中学受験の理科では、「滑車」の問題が頻出テーマの一つです。特に、定滑車と動滑車の違いや、力のつり合いに関する問題では、理解があいまいなままでは点数に結びつきません。
そこで本記事では、滑車の基礎知識から実践的な解き方、頻出パターン別の例題解説までを徹底網羅。塾や学校では教えてくれない“差がつくポイント”まで、わかりやすく丁寧に解説します。
滑車問題が「苦手」から「得意」になるための最短ルートを、一緒に見つけましょう!
中学受験で滑車が重要な理由
中学受験における理科では、物理分野の「力のつり合い」に関する理解を問う問題が多く出題されます。
その中でも滑車の問題は、図の読み取りや思考力、計算力を同時に必要とするため、受験生の実力差が出やすい分野とされています。
さらに、滑車は実生活で触れる機会が少ないため、日常的なイメージがつきにくく、苦手意識を持つ子が多いのも特徴です。そのため、滑車問題を確実に得点できるようにしておくことで、ライバルに大きく差をつけられます。
滑車が頻出する中学受験校の傾向
滑車が出題されやすいのは、「思考力型問題」や「図の理解力」を重視する学校です。具体的には以下のような学校で頻出です:
- 開成中学校、麻布中学校(応用力・発想力重視)
- 栄光学園、聖光学院、渋谷教育学園幕張などの難関校
- 女子学院、雙葉などの女子最難関校
これらの学校では、単純な計算問題ではなく、「どの糸がどれだけ動くか」「力は何倍になるか」といった、図をもとに論理的に考える力を問う設問が多く出題されます。
滑車問題で差がつくポイントとは?
滑車問題では、次のような点で差がつきます。
- 糸の張力を正しく理解できているか
- 滑車の動きと力の向きを正確に読み取れているか
- 「動滑車=力が半分」などの公式を鵜呑みにせず、本質を理解できているか
- 図から自力でつり合いの式を立てられるか
つまり、単なる暗記では対応できず、「なぜそうなるのか?」を理解しているかどうかが、正解率に直結します。
滑車の基礎知識をマスターしよう
滑車の問題を解くうえでまず大切なのは、定滑車と動滑車の違い、そして力の伝わり方の原理をしっかり理解しておくことです。
定滑車と動滑車の違い

定滑車の特徴と使い方
定滑車(ていかっしゃ)は、軸が固定されていて、滑車そのものは動きません。ロープを引く方向を変えるための役割があります。
- 特徴:力の大きさを変えず、向きだけを変える
- 使い方の例:旗を上げるときの滑車、井戸のつるべ など
- 力の大きさ:おもりの重さと同じだけの力が必要(例:100gの重り→100gの力)
動滑車の特徴と使い方
動滑車(どうかっしゃ)は、滑車自体が上下に動くタイプで、力の大きさを半分にすることができるという性質があります。
- 特徴:力を半分に軽くできるが、引く距離は倍になる
- 使い方の例:重い荷物を持ち上げる装置(工場や建設現場など)
- 力の大きさ:おもりの重さが100gなら、必要な力は50g(滑車の重さを考えない場合)
滑車の基本原理
滑車を使った問題を解くには、「力のつり合い」や「糸の張力」など、物理の基本的な考え方を理解することが不可欠です。
力のつり合いと糸の張力
- 力のつり合い:滑車でおもりが静止しているとき、上下の力がつり合っている
- 糸の張力:滑車につながっている糸は、どの部分も基本的に同じ力で引っ張られていると考える
- 複数の滑車が組み合わさっているときには、「糸の本数」に注目して、全体の力をどう分け合っているかを見極めることがカギ
滑車の重さと摩擦の影響
実際の問題では、滑車の重さや摩擦を「無視する」と明記されていることが多いですが、入試レベルの応用問題では、あえてこれを考慮させるケースもあります。
- 重い滑車の場合:滑車自身も力のつり合いに関与するため、おもり+滑車の重さを考える必要がある
- 摩擦がある場合:理想的な2倍や半分の関係が成り立たず、力の伝達にロスが生じる
ただし、中学受験では基本的に「理想的な滑車(重さなし・摩擦なし)」として考える問題がほとんどです。例外的な問題に出会ったときは、問題文の条件をしっかり読み取るようにしましょう。
滑車問題の解き方ステップバイステップ
滑車問題を解く際の基本的な流れは、力の図示から始まり、つり合いの式を立てて、最後に計算を行うという順序です。
これらのステップを丁寧に踏むことで、正確に解答を導き出すことができます。以下にそれぞれのステップについて解説します。
ステップ1:力の矢印を図に描く
滑車問題を解く最初のステップは、力の矢印を図に描くことです。力の矢印(力のベクトル)は、物体に働いている力の大きさや方向を示す重要な情報です。
これを正確に描くことが、後の計算やつり合いの式を立てるための基礎になります。
なぜ力の矢印を描くのか?
- 力の方向を理解することで、力がどのように作用しているかを視覚的に把握できます。
- 力のつり合いを考えるためには、すべての力がどの方向に働いているかを知ることが重要です。
描き方のポイント
- 重力(おもりの力): おもりにかかる重力は下向きの矢印で描きます。この矢印は、物体の重さを表し、通常は「g」と書きます。
- 張力(糸の力): 糸が引っ張る力を示す矢印です。通常、糸の端に張力がかかっているので、糸の動きに沿って矢印を描きます。
- 滑車の力: 滑車の軸にも力がかかっている場合、その力も描く必要があります。
ステップ2:つり合いの式を立てる
次に行うのは、つり合いの式を立てることです。物体が静止している場合、すべての力はつり合っている必要があります。
これは「力のつり合い」と呼ばれ、力が逆方向に等しい大きさで働いている状態を指します。
つり合いの式を立てる方法
- 力の合計がゼロになるように式を立てる:
- 上向きの力と下向きの力が同じである場合、「つり合っている」と言います。「上向きの力(g)=下向きの力(g)」になるように書きます。
- (例)□g+80g=100gの場合、□=20gと分かります。
- 複数の滑車や力が関わる場合:
- いくつかの滑車が組み合わさっている場合、各滑車ごとにつり合いの式を立て、その式を連立させて解く必要があります。ここでは、糸の本数や力の分解を意識して式を立てましょう。
ステップ3:計算して答えを導く
つり合いの式が立てられたら、次はその式を使って実際に計算を行います。ここで必要なのは、計算式を間違えないことと、単位に注意を払いながら解くことです。
計算方法のポイント
- 数値を代入: つり合いの式に与えられた数値を代入し、問題で求められている値(張力や力など)を求めます。
- 単位に注意: 物理では、単位を正確に合わせることが非常に重要です。例えば、「おもりが1kg」「滑車が50g」であれば、合わせて「1050g」になります。
- 力の合成と分解: 複数の力が絡む場合、力の合成や分解を行い、それぞれの成分を計算することを忘れずに行いましょう。
計算式を間違えずに進めることで、確実に答えを導き出すことができます。
よくあるミスとその対策
滑車問題では、いくつかのよくあるミスがあり、それらを避けるための対策を知っておくことが重要です。
よくあるミス
- 力の方向を間違える:
- 力がどの方向に働いているかを間違えると、つり合いの式が正しく立てられず、最終的な答えも間違えます。
- 対策: 力の方向を明確にして、矢印を丁寧に描くこと。
- 力のつり合いの式を間違える:
- 複数の力が作用する場合、つり合いの式を正しく立てられないことがあります。特に、動滑車の場合に力を半分にすることを忘れることが多いです。
- 対策: つり合いの式を立てるときに、必ず力の大小や方向をチェックしながら式を立てる。
- 計算ミスをする:
- 計算時に数字や単位を間違えることが多いです。
- 対策: 計算後に答えをもう一度確認し、単位も合わせてチェックしましょう。
- 複数の滑車を扱う際に間違える:
- 複数の滑車が絡んでいる場合、全体の力のバランスを誤って解くことがあります。
- 対策: 各滑車のつり合いの式を分けて立て、順を追って解くこと。
これらのステップを順番に実行することで、滑車問題を確実に解くことができます。試験や模試で得点を上げるために、これらのステップを練習しておくことが重要です。
実践!滑車の例題と解説
ここでは、3つの例題を通じて、滑車問題の解き方を実践的に学んでいきます。それぞれの問題における読み取り方や解法のコツをしっかり押さえましょう。
例題1:シンプルな定滑車の問題
問題文
天井に固定された定滑車に、500gのおもりがぶら下がっています。おもりを10cm持ち上げるには、ロープを何gの力で引けばよいですか?

解答と解説
- 定滑車は力の大きさを変えずに向きだけ変える装置。
- したがって、500gの力で10cm引くことで、500gのおもりが10cm上がります。
答え:500g
例題2:動滑車を使った基本問題
問題文
下の図のように、天井にロープが固定され、動滑車に1000gのおもりがついています。おもりを10cm持ち上げるには、ロープを何gの力で何cm引けばよいですか?

解答と解説
- 動滑車は力が半分になり、その代わりに引く長さが2倍になる。
- 必要な力は:1000g ÷ 2 = 500g
- 引く長さは:10cm × 2 = 20cm
答え:500gの力で20cm引く
例題3:動滑車+滑車の重さを考慮した応用問題
問題文
下の図のように、動滑車に800gのおもりと、200gの動滑車(滑車自体の重さ)がぶら下がっています。このとき、おもりと動滑車を10cm持ち上げるには、ロープを何gの力で何cm引けばよいですか?

解答と解説
- 全体の重さ=800g(おもり)+ 200g(動滑車)=1000g
- 動滑車なので、必要な力=1000g ÷ 2 = 500g
- 引く長さ=10cm × 2 = 20cm
答え:500gの力で20cm引く
これらの例題を通じて、滑車問題を解く際の基本的な考え方や計算方法に慣れましょう。
問題によって、動滑車と定滑車の違いや滑車の重さが加わる場合の考慮が必要になるため、状況に応じた解法を選ぶことが大切です。
滑車問題を得意にするための勉強法
滑車問題を得意にするためには、基礎的な理解を深め、繰り返し練習することが重要です。ここでは、学習を進めるための具体的な方法を紹介します。
視覚的に理解する:動画や実物を活用
視覚的な理解が鍵
滑車問題を理解するためには、図だけでなく実際に物体を使って視覚的に理解を深めることが有効です。滑車の動きや力のかかり方を視覚的に見ることで、より直感的に理解できます。
動画の活用
インターネット上には、滑車を使った実験や解説動画が多数あります。これらを視聴することで、力の伝わり方や定滑車・動滑車の動作を視覚的に学べます。特に、物理学的な原理がどう作用するかを動画で示すことができるため、理解が深まります。
実物の活用
もし可能であれば、実際に滑車セットを使って問題を解くと良いでしょう。手を動かして実際に力を加えることで、物理的な感覚が身に付きます。例えば、家庭用の小さな滑車セットを使って物体を引き上げたり、動かしたりすることで、力の働きや変化を実感できます。

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反復練習で定着させる:おすすめ問題集
反復練習の重要性
滑車問題は、理解しても実際に解いてみないとその知識が定着しません。したがって、問題を何度も解くことで、自然と解き方が身に付きます。
問題を繰り返し解くことで、解法の流れを体得し、どんな問題でもスムーズに解けるようになります。
おすすめの問題集
中学受験のための滑車問題に特化した問題集を選ぶと良いでしょう。
例えば、「中学受験 魔法ワザ」シリーズや「Yattoke!」のような学習サイトにアクセスし、基礎から応用まで段階的に問題を解いていきます。

中学受験 すらすら解ける魔法ワザ 理科・計算問題
また、「中学受験理科」というYoutube動画では理科の解説動画豊富にあります。
問題集を選ぶ際には、解答と解説がくわしいものを選びましょう。
※詳しくは、以下の記事で中学受験理科の問題集を紹介しています。
中学受験理科のおすすめ参考書と問題集
苦手克服のための家庭学習の工夫
家庭での反復学習
滑車問題が苦手な場合、家庭学習で繰り返し練習することが効果的です。毎日少しずつ問題を解くことで、理解が深まり、自信を持てるようになります。
解法のポイントをメモ
苦手な部分を見つけた場合、その解法のポイントをメモしておきましょう。例えば、動滑車と定滑車の違いや、力の計算方法をノートにまとめ、何度も読み返します。
この繰り返しで、問題を解く際に必要なポイントを忘れずに済みます。
親や家庭教師に解説をお願いする
家庭学習では、自分一人では分からない部分があるかもしれません。その場合、親や家庭教師に説明してもらうのも良い方法です。
特に、物理的な原理や力のつり合いなど、難しい部分は別の視点で説明してもらうと理解しやすくなります。
まとめ:滑車問題攻略の鍵
滑車問題を得意にするための鍵は、基本をしっかり理解し、繰り返し練習することです。最後に、成功するための重要なポイントを整理しましょう。
基本原理の理解が最重要
滑車問題では、力のつり合いや糸の張力、定滑車と動滑車の違いなど、基本的な物理の原理を理解していることが最も重要です。この基本が分かっていれば、難しい問題でも解けるようになります。
- 基本原理の理解: 滑車は「力を分割して使う」道具であり、その原理を正しく理解することが問題を解く鍵です。
問題演習で実力を養う
問題演習を繰り返すことで、実力が確実に身につきます。特に、異なるパターンの問題を多く解くことが大切です。滑車の問題は、単純なものから複雑なものまで多種多様です。異なるタイプの問題を解くことで、どんな問題が出ても対応できるようになります。
- 実力養成の方法: 定期的に問題を解き、解答のポイントや誤答を振り返ることを繰り返し行います。
日々の積み重ねが合格への道
滑車問題に限らず、全ての科目において日々の学習の積み重ねが最も大切です。毎日の少しずつの勉強が、最終的に大きな成果を生み出します。問題解決能力を高めるためには、日々の努力が不可欠です。
- 積み重ねの力: 毎日の勉強を続けることが合格への一番の近道です。焦らず着実に学んでいきましょう。
これらの勉強法を実践することで、滑車問題を確実に得意にすることができます。基本の理解を深め、反復練習を重ねることが、滑車問題を攻略するための最短ルートです。
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