中学受験の合否を決めるのは、難しめの長い文章を楽々と読みこなす力です。
国語が苦手な子は、問題を解く以前に本文を読む段階で語彙力不足でつまずいています。
そこで、中学受験で必要な語彙力の伸ばし方について、家庭でできる取り組み方法を紹介します。
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中学受験生の語彙力の伸ばし方
中学受験において語彙力は重要です。
語彙力が乏しいと国語の長文が読みづらくなったり、記述問題で上手く解答を書けなかったりして点数を伸ばしづらくなります。
そこで、語彙力を伸ばすために家庭でできる取り組み方法をまとめました。
親子の会話でインプットの量を増やす
まず、語彙力を伸ばすには親子の会話でインプットの量を増やすのが先決です。
聞いたことのある語彙、読んだことのある語彙が少ないと語彙力は伸びません。
親はゆっくり話す
インプットの量を増やすためには、子どもにはゆっくり話しましょう。
忙しいときにはつい早口で指示しがちですが、そうすると子どもは何を言われたか正確に把握できません。「こうすれば良いのかな?」と雰囲気で察して行動するだけにとどまります。
ゆっくり話して、単語がきちんと子どもの耳に入るようにしましょう。
名詞を意識的に交ぜて話す
また、子どもに話すときは動詞ばかりにならず、名詞(二字熟語)も入れて話すよう心がけましょう。
例えば、「雨が降りそうだから学校に傘を持っていくほうが良いよ」と子どもに伝えるとします。
【動詞ばかりの伝え方】
「午後から雨が降るそうだから、学校に行くときに傘を持っていきなさい。」
【熟語ばかりの伝え方】
「午後から降雨の予想だから、登校時に傘を持参しなさい。」
2パターンとも同じ内容を伝えています。ですが、二字熟語を交ぜて話すようにすると、下記のように日常で使う語彙数を大きく増やせます。
- 降雨=雨が降る
- 予想=~そうだ
- 登校=学校に行く
- 持参=持っていく
国語の記述問題では、制限字数内に解答をおさめるために二字熟語を使う必要も出てきます。
二字熟語を日ごろから聞きなれている、使いなれていると、いざというときに答案作成に活用できます。
読み聞かせをする
子どもの語彙を増やす方法として定番なのが、読み聞かせです。
幼児期に取り組まれているご家庭は多いと思いますが、小学校6年生くらいまで続けておくとさらに効果的です。
親に情感をこめて読んでもらうことで言葉のニュアンスまで頭に残りやすくなります。
読書習慣をつける
日常生活で使う語彙数は8000~10000語程度と言われています。一方、中学受験で必要な語彙数は2~4万語ほどです。
日常会話だけで十分な語彙力をつけるのは至難の業です。
そこで、読書が活躍します。
さまざまなジャンルや著者の本を読み、語彙を増やすようにしましょう。
好きなジャンルだけでなく、普段あまり読まない本もリビングに置いてみましょう。ジャンルや著者が変わると使う語彙も変わります。
同じ読書時間・読書冊数でインプットできる語彙を大きく増やせます。
新聞を読む
本以外に、新聞も語彙のインプットに役立ちます。
新聞には外来語、漢語、名詞が多く使われ、その数は約3万語にもなります(新聞用語の語彙調査より)。
しかも最新の話題や流行語も登場します。
本とは別の角度から幅広く語彙を獲得できます。
アウトプットの量を増やす
インプットを増やすのと同時に、アウトプットも増やしましょう。
中学受験では「知っている語彙」だけでなく「使える語彙」も必要です。
特に文学的文章では、言外に含まれる微妙なニュアンスを読み取れれば、登場人物の心情を正確に把握しやすくなります。
子どもからの呼びかけにすぐ返事する
アウトプットを増やすには、子どもから話しかけられたときに子どもにすぐに返事するようにします。
親に話しかけても忙しそうにしていて反応が薄かったり無視されたりすると、子どもは話しかける頻度を減らします。すると、アウトプットの量が減ります。
もちろん反応できないタイミングのときもありますが、子どもから話しかけられたら、可能な範囲内ですぐに返事するようにしましょう。
子どもには短く話す
子どもに話しかけるときについつい説明が長くなるときもありますが、できるだけ短くしましょう。
玉川大学の佐藤久美子名誉教授の調査によると、親の話す時間が短いほど、子どもが話す機会が多かったそうです(ダイヤモンドオンラインより)。
親が聞き役になると子どもの話す機会(=アウトプットの量)が増えるようです。
作文を定期的に書く
中学入試では作文や記述問題もよく出ます。その対策もかねて、1~2ヵ月に1回程度作文を書きましょう。
使える語彙を増やすため、下記の条件で書くのがおすすめです。
- 同じ表現は2度使わない
- 「うれしい」「楽しい」のような形容詞は3回以上使わない(別の言い方で表現する)
- 同じ内容を、表現方法を変えて3回書く
この条件なら、否が応でもさまざまな語彙を使わざるを得なくなります。
1学年上の国語読解問題集を使う
国語の長文読解の演習では、1学年上のものを使いましょう。
学年を上げると記述問題が増えますし、本文に高度な語彙が多くなります。
インプットとアウトプットの両方の対策になります。
使える語彙を増やすのがポイント
中学入試で必要な「語彙」には2種類あります。「覚えている語彙」と「使える語彙」です。
覚えている語彙は、「その言葉の意味を知っているだけ」の状態です。国語で語彙や漢字の問題を正解するのに必要です。
一方、国語の長文読解や解答力を伸ばすには「使える語彙」が大きく関わります。
問題集の解答に載っている意味だけでなく、一言で言い表せない微妙な心情や言外にある批判的/肯定的/楽観的なニュアンスも感じ取れると長文をかなり読みやすくなります。
塾の授業や宿題だとどうしても「正解/不正解」に一喜一憂するまででとどまってしまいます。日常会話や家庭学習でのインプット・アウトプットの繰り返しで「使える語彙」を大きく増やせます。
テレビやSNSでは語彙力は伸びない
語彙力アップには本や新聞、辞書や図鑑が便利です。
一方、テレビやSNSは語彙力アップにはあまり効果がありません。使われている語彙数が少ないからです。
中学入試で必要な語彙数は2~4万語なのに対して、
テレビで使われている語彙数は17,000語、オンライン上で使われている語彙数は8,000語程度に過ぎないことが情報処理学会の研究報告で分かっています(情報処理学会研究報告より)。
SNSに長時間ひたる子どもが多いことが問題視されていますが、中学入試を予定しているご家庭では特に注意が必要かもしれません。
語彙力の高い子の過ごし方(事例)
では語彙力が高い子は普段、どう過ごしているのか。
これまで見てきた生徒のなかから、いくつか事例を紹介します。
※関連記事:親子でできる言葉の練習法
ニュースについて親子でよく会話をしている
ある難関中学を志望していたEさん。社会が好きで、特に地理が好きと言っていました。
よく話を聞いてみると、日本と外国との貿易事情や、海外情勢が日本に与える影響に興味がありました。
テレビのニュースで経済・貿易や海外情勢の話題が出ると食い入るようにテレビを見つめ、日本からの輸出品への関税アップや海外の紛争によって日本にどう影響があるかなどについての意見を、親に言っていたそうです。
デジタル・アナログといった外来語や日本と海外を比較する説明的文章でよく使われる語彙が豊富でした。
説明的文章に非常に強く、内容一致問題は大抵正解していました。
また、記述問題でも本文中の言葉を自分の語彙に言いかえる力が高かったので、字数内に収めるのが上手く、正解を取れなくても部分点をきっちり稼げる子でした。
国語で安定して高得点を取れるので、他の科目の学習方針を決めやすかったのが印象的でした。
辞書や図鑑をよく読んでいる
つづいては、おとなしい性格のTくん。
理科の図鑑を読むのが好きで、時間があればリビングに置いてある図鑑を読んで過ごしていたそうです。
※関連記事:中学受験をする小学生におすすめの図鑑(理科、社会、国語、算数)
そのうち国語の文章読解で意味のあやふやな言葉に出合うことが増えてきたため、辞書で意味を調べるようになりました。
すると、調べている単語の意味だけでなくその周辺的な知識も面白がって読みふけるようになり、言葉のうんちくをたくさん披露してくれました。
対義語や関連語の知識が豊富だったので、説明的文章の対比を得意にしていました。
あるテーマについて誰かの意見が出てきたら、その主張内容の対義語から筆者の主張内容を想像しながら読めていました。
筆者の主張が想像と違っていても、使われている言葉を見ればどう違っているのかをすぐに把握できるようでした。
また、理科の図鑑をもともと好んでいたこともあり、理科系の話題(環境問題、植生、動物の生態など)にも強かったです。
英語学習をしている
英語が好きで、英語と国語で受験したNくん。
英語と日本語の言葉が指すイメージの違いを意識しながら勉強していたからか(夕方≠evening、前置詞の使い方など)、日本語の言葉もそれが指すイメージを頭に思い浮かべながら覚えていたようです。
「『悲しい』と『哀しい』はどう違うのか?」など、意味の違いや使う場面をよく聞かれました。
文学的文章が得意で、特に「登場人物がなぜその言動を取ったのか理由を説明しなさい」といった記述問題で、本文中の表現を別の言葉に言いかえて上手に解答を作成していました。
また、心情を問う選択問題でも「憤りを感じた」「悔しがった」などの言葉の違いで正しい選択肢を選べていました。
語彙力を高くできる環境づくりの方法
語彙力を伸ばすには日常の習慣だけでなく、子どもの過ごす環境でできる工夫もあります。
リビングに辞書や図鑑を置く
まず、リビングには辞書や図鑑を置いておきましょう。
子どもがすぐに手に取らなくても良いので、しばらく置いておきましょう。なかなか興味を示さなければ、親が使っている姿を子どもに見せるようにします。
※関連記事:中学受験をする小学生におすすめの図鑑(理科、社会、国語、算数)
新聞や親が読む本をリビングに置く
子ども用の本だけでなく、親が読む本もリビングなどに置いておきます。
子ども向けの書籍だけだと小学生に必要な語彙までしか入ってきません。ですが中学入試には中高生向けの語彙も必要です。
そこで、親が読んでいる本や新聞を子どもの目に触れる場所、手に取って読める場所に置いておきます。
知らない漢字が当然出てくるので、漢字の読み方や意味を聞いてくるようになります。
そこから、本やニュースの内容について軽く説明してあげると、語彙を増やすきっかけづくりができます。
毎月図書館で新しい本を借りる
語彙力アップの基本は読書です。地域の図書館で定期的に新しく本を数冊借りましょう。
全国学校図書館協議会の調査によると、小学生の1か月の平均読書冊数は13冊前後です。
その冊数を目安に本を借りるようにしましょう。
あるいな童話館ぶっくくらぶなど、小学生向けの本の定期購読サービスを利用するのも便利です。親や子が本を選ぶ必要がなく、幅広いテーマで良質な本をプロが選んで送ってきてくれます。
子どもが自由に過ごす時間を長めにつくる
小学校低学年の間は、毎日の学習習慣以外に子どもが自由に過ごす時間を長めに取りましょう。
自由時間は子どもの好奇心を育て、創造力を伸ばす大きなきっかけになります。
語彙が豊富になる子どもは好奇心が強く、自ら興味のある分野の本を読んだり調べたりします。
志望校の難易度が高くなると、知っている語彙力よりも使える語彙力が成績に大きく影響してきます。
知的好奇心を持って取り組むと、真似をしたり言葉を反復したりすることが多くなり、使える語彙が増えやすくなります。
語彙力が高いとなぜ中学入試に役立つのか
ここまで、語彙力の伸ばし方を紹介してきました。中学受験で語彙力を重視するには理由があります。
その理由を以下にまとめました。
※関連記事:中学受験国語の成績アップ:塾でがんばっているのに苦手になる理由と効果的な伸ばし方完全ガイド!
中学入試で中3~高3並みの語彙数が必要だから
第一に、中学入試では小学生の普通の語彙力では足りません。
中学入試で必要な語彙数は約3万語以上(中学3年生並み)、
難関中学入試だと4万語以上(大学入試をする高校3年生並み)と言われています。
一方、小学6年生の平均的な語彙数は約1万5000語前後という調査結果が出ています。
志望校に合格するには、算数の計算力とともに国語の語彙力も高いレベルで要求されます。
※関連記事:難関中学に合格できる勉強法
なお、難関中学受験ではZ会を塾と併用するか、Z会のみで受験する人も多いです。大手塾とそん色のないカリキュラム内容を半分以下の費用で受けられます。
Z会について興味のある方は下記のリンク先(Z会のHP)で資料請求をされてみてください。
Z会の通信教育 資料請求はこちら問題文を短時間で読み解くため
2つ目の理由は、問題文を短時間で正確に読み解くためです。
ひと昔前にくらべて、中学入試の国語や理科は長文化しています。
特に国語や理科ではその傾向が強く、2023年度の開成中学の入試では、50分で合計1万2000字ほどの問題文を読む必要がありました。
問題文が長くなると、語彙の乏しい子は同じ箇所を何度も読み返します。1度読んだだけでは1文ごとの意味をふわっとしか受け取れず、繰り返し読んで少しずつ内容を明確にしていくためです。
語彙力を上げるだけでスラスラ読めるわけではありませんが、語彙力が不足していると致命的なレベルで内容を読み取れません。
国語の記述問題で点数を取れるようにするため
3つ目の理由は国語の記述問題対策です。
「理由を書きなさい」「どういうことか説明しなさい」と問われる記述問題では、本文中の言葉をそのまま使うだけでは正解を取れないケースがほとんどです。
記述問題では、問題と解答を読むだけで内容がしっかり伝わるような解答を書く必要があります。そのために、下記のような作業をします。
- 外してはいけないキーワードを選ぶ
- 動詞を名詞化する
- 本文中の内容を別の言葉に言いかえる
これらの作業をするには、筆者の主張を的確に説明している言葉や、登場人物の微妙な心情を端的に表現している言葉を探し出します。
キーワードが明確ではない文章やそのままだと字数が多すぎる場合もよくあります。本文中の内容を異なる言葉で言いかえるなどの作業をするには、それだけ豊富な語彙が頭の中に入っていないとできません。
作文や面接でも語彙力が問われる
さらに、記述問題だけでなく作文でも同様に語彙力がモノを言います。
語彙が不足していると「すごい」という稚拙な口語表現になって減点されますし、同じ表現がつづくとまた減点対象になります。
面接が実施される学校では子どもの受け答えの仕方を当然、試験対象です。
「12歳にしては幼い言い方だな」と面接官に感じさせてしまわないように、語彙力を日ごろからあげておきたいところです。
※関連記事:中学受験面接の質問と回答例
中学受験で必要な語彙力を伸ばせるドリル・問題集
最後に、中学入試で求められる語彙力を短期間で伸ばせるドリルや問題集を紹介します。
いずれもAmazonのリンクをつけているので、リンク先でお得に購入いただけます。
『【中学入試】言葉力1200―文章が読める!わかる!書ける!』
こちらのドリルは中学入試でよく出題される言葉を1200語集めて掲載しています。
ページの上半分で意味を暗記して、ページ下半分の穴埋め問題でアウトプットを練習できます。
意味が分かるだけでなく書けるようになることも重視しているドリルです。
【中学入試】言葉力1200―文章が読める!わかる!書ける!
『これだけは押さえておきたい! 中学入試用 国語力がアップすることば1200』
中学入試の四谷大塚監修の語彙力アップのためのドリルです。こちらも1200語掲載されています。
同音異義語や外来語、意味を説明しにくい言葉もたくさん載っており、ドリル形式で毎日触れておくと国語の長文を読みやすくなるはずです。
これだけは押さえておきたい! 中学入試用 国語力がアップすることば1200
『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集』
こちらは中学入試に特化しているわけではありませんが、小学生向けの語彙力アップの人気ドリルです。
言葉の意味を覚えるだけでなく、その言葉を使った複数の文章で比較して意味の違いを考えさせる(書かせる)など、微妙なニュアンスの違いを区別できる演習までついています。
「語彙が不足しているかも」と思ったときにまずおすすめするドリルです。
ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集[小学生版ベーシック]
まとめ
いかがでしょうか。
中学入試をする親子向けに、家庭で子どもの語彙力を伸ばせる方法や語彙力の高い子の過ごし方、語彙力を伸ばせる環境づくりの仕方を紹介しました。
特に難関中学の国語の長文読解や記述問題では使える語彙の数が合格につながります。
親子のコミュニケーションの取り方の工夫やドリル・問題集の活用で語彙力をしっかり伸ばしておきましょう!
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