高校生向けに日本史の一問一答問題と解説を用意しました。今回は平安時代中期の文化(国風文化)をまとめています。
歴史総合や日本史探求の定期テスト対策、大学入試対策などにご活用ください!
※関連記事:日本史年号一覧:覚えやすい語呂合わせと入試によく出る重要な出来事
国風文化の背景と時代背景
国風文化は平安時代中期に栄えた文化です。その特徴や時代背景を解説します。
平安時代の文化の移り変わり
平安時代(794年〜1185年)は、日本の古代文化が成熟し、独自の文化が花開いた時代です。
この時代の文化的な移り変わりは、特に平安時代初期における中国文化の影響を受けながらも、次第に日本の風土や風習に合った独自の文化が形成されていく過程を特徴としています。
最初の段階では、唐(中国)から多くの文化が伝わり、律令制度や仏教、書道、絵画などが盛んに取り入れられました。
特に、奈良時代に比べて平安時代は、中国からの文化的影響が強く、貴族文化が発展しました。しかし、時が経つにつれ、日本独自の文化が発展し始め、唐文化の影響を受けつつも、次第に自国の自然や宗教観、生活様式に合わせた文化が育まれました。
平安時代の文化的な特徴としては、和歌や絵画、仏教美術、さらには日本独自の建築様式が発展し、古典文学も成熟していきます。
こうした変化は、日本独自の文化、いわゆる国風文化(日本風の文化)へとつながっていきました。
中国文化からの独立と国風文化の誕生
平安時代中期に入ると、唐(中国)の影響を受けた文化が日本の独自の風土に溶け込む形で変化しました。
唐文化の影響は、まず政治体制や宗教(仏教)、文学、芸術の面で顕著でしたが、次第に日本の自然や風俗、感性に基づく独自の発展を見せるようになりました。
唐文化の中で特に影響を与えたのは、儒教や仏教、書道や絵画技術です。これらの文化が完全に日本風に変化し、独自の発展を遂げたことが、国風文化の特徴となります。
例えば、仏教は中国の様式を踏襲しつつ、日本的な宗教観に合わせて発展し、和歌や文学においても中国文学の影響を受けつつ、日本語での表現が重要視されるようになりました。
特に平安時代の貴族文化は、唐文化から独立し、日本独自の美的感覚や人間関係を重視した文化が形成されました。このようにして、唐文化からの影響を受けつつ、最終的には独自の文化が確立し、国風文化が誕生したのです。
なお、唐文化の影響で華開いたのが奈良時代の天平文化です。天平文化については以下の記事でくわしく解説しています。
天平文化の解説と一問一答問題|奈良時代の文化を完全理解できるテスト対策向け!古事記・日本書紀など
国風文化の主要な特徴
国風文化は特に和歌や文学で発展しました。その特徴を以下にまとめています。
和歌や文学の発展
平安時代の文学は、国風文化の中でも特に重要な役割を果たしました。文学では、和歌や物語文学が発展し、日本文学の黄金時代を築きました。
代表的な作品には、『源氏物語』(紫式部著)や、『枕草子』(清少納言著)が挙げられます。
『源氏物語』は、全54帖から成る長編小説で、平安時代の貴族社会やその精神性を描いた作品です。この作品は、日本文学史上最も重要な作品の一つであり、世界最古の長編小説とも言われています。
また、『枕草子』は清少納言による随筆で、彼女の日常の観察や感受性を反映した作品です。このような文学作品は、平安時代の貴族文化やその価値観、感性を伝える重要な役割を担いました。
日本独自の美術と工芸
国風文化における美術と工芸は、日本独自のスタイルを確立しました。
特に仏教美術は、仏像や絵画において、浄土宗や禅宗の影響を受けて発展しました。仏像制作は、従来の中国や朝鮮半島からの影響を受けつつも、次第に日本的な表現を取り入れていきました。
また、装飾技術においても、漆器や金工などの工芸品が盛んに作られ、当時の貴族たちの生活を彩りました。特に紫檀や漆を使った家具や器物が高く評価されました。
日本建築と庭園文化
建築と庭園も国風文化の重要な特徴です。平安時代には、寝殿造り(貴族の住居)や仏教寺院が発展しました。
寝殿造りは、広い庭園とともに、和風の建築様式を象徴するものです。また、寺院建築も浄土宗や禅宗の影響を受けて、多くの寺院が建立されました。
さらに、庭園文化が発展し、特に貴族たちによって庭園の設計や装飾が行われました。庭園は、自然を模した美的空間として、平安時代の人々の精神的な安らぎを提供する重要な要素となりました。
国風文化を代表する人物とその作品
国風文化を代表する人物について、その作品とともに紹介します。
清少納言と『枕草子』
清少納言(生年不詳〜1025年)は、平安時代の貴族女性で、その随筆『枕草子』は国風文化を代表する文学作品です。
清少納言は、宮廷内で仕えていた経験をもとに、当時の貴族社会や日常生活を鋭い観察眼で描きました。『枕草子』には、貴族社会に対する鋭い批判や独特のユーモアが含まれ、彼女の豊かな感性と知性が光ります。
紫式部と『源氏物語』
紫式部(973年〜1014年/1031年)は、平安時代中期の文学者で、『源氏物語』の作者として広く知られています。
『源氏物語』は、光源氏という貴族の人物を中心に展開される恋愛ドラマで、平安時代の貴族社会の複雑な人間関係や美意識を描いています。
この作品は、物語文学としての形式だけでなく、深い心理描写や美的感覚をもつため、日本文学における金字塔となっています。
なお、源氏物語のあらすじを以下の記事で読めます。古文のテスト対策にもなります。
【内容要約】源氏物語のあらすじを簡単にわかりやすく解説!5つの魅力も説明 | 1万年堂ライフ
小野道風と書道
小野道風(894年〜965年頃)は、平安時代初期の書道家で、漢字や仮名書きの発展に重要な役割を果たしました。
彼は、書道において極めて優れた技術を持ち、藤原佐理(ふじわらのさり)、藤原行成(ふじわらのこうぜい)と共に三跡(さんせき)と称されています。特に和様の書を洗練させました。
小野道風の書は、日本の書道における金字塔とされ、彼の影響を受けた多くの書家たちが登場しました。
なお、小野道風は「みちかぜ」と読むそうです。
参考:BUSHOO!JAPAN
国風文化の作品と作者のまとめ
国風文化は、書物、建物がたくさん出てきます。その作品名と作者名を以下の表にまとめています。
作品 | 作者 |
古今和歌集 | 紀貫之ら |
土佐日記 | 紀貫之 |
和漢朗詠集 | 藤原公任(きんとう) |
源氏物語 | 紫式部 |
枕草子 | 清少納言 |
蜻蛉日記 (かげろうにっき) | 藤原道綱の母 |
更級日記 | 菅原孝標の娘 |
小右記 | 藤原実資 |
法成寺 | 藤原道長 |
平等院鳳凰堂 | 藤原頼通 |
平等院鳳凰堂阿弥陀如来像 | 定朝 |
国風文化の一問一答問題【高校日本史テスト対策用】
(1)平安時代中期には日本独自の文化が形成されました。これを何文化といいますか。
(2)漢字をもとにしてひらがなやカタカナがつくられました。これらの文字を何文字と呼びますか。
(3)『古今和歌集』で代表的な歌人と称された6人の歌人をまとめて何と呼びますか。
(4)六歌仙を六人とも答えてください。
(5)『古今和歌集』から『新古今和歌集』までの8つの歌集をまとめて何と呼びますか。
(6)『古今和歌集』の編集は誰がしましたか。
(7)『和漢朗詠集』の編集は誰がしましたか。
(8)『源氏物語』の作者は誰ですか。
(9)『枕草子』の作者は誰ですか。
(10)『土佐日記』の作者は誰ですか。
(11)『蜻蛉日記』の作者は誰ですか。
(12)『更級日記』の作者は誰ですか。
(13)『小右記』の作者は誰ですか。
(14)法成寺を建立したのは誰ですか。
(15)平等院鳳凰堂を建立したのは誰ですか。
(16)平等院鳳凰堂阿弥陀如来像の作者は誰ですか。
(17)平等院鳳凰堂阿弥陀如来像の造り方は一本造・寄木造のどちらですか。
(18)平安時代に発展した日本風の絵画で日本の風物や物語を題材にした絵を何といいますか。
(19)三蹟を答えてください。
(20)上級貴族向けの住まいで、寝殿を中心につくられた住居形態を何といいますか。
(21)貴族の服装について、一般に昼に着る正装を何といいますか。
(22)貴族の服装について、一般に夜に着る正装を何といいますか。
(23)貴族の服装について、一般にプライベートで着る通常服を何といいますか。
(24)貴族の服装について、直衣をさらに簡略化した衣服を何といいますか。
解答
(1)国風文化
(2)かな文字
(3)六歌仙
(4)遍昭、在原業平、文屋康秀、喜撰法師、小野小町、大伴黒主
(5)八代集
(6)紀貫之(ら)
(7)藤原公任
(8)紫式部
(9)清少納言
(10)紀貫之
(11)藤原道綱の母
(12)菅原孝標の女(むすめ)
(13)藤原実資(さねすけ)
(14)藤原道長
(15)藤原頼通
(16)定朝(じょうちょう)
(17)寄木造
(18)大和絵
(19)小野道風(おののみちかぜ)・藤原佐理(ふじわらのすけまさ)・藤原行成(ふじわらのゆきなり)
(20)寝殿造
(21)衣冠
(22)束帯
(23)直衣(のうし)
(24)狩衣(かりぎぬ)
国風文化の勉強ポイント
国風文化は平安時代中期に発展した日本独自の文化で、和歌や絵巻、仮名文字の誕生がその特徴です。貴族たちが美的感覚を重視し、源氏物語や枕草子といった文学作品が生まれた点が重要です。
以下に、勉強のポイントを紹介します。
文学の発展(かな文字の誕生と普及)
平安時代中期には、漢字を元に日本独自の「かな文字」が生まれ、これが日本文学の発展に大きく寄与しました。かな文字により『竹取物語』や『枕草子』など、日本の情景や生活を豊かに表現できるようになり、貴族たちの日常が文学作品として残されました。
また、かな文字の発展は、女性作家の活躍にもつながり、日本文学史においても非常に重要な時代です。
和歌集の編纂(『古今和歌集』の成立)
国風文化の時代には和歌が非常に重要な文化要素として扱われ、最初の勅撰和歌集である『古今和歌集』が紀貫之らによって編纂されました。この和歌集は、平安貴族の美意識を反映し、四季や恋愛など多様なテーマの和歌が集められています。
後世の和歌にも大きな影響を与え、国風文化における文学の中心的な存在といえます。
新たな仏教の創始(真言宗と天台宗の登場)
この時代には、空海による真言宗と最澄による天台宗という新たな仏教宗派が広まりました。2名とも遣唐使に随行して唐からそれらの仏教を輸入してきました。
真言宗は密教を重んじ、大日如来を中心とした仏教観を伝えました。天台宗は一切衆生が仏性を持つという理念に基づき、あらゆる存在が救済されるという教えを強調しました。
これらの教えは奈良時代の仏教に嫌気がさしていた桓武天皇や嵯峨天皇に庇護され、貴族階級を中心に受け入れられ、宗教面でも平安時代の文化に影響を与えました。
国風文化のテストで間違いやすいポイント
国風文化ではいくつか間違いやすいポイントがあります。
国風文化の文学作品
国風文化の文学作品はいくつも登場します。作品ごとの特徴を混同しがちです。
『竹取物語』と『伊勢物語』
国風文化の中で、「物語文学」が発展しました。
『竹取物語』は日本最古の物語として知られ、異界の存在との交流が描かれています。一方、『伊勢物語』は和歌に基づいた短編物語集で、恋愛や貴族の日常が題材です。
『枕草子』と『源氏物語』
随筆文学では、清少納言による『枕草子』が登場し、宮中生活や四季を題材とした美しい文章が特徴です。
紫式部の『源氏物語』は、光源氏の生涯を通して、貴族社会の人間模様が精密に描かれています。
国風文化の建築や美術
国風文化の建築や美術で間違いやすいポイントを紹介します。
大和絵と蒔絵
平安時代には、それまで人気だった「唐絵」に代わって日本独自の「大和絵」が描かれるようになりました。
代表的な画家として巨勢金岡(こせのかなおか)が知られています。また、「蒔絵」は漆器に金や銀の粉で模様をつける技法で、大和絵とは異なるので注意が必要です。
寝殿造と寄木造
平安時代の貴族の住宅様式を「寝殿造」と呼びました。仏像制作で部分ごとに彫る技法である「寄木造」と混同しがちです。
なお、寄木造の前には一木造という彫刻技法が使われていた点も覚えておきましょう。
日本史のテスト勉強におすすめの問題集
最後に日本史のおすすめ問題集を紹介します。
※関連記事:日本史文化史の参考書と覚え方
『金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本 改訂版』
1冊目は日本史参考書の定番、「金谷の日本史」です。古代~近現代まで3冊と文化史1冊の合計4冊に分けて解説してくれています。
内容はオーソドックスで、教科書をさらにくわしく解説してくれています。
すべてじっくり読むというより、問題集で問題を解きつつ因果関係が分かりにくいときに参考書として使う人も多いです。
特に、共通テストを受ける人は『文化史』だけでも読んでおくと役立ちます。
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】 原始・古代史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業)
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】 中世・近世史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業)
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】 近現代史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業)
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】文化史 (東進ブックス 大学受験 名人の授業シリーズ)
出版社:ナガセ
『日本史B一問一答【必修版】【完全版】』
流れを理解できるようになったら、問題演習をして記憶に定着させる必要があります。
この問題集はそんなときに便利です。
「必修版」と「完全版」に分かれており、現在の学力や志望校のレベルに合わせて選べます。
日本史B一問一答【必修版】 (東進ブックス 大学受験 一問一答シリーズ)
日本史一問一答【完全版】2nd edition (東進ブックス 大学受験 一問一答シリーズ)
出版社:ナガセ
『よくわかる高校日本史探究』
学研が出版している「標準レベルまで」の参考書です。教科書よりも解説がくわしく、日本史探求に苦手意識を持っている人も理解しやすいです。
定期テスト対策用の問題ページもあり、定期テスト対策、中堅レベルまでに大学入試対策に便利です。
よくわかる高校日本史探究 (MY BEST)
出版社:Gakken
まとめ
いかがでしょうか。
高校生の日本史の勉強用に、平安時代の文化である国風文化を一問一答にまとめました。
古今和歌集(紀貫之)や蜻蛉日記(藤原道綱の母)の作者、衣冠・束帯や直衣・狩衣の違い、寝殿造など国風文化には書物や建物などが多数登場します。作品名と作者名を表に一覧にしているので、まとめて覚えてしまいましょう!
定期テスト対策、大学入試に向けてご活用ください。
平安時代について、下記の記事でも紹介しています。
【日本史の一問一答】平安時代初期(桓武天皇・嵯峨天皇)の問題や解説:三筆、天台宗と真言宗のまとめなど
平安時代の一問一答:薬子の変から後三年の役まで平安時代の変、乱、合戦を総まとめ
平安時代の一問一答:律令体制の変化(受領・遥任、荘園整理令、院政、強訴など)
日本史の一問一答:平安時代末の保元の乱、平治の乱、治承・寿永の乱まで(源平合戦)の問題と解説
日本史の一問一答:院政期文化のまとめ(平安時代末期:浄土教、軍記物語、説話集、歴史物語、絵巻物など)
コメント