高校生向けに日本史の一問一答問題と解説を用意しました。今回は鎌倉幕府の仕組みをまとめています。鎌倉幕府の成立過程、侍所・政所・問注所などの役割と別当、御恩と奉公の内容などです。
歴史総合や日本史探求の定期テスト対策、大学入試対策などにご活用ください!
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鎌倉幕府の政治体制
鎌倉幕府の仕組みを解説します。
武家政権とは?朝廷と幕府の二重支配
鎌倉幕府は、武士が中心となって運営した初めての政権です。それ以前は、天皇や公家が京都で政治を行う朝廷が日本を統治していましたが、鎌倉幕府の成立により、朝廷と幕府の二重支配が生まれました。
- 朝廷(京都)は、形式上の全国統治者としての役割を持ち続けましたが、実際の支配力は徐々に低下しました。
- 幕府(鎌倉)は、武士の力を背景に、現実的な政治や軍事を担当しました。
鎌倉幕府が支配を維持した方法
- 御家人(ごけにん)制度
幕府は、全国の武士である御家人を支配下に置き、彼らを軍事的・経済的な基盤としました。- 幕府は御家人に対して「御恩(領地の保障)」を与え、代わりに「奉公(軍事奉仕)」を求めました。
- 守護・地頭の設置
幕府は全国に守護や地頭を派遣し、地方の支配を確立しました。これにより、幕府は遠く離れた地域にも影響力を持つことができました。
幕府の三つの要職とその役割
鎌倉幕府の政治体制は、将軍・執権・連署の三つの重要な役職によって支えられていました。
将軍(しょうぐん)
- 幕府の最高権力者であり、名目上のリーダーです。
- 初代将軍である源頼朝は、御家人を統率し、幕府の基盤を築きました。
- しかし、2代目頼家以降、将軍は次第に実権を失い、形式的な存在になりました。
なお、鎌倉幕府の将軍については以下の記事でくわしく解説しています。
鎌倉幕府の将軍一覧:鎌倉幕府を開いた将軍から摂家将軍、皇族将軍まで9名の事績の紹介
執権(しっけん)
- 幕府の実質的な最高権力者で、政治の運営を担いました。
- 初代執権は北条時政で、執権の地位は代々北条氏が独占しました。
- 執権は将軍を補佐する役割を持ちつつも、実際には幕府の実権を握りました。
なお、鎌倉幕府の執権については以下の記事でくわしく解説しています。
鎌倉幕府の執権とは?歴代執権一覧と役割、北条氏の権力をわかりやすく解説【高校生テスト対策】
3. 連署(れんしょ)
- 執権を補佐し、政治の合議制を支える役職です。
- 執権一人で決定するのではなく、連署とともに重要な政策を決定しました。
幕府を支える三つの重要機関
鎌倉幕府には、政治を円滑に運営するための三つの重要な機関が存在しました。
政所(まんどころ)|行政を担当する機関
- 幕府の財政管理や土地の管理を行いました。
- 領地や年貢の収入を把握し、幕府の経済を支える重要な役割を担いました。
- 最初は大江広元が政所別当(長官)を務めました。
問注所(もんちゅうじょ)|裁判を担当する機関
- 訴訟や裁判を専門に担当し、武士社会の秩序を守りました。
- 御家人間の土地争いやトラブルを裁定し、公平な裁判を行うことで、幕府への信頼を築きました。
侍所(さむらいどころ)|武士を統率する機関
- 御家人の統率や軍事・治安維持を担当しました。
- 鎌倉幕府の軍事力の中核を成し、内乱や外敵に備えました。
- 初代侍所別当は和田義盛が務めました。
鎌倉幕府の役職のまとめ
鎌倉幕府の役職名とその役割、また初代長官を以下の表にまとめています。
役職(機関) | 役割 | 初代長官 |
執権 | 将軍を補佐して政務を統括する | 北条時政 |
連署 | 執権を補佐して政務を統括する | 北条時房 |
侍所 | 御家人を統率する | 初代別当:和田義盛 |
政所(公文所) | 公文書を管理する | 初代別当:大江広元 |
問注所 | 御家人どうしの争いごとの裁判をする | 初代執事:三善康信 |
評定衆 | 幕府の最高決定機関 | – |
引付衆 | 御家人の土地問題の裁判をする | – |
六波羅探題 | 朝廷の監視 | – |
鎮西奉行 | 九州の統轄 | 天野遠景 |
守護 | 軍事・警察 | – |
地頭 | 荘園からの税の徴収 | – |
鎌倉幕府の支配体制|御家人と守護・地頭
鎌倉幕府は御家人と呼ばれる武士が支えていました。幕府のある鎌倉だけでなく、御家人は守護に任命され、地頭とともに地方土地を支配することでも鎌倉幕府を支えていました。
御家人制度|主従関係の確立
鎌倉幕府は、御家人と呼ばれる武士との主従関係によって支配を維持しました。
この関係は、「御恩と奉公」と呼ばれる封建制度に基づいています。
- 御恩(ごおん):
将軍が御家人に対して与える恩恵。
具体的には、領地の支配権を保障したり、新たな領地を与えたりしました。 - 奉公(ほうこう):
御家人が将軍に対して行う義務。
主に戦時に軍事力を提供することが求められました。
この制度により、幕府は全国の武士を組織的に統制し、強力な軍事力を保持しました。
守護と地頭の役割と違い
鎌倉幕府は、地方の支配を強化するために守護と地頭という役職を設置しました。
守護(しゅご)
- 各国(現在の都道府県に相当)の治安維持や軍事管理を担当しました。
- 反乱や戦争が起こった際には、守護が兵を動員して対応しました。
- 主な役割は「大犯三カ条(だいぼんさんかじょう)」と呼ばれる以下の3つの任務でした:
- 謀反人(むほんにん)の逮捕
- 殺害人(あだうち)の逮捕
- 山賊・海賊の取り締まり
地頭(じとう)
- 各荘園や公領に派遣され、年貢の徴収や土地の管理を行いました。
- 荘園領主からも幕府からも認められた存在で、現地の経済を支える役割を担いました。
- 地頭の不正や横暴が問題になることもありましたが、幕府は彼らを支配することで地方統治を行いました。
まとめ
鎌倉幕府は、武士による初の政権であり、御家人制度や守護・地頭の設置を通じて全国を支配しました。将軍・執権・連署の三つの要職がそれぞれ役割を担い、政所・問注所・侍所の三つの機関が行政・司法・軍事を支えました。
このような政治体制の仕組みを理解することは、日本史のテストでも重要なポイントです。
鎌倉幕府の仕組みに関するテストでよく出る一問一答問題
(1)1180年、源頼朝と平氏の軍勢が川をはさんで対峙しますが、水鳥の羽音を敵襲と間違えて平家軍が逃げ散りました。この戦いを何といいますか。
(2)富士川の戦いで勝利した源頼朝は、御家人の統率のために役所を設けました。何という役所ですか。
(3)侍所の初代別当(長官)に任命されたのは誰ですか。
(4)1183年、源頼朝は東国の荘園・公領からの年貢納入の保証を朝廷から命じられ、東国の実質的な支配権を獲得しました。この朝廷からの命令を何といいますか。
(5)1184年、源頼朝は公文書の管理を行う役所を設置しました。この役所を何といいますか。
(6)公文所の初代別当(長官)に任命された御家人は誰ですか。
(7)公文所はのちに何という名称に変更されましたか。
(8)1184年、源頼朝は御家人どうしの争いごとに関わる裁判を行う役所を設置しました。この役所を何といいますか。
(9)問注所の初代執事(長官)に任命された御家人は誰ですか。
(10)1185年、大江広元の建議により源頼朝は全国に官僚を派遣して土地の管理をさせることにしました。そのうち、荘園からの税の取り立てをする役職を何といいますか。
(11)国ごとの軍事や警察を担当した職を何といいますか。
(12)1189年、源頼朝は奥州藤原氏をほろぼしました。このときの藤原氏の当主は誰ですか。また奥州藤原氏の本拠地はどこですか。
(13)源頼朝は征夷大将軍に任命されるよう朝廷に働きかけた結果、1190年に常置の武官として最高位に任命されました。この役職を何といいますか。
(14)1203年、将軍を補佐して政務を統轄する役職が設置されました。この役職を何といいますか。
(15)初代の執権に任命された御家人は誰ですか。
(16)1225年、執権を補佐して政務にあたる役職が設置されました。この役職を何といいますか。
(17)初代連署に任命された御家人は誰ですか。
(18)1225年に設置され、執権や連署に次ぐ決定権を持つ、幕府内での最高決定機関は何ですか。
(19)1249年、主に御家人の土地問題の裁判を担当するための機関が設置されました。この機関を何といいますか。
(20)1221年の承久の乱後に朝廷を監視するために設置された機関は何ですか。
(21)1885年に設置された、九州を統轄するための機関は何ですか。
(22)鎮西奉行は元寇後に権限を強めた機関へとグレードアップしました。何という機関ですか。
(23)守護の職務について、京都大番役を督促・監視する役割を何といいますか。
(24)守護の職務について、戦乱に備えて地頭は兵糧米を徴収する権利を得ていました。徴収できる兵糧米は1段あたり何升でしたか。
(25)御恩と奉公について、御恩のなかで御家人の先祖伝来の土地所有権を幕府が認めることを何といいますか。
(26)御恩と奉公について、御恩のなかで御家人が活躍したら新たな領地や役職を幕府が与えることを何といいますか。
(27)御恩と奉公のように土地の給与をつうじて主人と従者が関係性を持つ制度を何といいますか。
(28)鎌倉幕府の将軍家が所有する荘園(税を朝廷に納めなくていい)を何といいますか。
(29)鎌倉幕府の将軍家の知行国(税を朝廷に納めないといけない)を何といいますか。
解答
(1)富士川の戦い
(2)侍所
(3)和田義盛
(4)寿永二年十月宣旨
(5)公文所
(6)大江広元
(7)政所
(8)問注所
(9)三善康信
(10)守護
(11)地頭
(12)藤原泰衡・平泉
(13)右近衛大将
(14)執権
(15)北条時政
(16)連署
(17)北条時房
(18)評定衆
(19)引付衆
(20)六波羅探題
(21)鎮西奉行
(22)鎮西探題
(23)大番催促
(24)5升(段別5升)
(25)本領安堵
(26)新恩給与
(27)封建制度
(28)関東御領
(29)関東御分国
日本史の問題集
最後に日本史のおすすめ問題集を紹介します。
※関連記事:日本史文化史の参考書と覚え方
『金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本 改訂版』
1冊目は日本史参考書の定番、「金谷の日本史」です。古代~近現代まで3冊と文化史1冊の合計4冊に分けて解説してくれています。
内容はオーソドックスで、教科書をさらにくわしく解説してくれています。
すべてじっくり読むというより、問題集で問題を解きつつ因果関係が分かりにくいときに参考書として使う人も多いです。
特に、共通テストを受ける人は『文化史』だけでも読んでおくと役立ちます。
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】 原始・古代史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業)
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】 中世・近世史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業)
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】 近現代史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業)
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】文化史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業シリーズ)
出版社:ナガセ
『日本史B一問一答【必修版】【完全版】』
流れを理解できるようになったら、問題演習をして記憶に定着させる必要があります。
この問題集はそんなときに便利です。
「必修版」と「完全版」に分かれており、現在の学力や志望校のレベルに合わせて選べます。
日本史B一問一答【必修版】 (東進ブックス 大学受験 一問一答シリーズ)
日本史一問一答【完全版】2nd edition (東進ブックス 大学受験 一問一答シリーズ)
出版社:ナガセ
『よくわかる高校日本史探究』
学研が出版している「標準レベルまで」の参考書です。教科書よりも解説がくわしく、日本史探求に苦手意識を持っている人も理解しやすいです。
定期テスト対策用の問題ページもあり、定期テスト対策、中堅レベルまでに大学入試対策に便利です。
よくわかる高校日本史探究 (MY BEST)
出版社:Gakken
まとめ
いかがでしょうか。
高校生の日本史の勉強用に、鎌倉時代の仕組みを一問一答にまとめました。
鎌倉幕府成立までの流れ、役職や機関名とその初代長官、御恩と奉公の内容(新恩給与と本領安堵)、守護と地頭の違いなどです。
定期テストや大学入試に出やすいポイントをしっかり覚えておきましょう!
なお、以下の記事では鎌倉時代の主要な出来事を年表とともに解説しています。
※関連記事:鎌倉時代の年表:鎌倉時代の戦いなどの出来事を順番にわかりやすく解説します
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