中学受験に向けて努力を重ねてきたものの、さまざまな理由で受験をやめる決断をするご家庭も少なくありません。親子で悩み、葛藤した末の「受験をやめる」という選択。
けれど、そこで終わりではなく、新たなスタート地点に立ったとも言えます。
この記事では、中学受験をやめた後に起こりやすい子どもの変化や親の接し方、勉強・生活スケジュールの立て直し方、そして高校受験に向けた中長期的な目標設定まで、実際の体験談も交えて詳しく解説します。
中学受験をやめたあと、子どもと前向きに歩んでいくためのヒントを見つけてください。
※なお中学受験をやめるかどうかの判断基準について、以下の記事でくわしく解説しています。
中学受験をやめたいと思ったときの対策:親ができる対処法と勉強嫌いにならないようにするサポート方法
中学受験をやめた後、どうすればいい?最初にすべきこととは
中学受験を途中でやめるという決断は、子どもにも保護者にも大きな心の動揺をもたらします。重要なのは「やめた後」にどう動くかです。
焦って次のステップを決める前に、まずは気持ちの整理と受け止めが必要です。
参考:アンケートで判明!受験した&しなかった親子の本音(日経ウーマン)
まずは「がんばったね」と子どもを受け止める
中学受験をやめるということは、目標に向かって努力していた道を途中で引き返すことです。子どもは「自分は失敗したのか」「期待に応えられなかったのか」と感じているかもしれません。
そのため、親がまず伝えるべきは「がんばったね」「よくここまでやったね」という言葉です。
この言葉には、子どもの努力を肯定し、これまでのプロセスを価値あるものと認める力があります。
否定や説教ではなく、「あなたががんばってきたことは事実だよ」と伝えることで、次の一歩に前向きな気持ちで進めるようになります。
親の心構えもリセットが必要
親自身も、「この数年、我が子のために頑張ってきたのに……」という気持ちを抱えているかもしれません。しかし、中学受験をやめたという決断は、マイナスではなく「方向転換」です。
まずは、親自身が「中学受験ありき」の思考から離れることが必要です。
- 「高校受験で巻き返せばいい」
- 「別の道でも子どもの良さは伸ばせる」
- 「親子関係を保つことの方が大切」
こうした視点に立つことで、子どもにも安心感が伝わります。
親の焦りや未練は、言葉や表情を通して子どもに伝わるものです。親がリセットし、落ち着いた姿勢を見せることで、子どもも「やり直せるんだ」と前向きになれます。
「やめた理由」を明確にすることで次の目標が見える
やみくもにやめたのではなく、「なぜやめたのか」を親子で共有し、納得しておくことが大切です。理由を明確にすることで、次の進路や生活の指針が見えてきます。
たとえば、
- 成績が伸びず心が折れた → 達成感を得られる学びの形を考える
- 勉強漬けでストレスが限界だった → 心身のバランスを取りながら目標を立てる
- 家族の方針が変わった → 新たな受験や学校選びに向けて話し合う
このように、「やめた理由」を曖昧にせず共有することで、子ども自身も「じゃあ次はこうしよう」と建設的な気持ちを持てるようになります。
中学受験をやめた子どもに起こりやすい変化とその対応策
中学受験を途中でやめた後、子どもには心と生活の両面で変化が表れやすくなります。これらを放置すると、長期的な学習意欲や将来の進路選択にも悪影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、具体的に起こりやすい3つの変化と、それぞれにどう対応すればいいかを解説します。
モチベーションの低下
「目標がない状態」が一番のリスク
中学受験という明確な目標を失った子どもは、「次に何を目指せばいいのか分からない」という“空白期間”に突入します。この「目的のない状態」は、やる気の低下、日々の学習の意味が見いだせない状態につながります。
対応策:
- 子ども自身に「これからやってみたいこと」「得意なこと」を整理させてみる
- 親子で話し合って「高校受験に向けた準備」「新しい習い事」など、短期的な目標を設定
- 「週ごとの小さな目標」を作って、達成感を得られる工夫をする
モチベーションは外から与えるだけでなく、本人が納得できる「次の目的」が必要です。
自己肯定感の低下
「失敗体験」ではなく「選択の一つ」として捉える
中学受験をやめたことを「自分は途中であきらめた」「期待に応えられなかった」と否定的に受け止めると、自己肯定感が下がってしまうおそれがあります。
対応策:
- 「やめたことは悪いことじゃない」「今の決断も正しい選択の一つだった」と繰り返し伝える
- 中学受験に取り組んでいた努力を言葉にして認め、「あなたは頑張れる力がある」と伝える
- 「挑戦→判断→次のステップ」というプロセスに意味があることを一緒に振り返る
「途中でやめる=失敗」ではなく、「自分に合った道を選んだ」と捉え直すことが、自己肯定感の回復につながります。
生活リズムの崩れ
ダラダラ生活を避ける具体策
受験勉強中心の生活から急に時間の自由が増えると、子どもはつい夜更かしやゲーム漬けなど、だらけた生活に流れやすくなります。
対応策:
- 「起床時間」「就寝時間」「学習時間」「自由時間」を含めた1日の生活スケジュールを一緒に作る
- 午前中に軽く勉強や運動を入れて、生活にリズムを戻す
- 達成したらチェックできる「習慣表」や「ごほうび制度」を活用する
無理のないペースで少しずつ整えていくことが大切です。学校の生活リズムとできるだけ近づけることを目指しましょう。
勉強の目標をどう立て直す?小学生のうちにできること
中学受験をやめたとしても、子どもが「勉強しなくていい」と感じてしまうと、その後の学習意欲に悪影響が出ます。
大切なのは、中学受験という特別な目標がなくなっても、日々の勉強の価値や目的を再確認することです。
中学受験をやめても勉強は続けるべき理由
受験をやめたからといって、勉強の必要性がなくなるわけではありません。むしろ、学習習慣がなくなってしまうと、中学校に入ってから大きなハンディキャップになる可能性があります。
勉強を続けるべき主な理由:
- 学習の「習慣化」が維持できる(空白期間を作らない)
- 学力が安定すれば自信が回復しやすい
- 将来的な高校受験の基盤づくりができる
「勉強=受験のため」から「自分の将来のため」「自己成長のため」に意識を切り替えるサポートが、親に求められます。
短期的・中期的・長期的な目標の立て方
明確な目標を設定すると、子どもは「何のために勉強するのか」が分かりやすくなり、日々の学習に意味を持てるようになります。
例:小テスト満点→通知表オールA→内申点重視の高校へ
短期目標(1週間〜1か月)
- 算数の小テストで100点を取る
- 音読を毎日続ける
中期目標(3か月〜半年)
- 通知表でオールAを目指す
- 苦手科目を平均以上に引き上げる
長期目標(1〜3年)
- 内申点を高くキープして高校受験を有利にする
- 自分に合った高校・進路を選べるようにする
子どもと一緒に「できそうなこと」から始めて、達成感を積み重ねていくことが大切です。
勉強が嫌いにならないための環境づくり
中学受験で疲弊した子どもは、勉強そのものに苦手意識や拒否感を持ってしまうことがあります。無理に詰め込むより、「楽しい」「自分から進んでやれる」環境を整えることが最優先です。
通信教材・タブレット学習の活用も有効
タブレット型の通信教材(進研ゼミ、Z会、スタディサプリなど)は、
- ゲーム感覚で学べる
- 自動で丸つけや解説が出るため、親の負担も少ない
- 学習習慣の維持に役立つ
という点で、受験後の「やる気の回復」にも有効です。子どもが前向きに学習と関われる方法を一緒に模索しましょう。
Z会の通信教育 中学生コース
※Z会で難関高校に合格するための方法を以下の記事でくわしく解説しています。
【中学生】Z会タブレットコースの進め方:成績上位を取って難関校に合格する方法や費用を解説
生活スケジュールを見直そう:習い事、遊び、勉強のバランス
中学受験をやめた後は、時間に余裕ができる反面、生活リズムが崩れやすくなります。勉強と遊び、習い事のバランスを整えた生活を再構築することが大切です。
平日と休日のメリハリが大事
平日と休日のスケジュールにメリハリがないと、ダラダラした生活になりがちです。
対策ポイント:
- 平日は「勉強1〜2時間+自由時間」で集中と休息をバランスよく
- 休日は「午前中は勉強・午後は外遊びや家族時間」などルールを決める
- 「1週間の予定表」を親子で一緒に作って、見える化する
習い事を取り入れるなら「目的」を明確に
受験勉強に充てていた時間を新しい習い事に使う家庭もありますが、何でもかんでも詰め込むと逆効果になることも。以下を意識しましょう。
習い事選びのポイント:
- 本人が「やってみたい」と思えるものか
- 将来の高校・大学入試や自己表現に活かせるか(例:英語、プログラミング、スポーツ)
- ストレス発散や成功体験につながるか
家族との会話時間を増やすことで子どもの変化に気づける
受験ストレスから解放された後も、子どもの心には不安やモヤモヤが残っていることがあります。定期的に会話することで、そうした小さな変化にも気づけます。
会話のコツ:
- 一方的に「こうしなさい」と言わず、子どもに質問して考えを聞く
- 一緒に夕食をとる、散歩する、ゲームをするなどの「自然な時間」を増やす
- 子どもが言いたがらない場合は、「最近どう?困ってることない?」と緩く投げかける
高校受験に向けた中長期プラン
小学5・6年:基礎学力を固める「準備期」
● 勉強
- 学校の教科書内容を中心に「確実な理解」を目指す
- 苦手分野(特に算数・国語)を徹底補強
- タブレット教材や通信教育で自学習の習慣をつける
- 読書・作文・時事問題への関心を深める(面接や小論文対策にも◎)
● 生活
- 毎日のスケジュール(遊び・習い事・家庭学習)のリズムを作る
- 習い事は「続けたいもの」「高校受験後も活きるもの」を厳選
● メンタル
- 「中学受験はやめたけど、次に向かってがんばってるね」と励ます
- 小さな成功体験(テストの点数UPなど)を積み重ねて自己肯定感UP
中学1年:情報収集と目標設定の「スタート期」
● 勉強
- 各教科の定期テストで内申点を意識した学習をスタート
- 苦手科目を早期に特定して塾・自学で補強
- 英検・漢検など、内申に有利な検定にも挑戦
● 生活
- ノート管理・時間管理など「中学生の学習習慣」を確立
- 家庭で定期的に「振り返り+計画」をする習慣を
● メンタル
- 高校の種類(公立・私立・専門系)を親子で調べ、興味を広げる
- 文化祭や説明会に行って「行きたい高校」を具体化
中学2年:成績と志望校を固める「飛躍期」
● 勉強
- 主要5教科の基礎力・応用力をつける(定期テスト重視)
- 学校ワークの早期完了+応用問題へのチャレンジ
- 夏から本格的に塾・通信教材・過去問演習スタート
● 生活
- 学習時間を増やす工夫(朝学習/スキマ学習/復習ノート)
- 志望校見学・個別相談会への参加で「目標のリアリティ」を強化
● メンタル
- 中だるみに注意。やる気の波を親子で共有し支える
- モチベーションの維持には「なぜその高校に行きたいか」を明確にする
中学3年:入試に向けた「仕上げ期」
● 勉強
- 志望校の入試問題を分析し、出題傾向に沿った対策
- 志望校別の模試に参加し、自分の位置を客観視
- 私立の併願校・推薦枠などの確認と対策
● 生活
- 夜更かし・不規則な生活を避け、集中できるリズム維持
- 家族で「入試カレンダー」を共有し、出願ミスなどを防止
● メンタル
- 不安が強くなる時期。親子で対話の時間を意識的に確保
- 「受験はゴールではなくスタート」と伝え続ける
ポイント:中長期プランの進め方
時期 | やるべきこと | チェックポイント |
---|---|---|
小5~6 | 学習習慣/基礎づくり | 毎日30分でも机に向かえるか |
中1 | 内申・目標意識 | 定期テストの平均点は? |
中2 | 志望校選定と強化学習 | 志望校のレベルと現状のギャップ |
中3 | 入試本番に向けて | 模試偏差値と合格可能性 |
中学受験をやめてよかった?後悔した?体験談から学ぶ
中学受験を途中でやめることは、親にとっても子どもにとっても大きな決断です。その後、「やめてよかった」と前向きに感じる家庭もあれば、「やっぱり続ければよかった」と後悔する家庭もあります。
ここでは、実際の体験談をもとに、両方のケースから学べることを整理します。
※個人を特定できないように、志望校や地域をあいまいにしています。
やめてよかったと感じたケース
中学受験をやめたことで子どもの心と体の負担が減り、笑顔が戻ったという家庭は少なくありません。
主な理由:
- 子どもが毎日イライラ・不安で疲弊していたが、やめてから穏やかになった
- 自分のペースで学べるようになり、勉強に前向きになれた
- 習い事や友達との時間が増えて、自己肯定感が回復した
- 「今しかできないこと」を大切にできた(旅行、趣味、自由な読書など)
実例:
「受験塾の宿題に追われて親子で毎日ピリピリしていました。やめたことで家庭の空気がガラッと変わり、子どもも『勉強が楽しくなった』と言ってくれました」
後悔したと感じたケース
反対に、「もう少しがんばれば合格できたかもしれない」「やめたことで目的がなくなってしまった」と後悔する人もいます。
主な理由:
- やめたあとに燃え尽きてしまい、勉強のやる気が消えた
- 「本当は受けたかった」という本人の気持ちを聞ききれなかった
- 周囲の子が合格したのを見て、劣等感を感じた
- その後の目標や方針があいまいになって迷走した
実例:
「親の判断で『やめよう』と決めましたが、子どもが後から『受けたかった』と言い出して…あのとき、もっとちゃんと話を聞いてあげればよかったと思いました」
共通して言えること:「親の対応次第でその後が変わる」
やめたこと自体が“よかった”か“後悔”かを分ける最大のポイントは、親の対応やその後のサポートの仕方です。
ポイントは次の3つ:
- 子どもの気持ちを十分に聞き、否定しないこと
→「がんばったね」とまず受け入れる姿勢が大切。 - やめた後に「新たな目標」を一緒に見つけること
→例:学校の成績向上、習い事への挑戦、将来の夢への準備など。 - 家庭内の空気を前向きに保つこと
→「やめたこと=失敗」と捉えず、「これからどうするか」に目を向ける。
まとめ:中学受験をやめても、未来はつくれる
中学受験をやめるという選択は、決して「失敗」や「脱落」ではありません。そこからどう行動するかによって、その後の未来は大きく変わります。
一度立ち止まることは「負け」ではない
現代は「一度決めたら最後まで貫くこと」が美徳とされがちですが、子どもにとって「立ち止まる」「方向転換する」ことも大切な成長の一部です。
中学受験をやめることの意義:
- 子どもの心身の健康を最優先にできる
- 無理な道を無理に進ませずに済む
- 自分で「次の道」を考える力を育める
遠回りに見えても、本人が納得した道の方が、その先に広がる世界は豊かです。
親子で一緒に、新しい道を歩むために
受験をやめたことで空白になった時間を、「親子の対話」や「将来の準備」に変えていきましょう。子どもが「次の一歩」を踏み出せるように寄り添い、支えていくことが親の役目です。
おすすめのステップ:
- 親子で今後の目標について話し合う
- 短期的な成功体験(テストや賞など)を積み上げる
- 習い事・読書・体験学習などで視野を広げる
- 必要に応じて、学校や塾の先生とも情報共有する
中学受験をやめたことは「終わり」ではなく、新しいスタートです。お子さんの個性や興味に合った道を、親子でゆっくり探していきましょう。
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