高校生向けに日本史の一問一答問題と解説を用意しました。今回は平安時代末期の文化(院政期文化)をまとめています。
歴史総合や日本史探求の定期テスト対策、大学入試対策などにご活用ください!
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院政期の文化とは?
院政期(おおむね平安時代末期から鎌倉時代初期)は、政治的に重要な時代変化があった時期であり、その影響は文化にも大きく反映されました。
この時期は、平安時代の貴族文化が引き継がれる一方で、武士の台頭により新しい社会情勢と相まって、独自の文化が花開いた時代でもあります。
院政期の時代背景と文化の発展
院政期は、平安時代の貴族文化を引き継ぎつつも、武士の台頭とともに新しい社会構造が形成された時期です。
政治的には、摂関家が支配していた時代から、院政という形で上皇や法皇が実権を握り、院庁を通じて政治が運営されるようになりました。
この時期にあたるのが、主に平安時代末期(11世紀末〜12世紀初頭)から、鎌倉時代初期にかけてです。
平安時代の終わりには、武士階級が力を持ち始めましたが、依然として京都では貴族社会が支配しており、貴族文化が色濃く残っていました。
このため、院政期の文化は、貴族的な美意識と新たな武士社会の影響を受け、融合する形で発展していきました。文化面では、浄土宗や禅宗の思想が広がり、宗教的な文化が強く表れたのも特徴的です。
院政期に特徴的な文化の特徴とは?
院政期文化には、次のような特徴があります:
- 貴族文化の継承と変容:平安時代の貴族文化が引き継がれ、華やかな和歌や絵画、仏教的な価値観が重要視されましたが、武士の影響も受け、文化活動の形式や内容に変化が見られました。
- 仏教文化の発展:仏教が重要な役割を果たし、浄土宗や禅宗などの宗教思想が広まりました。仏教は単なる宗教的な枠を超え、絵画や建築、文学などの芸術に強く影響を与えました。
- 浄土絵や仏画の発展:仏教的な美意識が強調され、浄土絵や仏画などの絵画が盛んに描かれました。これは、浄土宗の教義に基づく仏の世界を描くものです。
- 文学の発展:『平家物語』や『源氏物語』の注釈書が発展したほか、和歌や説話が引き続き盛んに行われ、社会的な教訓や価値観が反映されていました。
院政期文化の重要なポイント
院政期文化の主なポイントをまとめました。
寺院の発展と文化活動
院政期は、浄土宗や禅宗の発展により、寺院が文化活動の中心となった時期です。
特に、平泉の中尊寺などの寺院は、建築や絵画、彫刻などが一体となった文化財を数多く残しています。中尊寺は、浄土宗の教義に基づき、仏教的な精神を表現するための重要な文化的拠点として、後世に大きな影響を与えました。
また、この時期の寺院では、仏教的な儀式や修行が行われ、それに伴い寺院での学問や文化活動が促進されました。浄土宗や禅宗の教義に基づく学問や芸術は、院政期の文化を象徴するものとなりました。
院政期の文学と詩歌
院政期の文学は、『平家物語』や『源氏物語』の注釈書の発展を中心に、重要な文化活動として位置づけられます。
『平家物語』は、戦乱と栄華を描いた物語として、当時の武士や貴族の世界観を反映しています。また、和歌や説話も院政期において盛んに行われ、文学は単なる娯楽にとどまらず、道徳や社会的価値観を表現する手段として重要な役割を果たしました。
院政期の絵画と工芸品
院政期の絵画は、仏教的なテーマを多く扱いました。
特に、阿弥陀聖衆来迎図(あみだしょうじゅらいごうず)に代表される浄土絵はその代表例で、仏教信仰に基づく楽園的な世界を描いたものです。
浄土宗や禅宗の教義が広まる中で、これらの絵画は信仰を深める手段として使用されました。
また、工芸品では漆器や金工が発展しました。漆器は、精緻な技術を駆使して作られ、貴族社会や寺院で使用されることが多かったです。
院政期の建造物
院政期の建築は、寺院建築や庭園設計に大きな影響を与えました。
特に、白河天皇以降に造られた六勝寺や平清盛の造った厳島神社がテスト頻出です。
これらは、仏教的な安寧の世界を表現し、院政期の文化的な美意識を反映しています。
院政期文化の作品と作者のまとめ
院政期文化に出てくる書物や絵画、建築物の作品名と作者名をまとめました。
作品 | 作者 | ポイント |
往生要集 | 源信 | 浄土教信仰 |
日本往生極楽記 | 慶滋保胤 (よししげのやすたね) | 浄土教信仰 |
拾遺往生伝 | 三善為康 | 浄土教信仰 |
梁塵秘抄 | 後白河上皇 | 今様(民間の流行歌) |
鳥獣戯画 | 鳥羽僧正覚猷 | 動物を擬人化して世相を風刺 |
中尊寺金色堂 | 藤原清衡 | 奥州藤原氏の栄華 |
大鏡 | 不詳 | 藤原道長の栄華を描いた歴史物語 |
将門記 | 不詳 | 平将門の乱を題材にした軍記者 |
陸奥話記 | 不詳 | 前九年の役を題材にした軍記者 |
今昔物語集 | 不詳 | 説話集 |
源氏物語絵巻 | 不詳 | 源氏物語を題材とした巻物 |
伴大納言絵巻 | 不詳 | 応天門の変を題材とした絵巻物 |
信貴山絵巻物 | 不詳 | 信貴山にこもる僧の物語 |
平家納経 | 不詳 | 平家の繁栄を願って平清盛が神社に奉納 |
扇面古写経 | 不詳 | 扇に書かれた古写経で、四天王寺に奉納 |
院政期文化の主要人物とその役割
院政期文化で活躍した主要な人物について以下に解説します。
鳥羽上皇と院政の推進
鳥羽上皇は、院政を確立し、文化活動を積極的に支援した人物です。文学や芸術、寺院建築の発展を促しました。
鳥羽上皇の支援を受けて、寺院や仏教文化が栄え、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての文化が確立されました。
院政期文化の主要人物
院政期の文化には、多くの人物がその発展に貢献しました。
鳥羽上皇(在位:1107年〜1123年)
- 業績:鳥羽上皇は、院政を開始した最初の上皇として知られています。彼は自らが実権を握ることにより、貴族文化や仏教活動を支援し、院政期文化を栄えさせました。また、彼は仏教芸術や文化を奨励し、特に浄土宗に関連する活動を推進しました。
- 文化活動:鳥羽上皇は、院政期の文化活動において、特に文学や芸術を奨励しました。彼の支援を受けた寺院や文化人たちは、仏教的な価値観を基盤にした作品を多数生み出しました。
法然(ほうねん、1133年〜1212年)
- 業績:法然は浄土宗の開祖であり、浄土信仰を広めました。彼の教えは、仏教の中でも特に「念仏」を中心にしたものです。法然の教えは、庶民や武士にも広がり、院政期の仏教文化に大きな影響を与えました。
- 文化活動:法然は、多くの浄土宗寺院の建立や経典の注釈書を発表し、その教義に基づいた文化活動を行いました。また、念仏の普及を通じて、民衆の信仰生活にも大きな影響を与えました。
栄西(えいさい、1141年〜1215年)
- 業績:栄西は禅宗の僧で、臨済宗を日本に伝えた人物です。彼は、禅の修行法や禅僧の生活を広め、日本の仏教界に新たな視点をもたらしました。
- 文化活動:栄西は、中国から禅宗の教義や文化を学び、それを日本に広めました。また、茶の湯の文化にも関わり、その後の日本文化に大きな影響を与えました。『興禅護国論』(こうぜんごこくろん)が有名です。なお、日本にお茶を広めたのも栄西です。
参考:日本茶マガジン
なお、鎌倉新仏教については以下の記事でくわしく解説しています。
鎌倉時代の仏教|新仏教の誕生とその背景
空也(くうや、903年~972年)
- 業績:空也は、浄土宗の開祖である法然の前に、すでに浄土信仰を広めた重要な人物です。彼は、念仏を中心にした仏教の教えを広め、特に平安時代末期から院政期の仏教界において強い影響を与えました。「空也上人像」でも知られています。
- 文化活動:空也の最も重要な業績は、浄土信仰の普及です。仏教を難解な教義から、庶民でも信仰できるものへと変化させ、特に民衆に大きな影響を与えました。また、彼の教えに基づいて、空也念仏と呼ばれる「南無阿弥陀仏」の念仏を唱える実践が盛んになりました。
源信(げんしん、942年~1017年)
- 業績:源信は、平安時代後期の浄土宗の僧で、浄土教の発展に大きく貢献した人物です。彼は、浄土宗の教義を体系的にまとめた著作『往生要集(おうじょうようしゅう)』を著し、浄土信仰の理論的な基盤を築きました。
- 文化活動:源信はその著作を通じて、死後の世界と浄土の概念を説明し、仏教の理論的な整備にも貢献しました。彼の著作は、後に広まった浄土宗の教義に深い影響を与え、特に法然や親鸞などに影響を与える形で、浄土信仰はさらなる発展を遂げます。源信の教義は、生死観に対する影響をもたらし、民衆にとっては死後の救済を求める信仰として浸透しました。
平清盛(1118年〜1181年)
- 業績:平清盛は、武士として初めて政権を掌握した人物で、平家政権を築きました。彼は文化活動にも大きな影響を与え、特に仏教の保護者として知られています。
- 文化活動:平清盛は、寺院の建立や仏教行事を支援し、また自らの家の栄光を表現するために文化的な資源を惜しまなかった人物です。彼の時代には、平家一族に関連する文化財が数多く生み出されました。
高校日本史の一問一答問題:院政期文化
(1)平安時代末期(11世紀後半~12世紀)の文化を何文化といいますか。
(2) 平安時代に発達した神仏習合思想のひとつで、神は仏が姿を変えて現れたものだとする考え方を何といいますか。
(3)不慮の死をとげた人が祟りをもたらすのを防ぐために行う鎮魂の儀式を何といいますか。
(4)阿弥陀仏をひたすら信仰すれば救われるとして平安時代に広まった宗教は何ですか。
(5)浄土教が世間に広まった背景として、1052年から世の中が乱れて仏の教えが行われなくなるという思想がありました。この思想を何といいますか。
(6)市井の人々に浄土教を広め、市聖(いちのひじり)とも呼ばれた僧は誰ですか。
(7)平安時代の高僧で恵心僧都(えしんそうず)とも呼ばれ、浄土教の教えを広めた人物は誰ですか。
(8)源信が著した地獄のイメージやそこから救われるための教えが書かれた書物は何ですか。
(9)極楽往生をした者の伝記を集めた『日本往生極楽記』を編纂した人物は誰ですか。
(10)藤道道長の栄華を描いた歴史物語は何ですか。
(11)平将門の乱を描いた日本初の軍記物語は何ですか。
(12)前九年の役を描いた軍記物語は何ですか。
(13)平安時代後期に書かれた、日本の説話をまとめた説話集は何ですか。
(14)平安時代後期に民間で流行し、後白河上皇も非常に気に入っていた歌謡は何ですか。
(15)今様を収集して後白河上皇が編纂した歌謡集は何ですか。
(16)中尊寺金色堂は誰が建立させましたか。
(17)源氏物語を題材に大和絵の手法を用いてかかれた絵巻物は何ですか。
(18)応天門の変を題材にかかれた絵巻物は何ですか。
(19)応天門の変で失脚した大納言は誰ですか。
(20)信貴山にこもって修行をする僧の奇跡を描いた絵巻物は何ですか。
(21)動物を擬人化して世相を描いた絵巻物は何ですか。
(22)鳥獣戯画の作者は誰とされていますか。
解答
(1)院政期文化
(2)本地垂迹説(ほんちすいじゃくせつ)
(3)御霊会(ごりょうえ)
(4)浄土教
(5)末法思想
(6)空也
(7)源信
(8)往生要集
(9)慶滋保胤(よししげのやすたね)
(10)大鏡
(11)将門記
(12)陸奥話記
(13)今昔物語集
(14)今様
(15)梁塵秘抄(りょうじんひしょう)
(16)藤原清衡
(17)源氏物語絵巻
(18)伴大納言絵巻
(19)伴善男
(20)信貴山縁起絵巻
(21)鳥獣戯画
(22)鳥羽僧正覚猷
日本史の問題集
最後に日本史のおすすめ問題集を紹介します。
※関連記事:日本史文化史の参考書と覚え方
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まとめ
いかがでしょうか。
高校生の日本史の勉強用に、平安時代の文化である院政期文化を一問一答にまとめました。
歴史物語である『大鏡』、軍記者である『将門記』『陸奥話記』、後白河上皇編纂の『梁塵秘抄』、浄土教を広めた空也や源信、伴大納言絵巻や鳥獣戯画など、院政期文化には書物や建物などが多数登場します。作品名と作者名、テストに出るポイントを表に一覧にしているので、まとめて覚えてしまいましょう!
平安時代について、下記の記事でも紹介しています。
【日本史の一問一答】平安時代初期(桓武天皇・嵯峨天皇)の問題や解説:三筆、天台宗と真言宗のまとめなど
平安時代の一問一答:薬子の変から後三年の役まで平安時代の変、乱、合戦を総まとめ
平安時代の一問一答:律令体制の変化(受領・遥任、荘園整理令、院政、強訴など)
日本史の一問一答:平安時代末の保元の乱、平治の乱、治承・寿永の乱まで(源平合戦)の問題と解説
日本史の一問一答:国風文化のまとめ(平安時代中期の文化:三蹟、古今和歌集など)
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