※この記事はPRを含みます。
大学入試では小論文の問題がよく出ます。小論文はタイプによって解答のポイントが異なっています。
なかでも、テーマ型小論文は難易度が高く、学部の知識が必要とされています。
そこで、高校生向けに大学入試小論文のなかでテーマ型小論文の書き方を例文付きで解説します。
※関連記事:課題文型小論文の答案の書き方やコツの説明
質の高い添削を求める人にはZ会の小論文講座がおすすめです。以下のリンク先で資料請求ができます。
Z会 小論文対策講座の案内テーマ型小論文とは
小論文には以下の4つのタイプがあります。
このうち、テーマ型小論文について解説します。
問題文が短い小論文
テーマ型小論文は「問題文が短い小論文」です。
テーマが与えられ、そのテーマに沿って受験生自身の意見を書きます。
課題文型小論文では1000-2000字の長文を読みますが、テーマ型小論文は問題文が2行程度しかありません。
問題のタイプは3種類
問題のタイプは大きく以下の3つに分かれます。
それぞれ説明します。
賛成・反対の二者択一
これは、あるテーマに対して「賛成・反対」の立場を明確にし、賛成/反対の理由を説明する問題です。
例えば「学校教育で投資の仕方を教えるべき」という意見に対して賛成/反対の立場で意見を書く問題などです。
問題の解決策の提示
つづいては、特定の課題をどのように解決するか、受験生自身の意見を書く問題です。
例えば、「伝統産業を海外に向けて発信するにはどうすれば良いか」などを論述する問題が出ています。
キーワードの説明
3つ目のタイプは、与えられたキーワードの意味を説明し、そのキーワードについて自身の意見を論述する問題です。
例えば「裁判員制度」についての説明を求められ、さらに裁判員制度の課題とその対策を論述する問題などがあります。
先ほど紹介した「問題の解決策の提示」と組み合わせて出題されることが多いです。
専攻学部の知識量が重要
テーマ型小論文では専攻学部の知識が一定以上必要です。
課題文型小論文なら長文を読み、その長文にヒントがたくさん書かれています。ですが、テーマ型は問題文が2-3行程度と短いため、ヒントがほとんどありません。
その分、日ごろから学部・学科で学ぶ内容について興味を持って調べているかどうかが問われます。
難易度が高い
ヒントが少ないため、テーマ型小論文はほかのタイプの小論文にくらべて難易度が高いです。
専門分野の知識を仕入れつつ、たくさん演習して「何を聞かれても書ける」ようにしておく必要があります。
テーマ型小論文の書き方
では、テーマ型小論文はどのように書けば良いのかを説明します。
3部構成で書く
まず、小論文は構成に沿って書くことが重要です。
大抵、序論→本論→結論の3部構成です。
ただし、テーマ型小論文では字数が少なく設定されているケースもあり、400字までなら序論・本論だけでも大丈夫です。600字以上なら序論・本論・結論の3部構成で、本論に根拠を2つ書きましょう。
※関連記事:小論文の書き出し方
序論・本論・結論の割合
一般的に、序論・本論・結論は以下のような割合で書くとちょうど良い構成になります。
例えば600字以内で書く小論文なら、以下のような文字数です。
3部構成の例文
「裁判員制度の課題とその対策を論じなさい」という問題に対しては、下記のような構成で答案を書きます。
【序論】裁判員制度には裁判員の負担の大きさが課題となる。心理的負担の観点から論じる。
【本論】裁判員には、事件の内容や証拠の詳細などを直接聞くことが求められるため、その心理的負担が大きい場合がある。また、裁判員の判断が事件の結果に直接影響を与えることから、ストレスや心理的影響を受けることもある。この問題を解消するため、心理的支援やカウンセリングサービスを実施する必要がある。
【結論】以上より、裁判員制度には裁判員の心理的負担解消の課題があり、カウンセリングの実施が必要と考える。
テーマに関する問題点を書き出す
与えられたテーマについて、問題点を洗い出しましょう。
テーマ型小論文では自由に論述させる問題であっても、そのテーマやキーワードに何か問題点があります。その問題点をあぶりだして対応方法を論じるのが解答のポイントです。
問題点の原因を分析する
問題点を洗い出すためには、以下のような手順がおすすめです。
問題点を見つけ出す
テーマ型小論文の問題文は短いですが、そのなかに問題点を示唆する内容が含まれています。
例えば、「観光客の誘致と環境美化のバランスについてあなたはどう考えるか」という問題文には「観光客を誘致すると環境が悪化する」という問題が示唆されています。
問題の原因を深掘りする
問題点が分かれば、その問題の原因を深堀りします。
深掘りするというのは、「原因を考えて、さらにその原因を考えること」です。
「なぜだろう?」→「~だからかな」→「なぜ~なのだろう?」→「…だからだ」
と、最初の問いを含め2回以上「なぜ?」を繰り返します。
問題点の影響を考える
問題点が分かれば、その問題が「誰に」「どう」影響するかを考えてみます。
影響への対策を考える
影響が分かれば、それへの対策を考えます。
まとめると、「原因」への「回答」を考え、その「回答」の「原因」をさらに考えます。すると、「影響」が見えてくるので、その「影響」への「対策」を考えます。
原因分析の例
では、原因分析の例を紹介します。
「観光客の誘致と環境美化のバランスについてあなたはどう考えるか」という問題について考えてみます。
これはよく出てくるテーマで、「地元の経済発展のためには大勢の観光客を呼びよせるほうが良いが、人が大勢来るとゴミが増え自然が破壊されるなどの問題も生じる」という内容です。
「原因⇒影響⇒対策」の順に考えると論述の答案をつくりやすくなります。
下記のような流れです。
原因①:なぜ人がたくさん来ると環境が悪化するのか?
回答①:ゴミが増えるから
↓
原因②:人が増えるとなぜゴミが増えるのか?
回答②:ゴミが自然のなかや道端に捨てられるから
↓
影響:環境が悪化すると誰にどのような影響が発生するか?
回答:観光資源である自然環境や町の美観が失われ、観光客が減少する
↓
対策:ゴミの廃棄など観光客の行動にガイドラインを設ける
結論が設問に合うか確認する
答案内容を考えたら、結論を問題点と対策方法を考えたら、その内容が設問に合致するか確認しましょう。
例えば「病院での診断におけるAI活用のメリットとデメリットについて論じなさい」と問われているのに、「AIを活用することは重要だ」という結論になっていることがあります。
メリットとデメリットを論じるように指示されているので、「重要だ」という結論だと問いに合いません。大きな減点対象になります。
答案のメモが作成できたら、設問で問われている内容との整合性を確認しましょう。
序論で自分の立場を明確にする
序論では、自分の立場を明確にしておきましょう。
賛成・反対の立場とその理由を問う二者択一問題はもちろん、問題解決策を自由に論述する問題でも、「どの観点で書くのか」をはっきりさせておきます。
経済的観点で論じるのか、セキュリティ重視の観点なのか、持続可能性の観点なのかなど。
序論で立場を明確に書いておくことで、本論の方針が分かりやすくなり説得力が増します。
本論で根拠を2つ書く
序論で示した自分の立場について、本論でその根拠を説明します。
400字以内の小論文なら根拠は1つ、それ以上の字数なら根拠を2つ書きましょう。
結論で主張をまとめる
結論では自身の主張をまとめます。
「以上より」「よって」などから書き出し、序論で述べた「自分の立場」を再度主張します。
※関連記事:小論文の結論の書き方
テーマ型小論文に必要な材料集めの方法
テーマ型小論文では材料集め(ネタ集め)が重要です。
その方法を3つお伝えします。
※関連記事:教育学部の小論文過去問一覧
※関連記事:医療系学部の小論文過去問一覧
新聞を読む
まず、新聞を毎日読みましょう。
テーマ型小論文では専攻分野における最近の話題がよく聞かれます。こうした話題の情報収集には新聞が便利です。
理由は3つあります。
日本の新聞社は紙媒体を中心としています。ネット新聞もありますが、多くの大手新聞社は紙媒体に力を入れる方針をとっています。
このため、紙の新聞には質の高い記事が掲載されます。
また、紙の新聞はネットと異なり、個人の検索履歴や嗜好性によって紙面が変わりません。必要なニュースが届かないということがありません。
材料集めにはまず新聞を活用しましょう。
書籍を読む
つづいては、書籍での材料集めです。
新聞は情報が幅広いというメリットがありますが、その半面、専門分野の内容がどうしても薄くなります。
医療系のネタ、教育系のネタ、経済のネタなど、必要な専門知識の網羅性は書籍のほうが圧倒的に高いです。
ネットで検索する
最後はやはりネット検索です。
新聞や書籍では情報の獲得に時間と労力が必要です。それらから得られる質の高い情報は小論文入試の材料として有益ですが、ネットなら気になるキーワードや最新の状況をもっと深掘りしていけます。
ネット検索で専門分野での新たなキーワードに出合うこともあります。
いずれかひとつではなく、3つの方法を組み合わせて材料集めをしましょう。
小論文の練習問題
テーマ型小論文の書き方が分かったところで、簡易的な問題を使って練習してみましょう。
回答例を載せていますが、あくまで参考程度です。自身の回答と異なっていても大丈夫です。
練習問題①:賛成・反対の二者択一
「投資の仕方を学校教育で扱うべきという筆者の主張に対して、賛成、反対の立場を明確にしつつ、その理由を述べなさい。」
解答例
【賛成の解答例】
投資の仕方を学校教育で扱うべきという意見に賛成である。その理由を経済的観点から説明する。
現代社会では、個人や家族の経済的な安定や将来の生活において、適切な投資の知識とスキルが非常に重要だ。高度経済成長期のような高い金利が望めない以上、投資によって人生に必要な資金を得る必要がある。投資は長期間つづけるほうがリスクを減らし、リターンを大きくできる。それゆえ、学校教育に投資の基礎的な知識やリスク管理、資産の運用方法などを取り入れれば、若者が将来の人生設計をしやすくなる。
以上のように、投資は人生設計上の経済的手段として重要であるため、投資の仕方を学校教育で教えるべきと考える。
【反対の解答例】
投資の仕方を学校教育で扱うべきという意見に反対である。その理由を、学校教育の目的から説明する。
学校教育の目的は、基本的な学問知識や社会的なスキルを身につけさせることである。学校を卒業後の人生を豊かにするために投資の仕方を教えるべきという意見もあるが、学校は個人の金融的な選択に関する指導やアドバイスを提供する場ではない。また、投資に関する知識やスキルは個々の状況や経験に応じて異なるため、一般的な教育プログラムで十分に網羅することが難しいと考えられる。個人が投資に関心を持つ場合は、専門家の助言を受けたり、自己学習を行ったりすることが適切だ。
以上より、投資の教育は学校教育の目的にふさわしくないため、投資の仕方を学校教育で扱うべきではない。
練習問題②:自由記述
「「くじ引き」方式は民主主義社会の意思決定方式としてどのような意味があるか、あなたの考えを書きなさい。」
解答例
くじびき方式は民主主義社会の意思決定方式として公平であると考える。その理由を意思決定における機会の平等性の観点から説明する。
通常、民主主義では多数決や代表制などの方法が用いられるが、これらの方法には少数派の意見や権利が十分に考慮されないという批判もある。一方、くじ引き方式では賛成・反対の多寡によらずに意思決定が行われる。決定に至る手順は完全に公平であり、意思決定の機会は平等である。ただし、重要な問題や政策をランダムな結果に委ねることは、意思決定の質を低下させる可能性がある。この点についてはくじびきを行うまでの話し合いの機会の設け方や、くじびきにかける選択肢の選定方法の質を高めることで解消できる。
以上の理由により、くじびき方式は民主主義社会における意思決定方式として公平であると考える。
練習問題③:自由記述
「遠隔医療の新たな価値について、あなたの考えを書きなさい。」
解答例
遠隔医療は医療の効率化につながると考える。その理由を病院運営の効率化の観点から説明する。
現在では、患者は体調が悪いときに病院に出向いて診療を受けてから投薬治療などを受けている。不必要な入院や診察の増加につながるという指摘がされている。遠隔医療ならこの問題を軽減することが可能だ。テレヘルスや遠隔モニタリングを通じて、自宅にいる患者の健康状態を早期に問題を検知できる。健康問題が発生すればただちに必要な薬を患者の自宅に送るなどの治療を開始できる。これにより、患者が病院に行って受付をする手間、診察室に患者を呼ぶ手間、カルテを回す手間、医療費の支払いをする手間を減らすことにつながる。病院における事務作業を減らすことで、病院のスタッフの仕事を医療の質の向上に回すことができる。
以上の理由により、遠隔医療は医療の効率化につながると考える。
小論文の参考書
最後に、小論文のおすすめ参考書を紹介します。
書き方の基本を解説してくれるものから、実践演習中心のものまでリストアップしています。
いずれもAmazonのリンクをつけているので、リンク先でお得に購入いただけます。
『全試験対応! 直前でも一発合格! 落とされない小論文』
小論文で減点対象になるミスを12個リストアップしている参考書です。
なぜそれがダメなのか、どう書けば良いのかを解説してくれています。
内容は基本的なものが多く、小論文をはじめて書く人向けです。
全試験対応! 直前でも一発合格! 落とされない小論文
出版社:ダイヤモンド社
『改訂版 何を書けばいいかわからない人のための 小論文のオキテ55』
こちらは小論文の書き方をイチから解説してくれている参考書です。
小論文と作文の違いなど、小論文を書くにあたって知っておくべき内容にはじまり、「資料型小論文」では資料のどこを見れば小論文を書けるかといった「入試で役立つコツ」をたくさん紹介しています。
練習問題は少ないので、最初に読んだら別問題集で練習をし、ときどき「これってどうだったかな?」と気になったときに戻るようにしましょう。
改訂版 何を書けばいいかわからない人のための 小論文のオキテ55
出版社:KADOKAWA
『樋口裕一の小論文トレーニング 新装版』
つづいては、小論文問題集の定番です。小論文の書き方のイロハを学べます。
「小論文の種類ごと」に書き方を説明してくれています。
小論文の種類は、「課題文型」「テーマ型」「資料型」「教科型」といくつか分かれています。受験する大学によって異なるため、複数の大学を受験する場合、何パターンかの小論文を書きなれておく必要があります。
この問題集で早めにタイプ別の書き方を知っておけば対策がしやすくなります。
ただし、演習はあまりないので次に紹介する問題集を使って練習を重ねると良いです。
樋口裕一の小論文トレーニング
出版社:ブックマン社
『2024年受験対策 全国大学小論文入試 出題内容5か年ダイジェスト』
こちらの問題集は全国の小論文過去問を集めており、「大量に」小論文の練習ができます。全国の一般入試小論文を中心に5年分掲載されています。
10回~15回ほど書けばかなり慣れてきてコツがつかめてきます。
2024年受験対策全国大学小論文入試出題内容5ヵ年ダイジェスト
出版社:旺文社
まとめ
いかがでしょうか。
高校生向けに、テーマ型小論文の書き方を解説しました。大学の推薦入試でよく出されるタイプの小論文で、短い問題文でテーマが提示され、自身の意見を論述します。
学部の情報収集が不可欠で、小論文の構成に沿って書く練習を繰り返しましょう。
材料集めの方法やおすすめの参考書も紹介しています。
質の高い添削を求める人にはZ会の小論文講座がおすすめです。以下のリンク先で資料請求ができます。
Z会 小論文対策講座の案内
コメント