中学2年生の数学では、「直角三角形の合同」を習います。苦手意識を持つ中学生が多い単元のひとつです。
ですが、合同の証明問題や高校入試の図形問題を解くうえで非常に重要です。
そこでこの記事では、「直角三角形の合同条件」や「合同を証明する方法」についてくわしく解説しています。
さらに、合同を使って辺の長さや角度を求める練習問題も取り上げ、よくある間違いとその対策も紹介します。中学生が理解しやすいように、分かりやすくポイントを押さえながら進めていきます。
三角形の合同とは?
三角形の「合同」とは、形や大きさがまったく同じで、対応する辺と角の長さがすべて等しいことを意味します。
つまり、1つの三角形を他の三角形に重ねると、ぴったりと一致する状態を指します。この関係にある2つの三角形は「合同である」と言います。
三角形の合同条件3つ
三角形が合同であるためには、以下の3つの条件のいずれかが成立する必要があります。
- 3辺がそれぞれ等しい
三角形の3つの辺がそれぞれ等しい場合、三角形は合同になります。 - 2辺とその間の角がそれぞれ等しい
三角形の2つの辺と、その2辺の間にある角が等しいとき、三角形は合同です。 - 1辺とその両端の角がそれぞれ等しい
三角形の1つの辺と、その辺の両端にある2つの角が等しいとき、三角形は合同になります。
これらの条件のいずれかが成り立つと、三角形が合同であることが証明できます。
直角三角形の合同条件2つ
直角三角形の合同条件には2種類あります。2つの条件をいずれかを満たせば、2つの直角三角形が合同(形や大きさが完全に一致)であると証明できます。
以下、それぞれの条件について詳しく説明します。
斜辺と1つの鋭角が等しい場合
1つ目の合同条件は、斜辺の長さと1つの鋭角がそれぞれ等しい場合です。この条件を満たすと、三角形全体の形が完全に一致するため、2つの直角三角形が合同であるといえます。
例
直角三角形ABCと直角三角形DEFについて、斜辺ACが斜辺DFと等しく、さらに∠ACBと∠DFEと等しい場合、三角形ABCとDEFは合同です。
斜辺と他の1辺が等しい場合
2つ目の合同条件は、斜辺の長さと他の1辺がそれぞれ等しい場合です。この条件でも、2つの直角三角形の形と大きさが一致するため、合同であることが確認できます。
例
直角三角形ABCと直角三角形DEFについて、斜辺ACが斜辺DFと等しく、さらに辺BCが辺EFと等しい場合、三角形ABCとDEFは合同です。
直角三角形の合同条件まとめ
直角三角形の合同条件は、以下の2つです。
直角三角形の合同を断言できる理由とその根拠
直角三角形の合同が言える理由には、直角三角形の性質と三角形の合同条件の基礎が関係しています。
ここでは、直角三角形が合同であると断言できる理由をくわしく説明します。
三角形の合同条件と直角三角形の特性
三角形が合同であるための条件として、以下の条件がよく知られています:
直角三角形の性質上、1つの角が90度(直角)であると必ず言えます。この性質により、直角三角形の斜辺と1つの角、または斜辺と1つの辺が等しい場合に、三角形全体の形が一致するのです。
直角三角形2つをくっつけると二等辺三角形になり合同が言える
直角三角形では、斜辺は「最も長い辺」であり、残りの2つの辺はこの斜辺に直角で接しています。
もし斜辺の長さが一致し、さらに1つの角か1つの辺が一致する場合、残りの辺の長さや角度も自動的に決まることになります。
これにより、三角形全体の形が一致するため、合同であるといえます。
先ほどの直角三角形(斜辺と他の1辺、1つの鋭角がそれぞれ等しい)をひっくり返して以下のように背中どうしをくっつけます。すると、「1つの大きな二等辺三角形」になります。二等辺三角形は2つの底角(∠ACBと∠DFE)が等しいので、∠CABと∠FDEも等しい角度だと分かります。
このことから、「斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい」と証明できれば△ACB≡△DFEとなり、残りの辺や角も等しいと言えるようになります。
直角三角形の合同を言える理由のまとめ
直角三角形の合同を断言できるのは、直角という特殊な角度が含まれることで、他の2つの辺や角度が固定されるためです。
斜辺と1つの角、または斜辺と1辺の条件が満たされると、直角三角形の形が唯一のものになるので、これによって合同であると証明できます。
この性質を理解しておくと、直角三角形の証明問題にも役立つでしょう。
直角三角形の合同条件を効率よく覚えるためのコツ
直角三角形の合同条件を効率よく覚えるためのポイントについて、わかりやすく解説します。
直角三角形の合同条件は、以下の2つです。
これをしっかり覚えるためのコツを紹介します。
ポイント1. 「斜辺」と「1つの角または1辺」をセットで覚える
直角三角形の合同条件は、必ず「斜辺」と「他の1つの要素」(角または辺)から成り立っています。「斜辺+角」か「斜辺+辺」のどちらかが等しければ、合同であると証明できます。
ですので、「斜辺」と「1つの角や辺が同じであれば合同」と覚えておくと、スムーズに思い出せます。
ポイント2. 覚え方の語呂合わせ
「直角三角形の合同条件は、斜辺+角か斜辺+辺で決まる」というリズムで覚えてみましょう。
例えば「しゃーかく(斜辺+角)」と「しゃーへん(斜辺+辺)」のように音で覚えると、テスト中にも思い出しやすくなります。
ポイント3. 図を使ってイメージする
覚える際には、実際に直角三角形の図を描き、「斜辺」「鋭角」「他の1辺」の関係を確認しながら覚えると効果的です。
例えば、2つの直角三角形の斜辺が等しく、1つの鋭角が等しい場合、もう1つの角度や辺も一致することがわかります。
図でイメージを固めておくと、理解が深まります。
まとめ
- 「斜辺と1つの角や辺」のセットで覚えること
- 語呂合わせでリズムに乗せて覚えること
- 図で確認しながら覚えること
この3つのコツを活用すると、直角三角形の合同条件を効率よく記憶でき、テストでも自信を持って解答できるようになるでしょう。
直角三角形の合同証明の方法
直角三角形の合同を証明する方法について、中学生向けに分かりやすく解説します。直角三角形には特別な合同条件があり、これらの条件を使うと簡単に証明ができます。
具体的にどのような手順で証明を進めていくか、順を追って説明します。
直角三角形の合同条件を確認する
直角三角形が合同であることを証明するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい
- 斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい
これらの条件のうちどれが使えるかを確認するために、まずは証明する2つの三角形に目を向け、共通する部分や等しいとわかっている辺や角度を探します。
条件に合うかどうかを見つける
次に、与えられた情報からどちらの合同条件を使えるかを判断します。以下に例を挙げて説明します。
- 斜辺と1つの鋭角が等しい場合
例えば、2つの直角三角形でそれぞれの「斜辺が同じ長さ」で、さらに「1つの鋭角が等しい」ことがわかれば、この条件から2つの三角形は合同であると証明できます。 - 斜辺と1つの他の辺が等しい場合
例えば、2つの直角三角形の「斜辺が等しい」とわかり、さらに「他の1つの辺」が等しいことがわかれば、この条件で合同であると示せます。
合同の証明の書き方
実際に証明を書く際には、以下の手順に従うと書きやすいです。
- 三角形の名前を書く:例えば「△ABCと△DEFにおいて」のように、それぞれの三角形の名前を明示します。
- 等しい辺や角を書く:例えば「条件より 辺AB=辺DE」のように、問題文や図にかかれている条件から分かる等しい辺や角の組み合わせを示します。
- 使用する合同条件を示す:例えば「斜辺と1つの鋭角が等しいので」か「斜辺と他の1辺が等しいので」と、合同条件を示します。
- 結論を書く:最後に「よって、△ABC ≡ △DEF」と記して証明を完了させます。
具体例
たとえば、次のような問題を考えます。
「直角三角形ABCと直角三角形DEFがあり、辺AB = 辺DE、辺AC = 辺DFのとき、∠BAC = ∠EDFであることを証明しなさい。」
直角三角形ABCと直角三角形DEFにおいて
条件より 辺AB = 辺DE …①
また、辺AC = 辺DF …②
①②より、斜辺とそのほかの1辺がそれぞれ等しい。
よって △ABC≡△DEF
以上より ∠BAC = ∠EDF
このように、「直角三角形の合同条件」を使うと、通常の三角形の合同条件よりも簡単に証明ができます。
直角三角形の合同証明問題でのよくある間違い方とその対策
合同証明を行うときに中学生がよくやってしまいがちな間違い方と、その対策方法についてくわしく解説します。
合同証明は特に注意が必要なポイントが多く、ここでは代表的なミスとその防止策を紹介します。
合同条件の覚え間違い
直角三角形の合同条件は「斜辺とその他の1辺」「斜辺と1つの鋭角」の2つです。これを間違えて「斜辺と1つの直角」のように間違えてしまうケースがよくあります。
防止方法
証明問題を解きはじめる前に、「直角三角形の合同条件」を思い出すようにしましょう。ノートの余白にメモしておいて、慣れるまではそのメモを見ながら問題を解くようにすると間違いを防げます。
対応する辺や角の書き忘れ
合同の証明で必要な情報として対応する辺や角を書き出す際、辺や角の一致を書くのを忘れたり、書き間違えてしまうことがあります。
例えば、「辺AB=辺DE」と書かないといけないところを単に「AB = CD」としてしまうと不正解になります。角度も∠ABCや∠DEFのように「∠」をつけ忘れがちです。
防止方法
自身の解答を書きながら「辺AB(ヘン エービー)」のように「辺」をつけて心の中で発声するようにしましょう。
単に「AB(エービー)」と発音するより間違いを格段に減らせます。
対応する頂点どうしの順番を間違える
また、書く順番にも注意が必要です。対応する辺や角を「対応する頂点の順」に書かないといけません。
例えば、「△ABCと△DEFにおいて」と書き出したら、辺ABに対応するのは辺DEです。「辺ED」と逆に書いてしまうと×になります。同様に、∠ABCに対応するのは∠DEFであり、∠FEDと書くと×です。
防止方法
合同の証明問題では、問題文に「辺AB=辺DEのとき」「△ABCと△DEFが合同であることを証明しなさい」のように書かれています。問題文に書かれている順番を確認しながら解答を書くようにしましょう。
この方法は、「どの辺とどの辺が対応しているか」が分かりづらいときには非常に役立つヒントにもなります。
証明の最後の結論を書き忘れる
証明の途中で条件を満たしていることがわかっても、最後に「よって、△ABC ≡ △DEF」などの結論を書かずに終わってしまうことがあります。
途中まで合っていても、最後の一言が抜けただけで減点になるので注意が必要です。
防止方法
証明は「条件がそろっていることを確認し、結論を示す」までが一連の流れです。最後に必ず「よって、△ABC ≡ △DEF」と書いたか、解答を見なおす時間を設けましょう。
練習してミスを減らそう
証明の問題では、練習を通じて「どこでミスをしやすいか」を理解することが大切です。いきなり完ぺきに解けなくても大丈夫です。
様々なパターンの問題を解き、上記のポイントを意識しながら取り組むことで、合同の証明問題の解き方(書き方)に慣れていきます。
また、合同の証明以外にも数学の文章問題の応用では、「3つの連続する整数の問題」や「2ケタの自然数の十の位と一の位を入れ替えた問題」のように間違いやすいものがあります。
それらの問題の解き方や練習問題を以下の記事でくわしく解説しています。
3つの連続する整数の問題の解き方と練習問題:数学の証明問題の書き方や解答のコツ
2ケタの正の整数の10の位の数と1の位の数を入れ替えた問題などの解き方:中学数学頻出の応用問題の練習
直角三角形の合同の問題
ここまで説明してきた内容のおさらいとして、直角三角形の合同を証明する問題や合同を使って辺の長さを角度の大きさを求める練習問題を解いてみましょう。
問題(1):直角三角形の合同の証明
2つの直角三角形△ABCと△DEFがあります。辺AB = 辺DE、辺BC = 辺EFのとき、△ABC ≡ △DEF であることを証明してください。
解答と解説
合同を証明するためには直角三角形の合同条件の一つを満たしている必要があります。今回は「斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい」ことを利用します。
直角三角形ABCと直角三角形DEFにおいて
条件より 辺AB = 辺DE …①
また、辺AC = 辺DF …②
①②より、斜辺とそのほかの1辺がそれぞれ等しい。
よって △ABC≡△DEF
問題(2):直角三角形の合同の証明
直角三角形XYZと直角三角形PQRについて、辺XY=辺PQ=5cm、辺XZ=辺PR=13cmのとき、直角三角形XYZと直角三角形PQRが合同であることを証明してください。
解答と解説
直角三角形XYZの斜辺は辺XZであり、直角三角形PQRの斜辺は辺PRです。どちらも13cmなので、「斜辺が同じ長さ」だと分かります。
また、辺XYが対応する辺PQと同じ長さ(どちらも5cm)なので、「斜辺とその他の辺がそれぞれ等しい」という合同条件を使えます。
直角三角形XYZと直角三角形PQRにおいて
条件より 辺XZ = 辺PR …①
また、辺XY = 辺PQ …②
①②より、斜辺とそのほかの1辺がそれぞれ等しい。
よって 直角三角形XYZ≡直角三角形PQR
問題(3):直角三角形の対応する辺の長さを求める問題
斜辺の等しい直角三角形KLMと直角三角形NOPがあります。∠LKM = ∠ONP = 45°です。辺LMが13cmのとき、辺OPの長さを求めてください。
解答と解説
直角三角形KLMと直角三角形NOPが合同であることを証明できれば、辺LMに対応する辺OPの長さを13cmと示すことができます。
問題文の条件からは、「斜辺が等しい」「1つの鋭角が等しい(∠LKM = ∠ONP)」ことが分かっています。
直角三角形KLMと直角三角形NOPにおいて
条件より 辺KM = 辺NP …①
また、∠LKM = ∠ONP …②
①②より、斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい。
よって 直角三角形XYZ≡直角三角形PQR
対応する辺の長さは等しいので、辺OP=13cm
まとめ
中学生向けに、直角三角形の合同条件やその覚え方、合同の証明の仕方を解説しました。
中学数学では、直角三角形の合同を学ぶと数学の図形応用問題を解きやすくなります。正確な証明の手順を理解し、合同の考え方を応用できるようになれば、テストでも高得点を狙えるようになります。
もっと練習問題を解きたい人向けに、以下の記事で数学の問題集を紹介します。
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