日本の工業は、日本経済を支える重要な柱です。特に工業地帯と工業地域は、さまざまな産業が集中し、地域ごとに異なる特徴を持っています。
そのため、工業地域や工業地帯の場所・工業出荷額の内訳・工業出荷額の変化は「テスト頻出」です。
そこでこの記事では、工業地帯と工業地域の違い、それぞれの場所や出荷額の内訳、さらに1970年代と2010年代の工業出荷額の変化についても解説します。
これを読めば、日本の工業のしくみや変化をより深く理解し、テストでも高得点を狙えるでしょう!
【参考】
経済産業省:地域別統計表
計算産業省:地域の未来を描く産業立地政策とは?
まず、工業地帯の定義や特色を紹介します。
工業地帯の定義は明確にあるわけではありません。日本で広い範囲にさまざまな産業が密集した地域を総称して工業地帯と呼びます。
工業地帯では主に重工業、製造業が発展し、日本全体の経済を支えています。例えば、中京工業地帯や阪神工業地帯では、輸出用の自動車や機械製品が多く生産されています。
工業地帯は、地域の雇用を生み出し、経済を支える重要な役割を果たしています。工場や施設が集まることで、周辺の街やインフラが整備され、さらに新しい企業が進出しやすくなります。
例えば自動車をつくるにも、たくさんの部品が必要なので、1つの工場で完結するわけではありません。組み立て工場の周辺にも多くの部品工場が並びます。
さらに、その部品を運搬するための道路や港も整備されます。たくさんの人が働く場所なので食事をする場所も必要になります。
このように、工業地帯は単に工場が並んでいるわけではなく、周辺一帯の経済を支えてもいるのです。
日本には、関東、東海、近畿、北九州などの大規模な工業地帯があります。それぞれの工業地帯には異なる産業が発展しており、例えば近畿では機械産業、関東では自動車産業、また北九州では食品産業が盛んです。
日本の主要産業・工業の分布や特徴にかんするくわしい解説と練習問題を以下の記事で紹介しています。
【中学地理】日本の産業の特色:日本の農業・林業・漁業・工業の特色の解説と一問一答問題
つづいて、工業地域についてみていきましょう。
工業地域にも明確な定義はありません。工業地帯よりも最近になってから発展した地域一体を工業地域と呼びます。
工業地域は、特定の産業が集まった地域です。例えば、愛知県にある東海工業地域は自動車産業がメインで、瀬戸内工業地域は石油化学コンビナートがあるので石油化学工業が非常に盛んです。
工業地域は、その分野での専門性が高いのが特徴です。
工業地域は、地元の経済を支える大きな役割を持っています。特に特定の分野で生産が集まっていることで効率よく製品が作られ、地域の経済を活性化しています。
また、工業地域は工業地帯にくらべて比較的最近になって発展してきた地区です。日本の新たな産業を担うという役割も持っています。
日本には、瀬戸内海の瀬戸内工業地域や、関東地方北部になる北関東工業地域(関東内陸工業地域もは日本全体でも4-5番手の工業出荷額を誇ります。
石油化学工業や自動車産業など、地域の特性を生かした産業の集積が見られます。
ここまでお伝えした内容を踏まえて、工業地帯と工業地域の違いをまとめます。
工業地帯と工業地域には明確な定義がありません。工業地域が広域に分布する複数の工場からなる地域で、工業地帯が産業の集中した地域であるという程度の違いです。
戦前から高度経済成長期までに京浜工業地区・中京工業地区・阪神工業地区・北九州工業地区の工業出荷額が大きかったため、それぞれ「工業地帯」と呼び、4つあるので「四大工業地帯」と総称しました。
その名称が定着して以降に、時代の変化とともに瀬戸内工業地域など大きな工業地区が発展してきたので、それらを「〇〇工業地域」と名称を分けています。
ただし、工業地帯と工業地域は発展してきた時代が異なるため、その役割(工業出荷額の内訳など)も異なります。以下に、大まかな「工業地帯」と「工業地域」の違いを解説します。
工業地帯は広範囲で多様な産業が盛んですが、工業地域は特定の産業に集中しています。この違いにより、工業地帯では地域全体が工業活動の中心となり、工業地域はその産業に専門性が求められます。
工業地帯と工業地域は、地域の経済発展に大きな影響を与えます。例えば、工業地帯は地域全体の経済けん引する一方、工業地域は特定の分野での雇用や技術を育成します。
工業地帯では、排水や大気汚染などの管理が重要視され、工業地域では特定産業の対策が行われることが多いです。地域ごとに異なる環境対策が必要とされます。
以下では、日本の代表的な工業地帯および工業地域について、中学生向けに場所や主な産業、工業出荷額の内訳をわかりやすく解説します。
場所と特徴:東京都、神奈川県、千葉県を含む地域で、かつては日本最大の工業出荷額を誇っていました。東京湾沿岸に位置し、港湾施設や交通網が充実しています。
主な産業:日産自動車やオートバイの工場があるため、機械工業がメインです。ほかに化学工業や印刷・出版も多いのが特徴です。
工業出荷額の内訳:1位:機械工業、2位:化学工業、3位:金属業
京浜工業地帯を含む関東地方の地理について、中学校の社会のテストでよく出る問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】関東地方の一問一答問題と解説:ドーナツ化現象、高原野菜・抑制栽培などテストによくでる問題
場所と特徴:愛知県、岐阜県、三重県を中心とする地域で、名古屋市周辺に広がっています。自動車産業が非常に盛んで、日本有数の工業地帯です。
主な産業:トヨタがあるため、自動車関連産業が圧倒的で、車両やその部品の生産が多く行われています。また、機械工業や鉄鋼業も主要な産業です。
工業出荷額の内訳:1位:機械工業、2位:金属業、3位:化学工業
中京工業地帯を含む、中部地方・東海地方の地理の解説や練習問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】中部地方の一問一答問題:3つの気候区分、日本アルプス3つの覚え方、四大公害病など
場所と特徴:大阪府と兵庫県(特に神戸市)にまたがる地域で、交通インフラが整っています。古くから中小工場が立ち並んでいるため、ネジなど機械工業が盛んです。
主な産業:鋼鉄、化学、機械が主な産業であり、古くから日本の経済成長を支えてきました。また、近年ではIT関連の産業も増加傾向にあります。
工業出荷額の内訳:1位:機械工業、2位:金属業、3位:化学工業
また、阪神工業地帯を含む近畿地方の地理の解説や演習問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】近畿地方の問題:近畿地方の地形、3つの地域の気候区分、農業、工業などテスト対策用
場所と特徴:福岡県北九州市周辺に広がる地域です。かつて官営の八幡製鉄所があり、日本の鉄鋼業の拠点でした。
主な産業:今も鉄鋼業が中心で、造船業や化学産業も発展しています。朝鮮半島や中国大陸が近いので食料品の輸出も盛んです。また、近年では環境技術にも力を入れています。
工業出荷額の内訳:1位:機械工業、2位:食料品、3位:化学工業
北九州工業地帯を含む九州地方の地理について、中学校の社会のテストによく出る問題を以下の記事で紹介しています。
中2地理九州地方の一問一答問題:シラス台地、促成栽培、対馬海流、黒潮などテストによく出る問題と解説
場所と特徴:新潟県、富山県、福井県、石川県の4県にまたがる地域で、日本海沿岸に広がる工業地区です。豊富な工業用水があり、冬の農閑期(農作業ができない時期)に労働力を確保しやすいという特色があります。
主な産業:石川県の機械工業、富山県の金属業のほか、輪島塗や越前和紙など伝統産業も盛んです。
工業出荷額の内訳:1位:機械工業、2位:金属業、3位:化学工業
北陸工業地域を含む東北・北陸の地理について、中学校の社会のテストでよく出るポイントの解説や練習問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】中部地方の一問一答問題:3つの気候区分、日本アルプス3つの覚え方、四大公害病など
場所と特徴:栃木県、群馬県、茨城県の3県にまたがる地域で、東北自動車道や国道4号沿いで内陸輸送に便利な立地です。そのため、国内輸送に適した工業が盛んです。
主な産業:機械工業 ・金属工業・ 石油化学工業が盛んで、都市部に近いことから食料品の売り上げ規模も大きいです。全国3-4位の工業出荷額を誇ります。
工業出荷額の内訳:1位:機械工業、2位:食料品、3位:金属業、4位:化学工業
北関東工業地域を含む関東地方の地理について、中学校の社会のテストでよく出る問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】関東地方の一問一答問題と解説:ドーナツ化現象、高原野菜・抑制栽培などテストによくでる問題
場所と特徴:千葉県の東京湾沿岸地域に位置し、石油化学産業が発展しています。日本の工業地域ではめずらしく、機械工業よりも化学工業が盛んであるという点が非常に特徴的です。
主な産業:石油化学、鉄鋼、機械工業が主な産業であり、港湾を利用した輸送が盛んです。
工業出荷額の内訳:1位:化学工業、2位:金属業、3位:機械工業
京葉工業地域を含む関東地方の地理について、中学校の社会のテストでよく出る問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】関東地方の一問一答問題と解説:ドーナツ化現象、高原野菜・抑制栽培などテストによくでる問題
場所と特徴:静岡県、愛知県にかけての地域で、自動車産業と関連産業が発展しています。三大都市圏を結ぶ東海道に沿って整備された鉄道や高速道路の交通網、そして富士山の湧水や中部山岳地帯から流れ出る河川の豊富な水資源を利用した工業用水と水力発電の支援により発展してきました。東京と大阪の中間であり、名古屋に近いという立地を生かして、食料品産業も盛んです。
主な産業:自動車、輸送用機械、精密機械が主な産業で、製造業全体の生産性が高い地域です。
工業出荷額の内訳:1位:機械工業、2位:食料品、3位:化学工業
東海工業地域を含む、中部地方・東海地方の地理の解説や練習問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】中部地方の一問一答問題:3つの気候区分、日本アルプス3つの覚え方、四大公害病など
場所と特徴:広島県、岡山県、山口県にまたがる地域で、瀬戸内海に面しており、船舶や鉄鋼、化学産業が発展しています。石油化学コンビナートが存在しているのが大きな特徴です。工業出荷額は日本全国で3-4位です。
主な産業:機械業だけでなく、石油化学工業も盛んです。瀬戸内海を利用した輸送が行われています。
工業出荷額の内訳:1位:機械業、2位:石油化学工業、3位:金属業
瀬戸内工業地域を含む四国地方について、中学校の社会テストでよく出る範囲の解説と演習問題を以下の記事で紹介しています。
【中2地理】中国・四国地方の一問一答問題:「本州四国連絡橋の覚え方」や県庁所在地などテスト頻出問題
工業地帯・工業地域の出荷額を多い順に並べると以下のようになります。
1970年代の工業出荷額では、鉄鋼、造船、繊維といった重工業と化学産業が多くを占めていました。当時の日本は高度経済成長期にあり、国内外の需要が増加したことで、工業製品が急成長しました。輸出を目的とした重工業が重要視されていました。
2010年代では、電子機器や自動車などの精密機械産業が主力産業として成長しました。特に自動車は世界的に需要が増え、日本の輸出産業の中心となりました。また、技術革新が進み、IT関連製品や部品の製造も出荷額に占める割合が増加しています。
産業構造の変化により、地域ごとの工業地帯・工業地域の主力産業にも変化が生まれました。自動車産業が集中する中京工業地帯や、電子機器が強みの関東工業地帯など、地域ごとの特色が明確になりました。
これにより、環境対策も地域ごとに求められるようになりました。
工業地域と工業地帯に関する、中学校の社会のテストによく出る問題をまとめました。
解答: 中京工業地帯
解答: 京浜工業地帯
解答: 北九州工業地帯
解答: 阪神工業地帯
解答: 工業地帯は工業が密集した大規模な地区で、工業地域は規模が小さいが工業活動が盛んな地区。
解答: 中京工業地帯
解答: 瀬戸内工業地域
中京工業地帯
Q:工業地帯と工業地域はどちらが広いですか?
A:工業地帯の方が広範囲にわたっているのが特徴です。工業地域は特定の産業が集中した狭い範囲の地域を指します。
Q:工業出荷額が高い工業地帯はどこですか?
A:京浜、中京、阪神の3つの工業地帯が工業出荷額で特に高い地域です。これらは日本の経済を支える重要な工業地帯とされています。
Q:なぜ1970年代と2010年代で出荷額の内訳が変化したのですか?
A:時代とともに技術や国際競争力の影響が増し、産業が多様化したためです。重工業から自動車、電子機器などの精密産業へと主力が移りました。
本記事では、工業地帯と工業地域の違いを中心に、主要な工業地帯・工業地域の具体例や、1970年代から2010年代の出荷額の変化について解説しました。
工業地帯と工業地域は、日本の経済を支える重要な役割を果たし、それぞれの地域で異なる特徴を持っています。今後も持続可能な発展を目指すため、産業構造の変化と環境対策が求められるでしょう。
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