもピンとこないことってありますよね。算数の解説文が苦手な子は「4:1」といった抽象的な式と「薄力粉300g」といった具体的な数字をつなげて考えるのが苦手です。
式は抽象的でも問題文は「薄力粉300g」のように具体的に書いてくれていますから、新たに把握できた数字を問題文に書き込むと、設定された状況を具体的に把握しやすくなります。
割合の演習におすすめの問題集
ポイントがわかったところで、実際に中学受験の「割合」の演習をして早く解きなれましょう。
おすすめの問題集を2冊紹介します。
『単元別基本問題集基本の制覇 割合―中学入試算数』

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レベル:基本~標準(★☆☆)
ほかの科目の問題や解き方のコツ
ほかの科目の勉強方法や問題を下記の記事で案内しています。ぜひ、ご覧ください。
【算数】
割合の解き方
中学入試によく出る割合の問題
比の解き方
中学入試によく出る比の問題
速さの解き方
中学入試によく出る速さの問題
平面図形・空間図形の解き方
【国語】
【中学受験】国語の勉強法と入試出題傾向を解説
【中学受験】国語長文読解を短期間で伸ばす勉強法
記述問題の書き方と勉強方法
おすすめの記述・作文問題集
【理科】
【中学受験】理科を得意にできる勉強方法
【中学受験】理科のおすすめ問題集
中学入試の理科によく出る問題の一問一答
中学入試理科でよく出る問題の語呂合わせ一覧
中学受験の理科でよく出る記述問題
中学入試の理科でよく出る計算問題の公式一覧とおすすめの計算問題集
【社会】
【中学受験】社会で貯金を20点つくる勉強法を紹介
中学入試の社会によく出る問題の一問一答
中学受験の社会によく出る年号・年代の語呂合わせ
【中学受験】歴史の流れを時代別に解説
【中学受験】社会のおすすめ問題集
まとめ
いかがでしょうか。
割合は中学受験で最重要と言っていいほど大切な単元です。
勉強の難易度が本格化する5年生から苦手になる子が激増することがわかっています。
ですが、解き方のコツをつかんで練習すれば間違いを劇的に減らせます。
現在算数を苦手にしている人は、自分にはそれだけ伸びしろがあるんだと考えるようにしてみてください。
今は苦戦しているかもしれませんが、大きな伸びしろがあるということは、逆転合格できる可能性もたかいです!
ぜひ自信をつけて、積極的に算数をモノにしていきましょう!
また、特定の単元でどうしても詰まってしまう場合は、家庭教師をスポット的に利用すると便利です。
※関連記事:中学受験での家庭教師の利用法
※関連記事:オンライン家庭教師の特徴・始め方

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