毎年中学生に課される人権作文。何を書けば良いか分からず、なかなか進まないですよね。
そこで、中学生向けに、人権作文の書き方や構成の取り方を分かりやすく解説します。
800字の例文(作文)もつけているので、ぜひ参考にしてみてください。
※関連記事:税の作文の書き方
【参考】
文部科学省・人権教育
国際連合人権高等弁務官事務所・人権
中学生が人権作文を書く際に押さえるべきテーマと事例
中学生向けに、人権作文を書く際の具体的なテーマを紹介します。
「平等と差別の問題」
差別の問題について、身近な事例を挙げて考えましょう。
例えば、学校でのいじめや社会での人種差別など、実際に起きている問題を取り上げ、それに対する自分の意見を述べます。差別をなくすために、どのような行動をすべきかを考えると作文を書きやすくなります。
「自由と責任」
自由と責任についても人権作文では大きなテーマです。「自由の重要性」と「自由の使い方」を考えましょう。
例えば、SNSでの発言や行動の自由について、その自由が他人を傷つけないようにする責任が伴うことを説明できます。自由には限界があることを理解し、責任を持つことの大切さを訴えると人権作文として説得力が増します。
「障がい者差別」
障がい者差別も根強く残っています。バリアフリー、ユニバーサルデザインといった概念を社会に取り入れる動きもありますが、時間がかかっています。
障がい者差別がなくならない理由として、特に以下の4つの障壁があると言われています。
障がい者を取り巻く四つの障壁
このように、人権作文に書ける内容は多々あります。これらのなかから「自分が書きやすいと感じるテーマ・体験」を探しましょう。
具体的な人権侵害の例
ほかにも、身近に人権侵害の例はたくさんあります。法務省のHPに載っている例を参考に、分かりやすく解説します。
「これなら書けそう!」と思える例をぜひ探してみましょう。
いじめ
いじめは学校や職場で他の人を意図的に傷つけることです。例えば、名前を呼ばれてバカにされたり、物を隠されたりすることが含まれます。いじめは精神的に大きなダメージを与え、最悪の場合、被害者は心の病気になったり、自分を傷つけることがあります。
インターネットやSNSでの誹謗中傷
インターネット上でのいじめや誹謗中傷も人権侵害の一つです。例えば、SNSで他人を悪く言ったり、プライバシーを侵害する情報を流すことが挙げられます。
最近では芸能人やスポーツ選手もこうした誹謗中傷に困っている、心が傷ついていると発信しています。
こうした行為は、インターネットの匿名性を悪用した人権侵害です。
親から子への虐待やヤンケアラー
親が子どもに過剰に干渉したり、暴力を振るったりする虐待も人権侵害です。
例えば、親が子供の意見を無視したり、強制的に夢を押し付けることが、子供の成長を妨げ、精神的な問題を引き起こすことがあります。
最近では、ヤングケアラーも大きな問題になっています。子どもが家族の介護やお世話で毎日何時間も時間を取られている状態を指します。
女性差別
女性が仕事や家庭内で不当な扱いを受けることも人権侵害です。
例えば、男性と同じ仕事をしても賃金が少ない、セクシャルハラスメントを受けるといったことがあります。こうした差別は女性の自由と尊厳を侵害します。
障害のある人への差別
障害のある人々が社会で差別を受けることも人権侵害です。
例えば、公共の場所にアクセスできない、就職の機会が制限されるといったことがあります。障害を持っていても、平等に扱われる権利があります。
外国人差別
外国から来た人々が、国籍や出身地を理由に差別されることです。例えば、外国人が仕事を探すときに差別的な扱いを受けたり、言葉や文化の違いを理由に排除されたりすることがあります。
高齢者差別
高齢者が年齢を理由に不当に扱われることです。例えば、就職や医療の場面で、年齢が高いことを理由に不利益を受けることがある。高齢者も若い人と同じように尊重されるべきです。
HIV感染者、ハンセン病患者などの感染症のある人への差別
HIVやハンセン病の患者に対する偏見や差別です。例えば、HIV感染者が学校や職場で嫌われたり、ハンセン病患者が社会的に孤立させられることがあります。病気にかかったからといって人権が奪われるべきではありません。
犯罪被害者に対する人権侵害
犯罪の被害者が加害者と同じように扱われることがあります。例えば、犯罪被害者がメディアで名前を公開されたり、周囲から避けられたりすることです。被害者は支援を受ける権利があり、尊厳を守るべきです。
同様に、罪を犯した人の家族への誹謗中傷も社会問題化しています。
刑を終えて出所した人への差別
刑期を終えた人が社会に復帰する際に差別を受けることです。
例えば、就職活動で「犯罪歴があるから」と断られることがある。刑を終えた後も、再犯防止のために社会復帰ができる環境が整備される必要があります。
そうした活動に従事するNPOもあります。
性同一性障害、性的嗜好のある人への差別
性別や性的嗜好に基づく差別です。例えば、同性婚を認めない社会や、トランスジェンダーの人々がトイレを使う際に差別を受けることがあります。人それぞれの性に対する理解と尊重が求められます。
法律では同性婚は認められていませんが、東京都をはじめとして多くの自治体では、同性同士の結婚を認める「パートナーシップ制度」が普及してきています。
戦争における人権侵害
戦争では、多くの民間人が巻き込まれ、暴力や人権侵害を受けます。
例えば、戦争中に家族を失ったり、住む場所を奪われたりすることがあります。戦争が終わった後も、被害を受けた人々が支援を受けられるようにすることが重要です。
他人の作文を読む
人権作文のイメージが浮かびにくいときには他人の描いた作文を読んでみましょう。ほかの人はどのように書いているのか分かると、自分の作文も非常に書きやすくなります。
法務省「全国中学生人権作文コンテスト」では、入賞作品を閲覧できます。実際の作文を読んでみると、書き方をイメージしやすくなります。
使っている言葉や書き出し方、作文の構成は人によって多少異なります。いくつか読んでみて自分のなかで「これなら書けそう!」と、しっくりくるものを参考にしてみても良いです。
中学生向けの効果的な人権作文の書き方
人権作文の書くテーマがいくつか分かったところで、つづいて、「人権作文」を書く際に押さえるべき作文構成や書き方を説明します。
600字や800字で書く作文は字数も多く、やみくもに書こうとしてもなかなか書きづらいですよね。
構成をしっかりと理解し、各段階でのアドバイスや例文を参考にしながら進めると良いでしょう。
人権作文の構成:序論・本論・結論
まず、作文全体を序論・本論・結論の3部構成にしましょう。
- 序論:書き出し・テーマ
- 本論:体験談と自分の考え
- 結論:今後
以下に細かく説明します。
序論(導入部):何の人権について書くのか
序論は、作文のテーマや主題を簡潔に紹介し、読み手に関心を持たせる部分です。ここでは、テーマに関する背景や問題点を簡潔に述べ、何について書くのかを示しましょう。
ポイント
例文
「私たちは日常生活の中で、さまざまな人権について考える機会があります。例えば、学校や家庭での平等な扱い、そして自分の意見を自由に言えることは、誰もが持つべき権利です。しかし、全ての人々が平等に人権を享受しているわけではない現状があります。今回は、このような問題について考え、どのように改善していけるのかを考えてみたいと思います。」
本論(本題):人権侵害の具体的な例や経験談
本論では、テーマについて深く掘り下げて説明します。具体的な体験談やデータ、意見などを使いながら、人権問題に対する自分の考えを述べます。
いくつかの段落を使って論点を整理し、自身の主張に説得力を持たせます。
ポイント
例文
「まず、学校でのいじめ問題は、現在も多くの子どもたちが直面している人権侵害の一例です。いじめは、子どもたちの心を傷つけ、成長に悪影響を与える可能性があります。学校は、すべての生徒が平等に教育を受けられる場所であるべきです。しかし、実際には、いじめを受けている生徒がその被害を訴えにくい状況が続いています。この問題を解決するためには、学校全体での意識改革が必要です。」
結論(まとめ):最終的な自分の意見
結論では、これまで述べた内容を整理し、最終的な意見や提案を述べます。読み手に強く印象を与えるように、具体的な解決策を示しましょう。
ポイント
例文
「このように、いじめや差別などの人権問題は、今も私たちの身近に存在しています。私たちは、お互いの人権を尊重し、助け合いながら、より良い社会を作ることが大切です。学校や家庭でも、人権教育を進めることが求められます。未来に向けて、誰もが安心して暮らせる社会を作るために、一人一人が意識を持つことが必要だと思います。」
書き始める前にメモを作成する
前述の構成に合うように、作文内容の「メモ」を作成しましょう。
作文の途中で字数が大幅に足りなくなったり、書いているうちに内容がずれてきたりします。そうならないように、書きはじめる前にメモをつくっておき、そのメモを見ながら文章を書きます。
体験内容を箇条書きする
人権作文で重要なパートは「体験内容」の記述箇所です。このパートでは細かく丁寧に書くと読み手に状況が伝わりやすく、必要な字数も満たせます。
以下の項目を箇条書きします。
- 「いつ」…今年の大型連休(GW)
- 「何」…目の見えない人に出会った
- 「どこ」…駅のホーム
- 「なぜ」…出かける途中
- 「どうだった」…ホームは混雑していて、目の見えない人は歩きにくそうにしていた
「自分の考えが変わった瞬間」を入れる
人権作文では、人権についての自分の考えがどう変わったのかを書き入れましょう。
「人権について深く考えたことはなかった」
↓
「人権について深く考えるようになった」
上記のような「変化」を入れます。すると、作文全体が「テーマ感」のあるまとまった文章になります。何を書けば良いかも分かりやすくなり、結果的に書きやすくなります。
最後にタイトルを考える
「体験内容」や「考えの変わった瞬間」を決めたら、最後に作文のタイトルを考えます。
タイトルは10字前後以内で、体験内容を少し連想させるようなものがおすすめです。
中学生が作文の書き方をマスターするための練習方法
作文はを書けるようになるにはある程度の練習が必要です。自宅でできる作文の練習方法を解説します。
毎日少しずつ書く
作文の練習には、毎日少しずつ書くことが効果的です。例えば、日記をつけることで、自分の考えを言葉にする力が身につきます。毎日の練習を通じて、文章の組み立て方や表現の仕方を身につけることができます。
テーマを決めて書く
自分が興味のあるテーマを決め、そのテーマについて自由に書いてみましょう。例えば「学校生活」や「好きな本」など、身近な話題を選ぶことで、考えを深めやすくなります。
書いた後は、友達や先生に読んでもらい、フィードバックをもらうことが大切です。
例を交えて説明する
作文の中で自分の考えを伝えるためには、具体的な例を使うことが効果的です。例えば、「いじめをなくす方法」について書く場合、実際にどのような取り組みがあるのかを紹介することで、読み手にわかりやすく伝えることができます。
友達や家族に添削してもらう
作文を自分で書いたら、次は添削を受けることが大切です。先生や親、友だちに見てもらい、どの部分が良かったか、どこが改善できるかを教えてもらいましょう。自分一人では気づかない点を指摘してもらうことで、作文力が向上します。
中学生向けの人権作文の例
それでは、720字ほどで書いた人権作文を例として紹介します。オリジナルの作文で、内容は架空のものです。
私はこれまで、「目が不自由で困っている人がいたら声をかけましょう」と言われてきたが、自分から実際に声をかけたことはなかった。今年の大型連休の、友だちと電車に乗って出かけたときのことだ。駅はとても混んでいて、他の人と肩がぶつかるほどだった。そんな中、カツカツという、地面を何かがたたく音が聞こえてきた。その音のするほうを見ると、黒いサングラスをかけ、白いつえで地面を軽くたたきながら歩いている男性がいた。私はすぐに「目の見えない人だ」と思った。
その男性は、私たちと同じ電車から降りてきたようで、どこかに向かう途中のようだった。しかし駅の混雑は激しく、目の見える私でさえ歩きにくい状況だった。目の見えないその男性ならさらに歩きにくいに違いないと私は思い、その男性が転んだりせず進めるか気になった。しかし、知らない人に声をかけるのは少し勇気がいり、結局何も言えなかった。
するとそのとき、一人の女性がその男性に近づいて声をかけ、男性の腕を取って一緒に歩き出した。その様子を見て、私はホッとした。声をかけなかったことを後悔したが、それ以上に、その女性が声をかけてくれたことに安心した。きっと、その女性も私と同じように、男性が歩きにくそうだと感じて声をかけたのだと思う。
私たちはみな、同じ社会で生活していて、みんなが安全に過ごせるように助け合いたいという気持ちを持っているのだと感じた。「困っている人がいたら声をかけましょう」という言葉は、ただ単に声をかけることを言っているだけじゃなくて、お互いが安心して過ごせるように助け合おうという意味なのだと改めて思った。これからは、気になったときには、もっと勇気を出して積極的に声をかけようと気持ちを新たにした。
まとめ
いかがでしょうか。
中学生向けに人権作文の書き方やコツを紹介し、オリジナルの作文例を載せました。
「書き出し」「体験」「今後したいこと」の3部構成にし、「人権について考えが変わった瞬間」を入れると、人権作文を書きやすくなります。
人権の例も紹介しているので、書きやすそうなテーマを選んで実際に書いてみましょう!
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