近年、大学入試は多様化してきています。文部科学省によると、一般入試だけでなく推薦入試での入学者が全体の半数にもなっており(文部科学省「国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」より)、大学進学希望者にとって推薦入試は非常に重要な入試形態の1つになっています。
ですが、名称がAO入試(旧)、公募推薦、指定校推薦、学校推薦型選抜、総合型選抜などたくさんあり、しかも数年ごとに名称も制度もコロコロ変わるためややこしいです。
そこで、推薦入試の1つである学校推薦型選抜について説明し、総合型選抜との違いを紹介いたします。
※関連記事:指定校推薦とは
学校推薦型選抜とはどのような推薦入試か
学校推薦型選抜は大学入試の1つの形態で、一般選抜入試にくらべて早く始まる入試です。学校推薦型選抜で合格すればもちろんその大学に入学できます。
11-12月に選考がある
学校推薦型選抜の選考時期は11-12月がほとんどです。一般選抜の前期が1-2月なのにくらべると3か月ほど早く始まります。
早めに合格が決まれば安心できますし、大学入学後にそなえて英検やTOEIC、大学の授業で必要になる専門科目(数学、生物、化学など)の勉強に時間を当てられます。
よくあるのは、年内に合格を決めておいて年明けの英検第3回を受検するケースです。勉強のモチベーションが高いまま次の目標に向かえるので、勉強がしやすく実力を上げやすいと言えるでしょう。
※関連記事:【英検2級】一次試験対策の仕方
※関連記事:【英検2級】面接の流れ
国公立大は専願、私立大は併願可能
学校推薦型選抜は所属する高校からの推薦が必要です。そのため専願の大学も多いです。
- 専願:合格したらその大学に必ず入学しないといけない
- 併願:合格してもその大学に入学しなくてもいい(他大学に入学してもいい)
国公立大学は専願が多く、学校推薦型選抜で合格した大学を「押さえ」にして他の国公立大学も受けてみたいということはできません。この点は一般選抜と同じです。
私立大学であれば近畿大学のように併願を認めている大学も多数あります。公式に「併願OK」としていなくても受験者が他大学にも出願しているかどうかの調査は行われないようですし、併願が事実上可能です。
ご自身の志望状況と照らし合わせて出願先の大学を検討してみましょう。
学校推薦型選抜は指定校推薦と公募推薦にわかれている
学校推薦型選抜には指定校推薦と公募推薦の2種類があります。それぞれの違いを説明します。
指定校推薦は合格確率ほぼ100%
指定校推薦は各大学に高校からの推薦枠が決められている推薦です。推薦枠が少なく激しい競争になりますが、推薦をもらえればほぼ100%合格できます。
高3の7月に推薦してほしい大学・学部がどこなのかを高校に伝えます。同じ大学・学部に複数の生徒が推薦願を出すことが多く、9月に高校の先生方が相談してどの生徒に推薦を出すかを決定します。
高1から高3の1学期までの評定平均で推薦をもらえるかどうか決まります。高1から勉強をコツコツがんばってきた人や欠席日数が少ない人が推薦をもらいやすいです。
※関連記事:指定校推薦とは?校内の選考の仕組みを解説
※関連記事:指定校推薦は欠席何日まで大丈夫?
公募推薦は合否がわかれる
公募推薦は指定校推薦と違って、合格できるとは限りません。大学に行って入試を受けて、合否が決まります。
合格率は倍率によっても変わりますが3~6割ほどです。
評定平均などの出願条件を満たしていれば誰でも出願できるため、一般入試より合格しにくくなるケースもあります。
入試方法は大学によって下記のようにさまざまです。受験する大学の最新の募集要項で確認するようにしましょう。
- 書類審査のみ
- 書類審査と面接
- 書類審査と学科試験と面接
- 書類審査と小論文と面接
また、令和7年度入試(2022年春に高校入学した人)より書類審査のみによる合否決定は少なくなり、面接や学科試験、実技などの試験とセットになる大学・学部が増えると予想されます。
大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力も適切に評価するため、調査書等の出願書類だけではなく、大学入学共通テスト又はその他の評価方法等※のうち少なくともいずれか一つを必ず活用し、その旨を募集要項に記述する。
※例えば、小論文等、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等
文部科学省「令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」より引用
出願に一定以上の評定平均が求められる
出願に条件を設けている大学・学部が多く、よく見られるのは「評定平均」です。
出願するのに「4.0以上」の評定平均を求める大学が多いです。また、学部によって条件が細かく設定されており、国際学部などの英語系の学部では英語の評定平均だけほかの科目より高めに設定されることがよくあります。
例えば、同志社大学・文学部・英文学科では全科目の評定平均4.0以上で、かつ英語は4.1以上を出願条件としています。
大学・学部によって、また年度によっても変わります。最新の情報を大学HPで確認しておきましょう。
部活など課外活動も重視
学校推薦型選抜で求められるのは評定平均だけではありません。部活動や美術活動などの課外活動もアピール材料にできる場合がよくあります。
最たる例がスポーツ推薦で、全国大会出場などの実績があればかなり武器になります。
スポーツ推薦でなくても部活動の努力はアピールできます。
- 練習メニューを自分たちで考えて実践していた
- チームの目標達成に向けて企業と連携した
など、「毎日部活動をしました」だけではないプラスアルファの自主的な活動はアピールポイントになります。
せっかく毎日のように部活をがんばるわけですし、受け身ではなく積極的なかかわり方をしてみましょう。
※関連記事:予備校と塾の違い:部活と勉強、推薦と一般入試の両立にはどちらがいいか
共通テストの受験を求める大学もある
多くの学校推薦型選抜は小論文や面接を課しています。なかには、大阪大学のように共通テストで8割程度の得点を求めている大学もあります。
共通テストを課す大学では一般選抜に近い学力を求めていますから、「勉強にプラスしてアピールできること」をつくるようにしてみましょう。
学校推薦型選抜と総合型選抜との違い
学校推薦型選抜と総合型選抜はよく混同されます。
選考時期の違い
まず、学校推薦と総合型選抜は入試時期が異なります。
高校からの推薦有無の違い
推薦入試は学校から推薦が必要な場合と必要ない場合に分かれます。
学校推薦型選抜は「高校からの推薦が必要」で、総合型選抜は「必要なし」です。
選考方法の違い
学校推薦型選抜も総合型選抜も選考方法は書類審査や小論文、面接が中心です。
ただし、大学によって選考方法は大きく異なります。各大学HPで確認しておきましょう。
違いのまとめ
こちら違いを簡単にまとめておきます。
選考時期 | 出願条件 | 主な選考方法 | 専願・併願 | |
学校推薦型選抜 | 11-12月 | あり ※所属する高校からの推薦が必要 ・評定平均4.0以上 など | 書類審査、小論文、面接など | ・国公立大は専願のみ ・私立大は実質的に併願可能 |
総合型選抜 | 私立大:8~9月 国公立大:11月 ※5-6月にエントリーの必要あり | あり ※高校からの推薦不要 ・評定平均 ・英語検定資格 ・部活の実績 など | 書類審査、小論文、面接、プレゼンなど | ・国公立大は専願のみ ・私立大は併願可能あり |
総合型選抜は学校推薦型選抜よりさらに選考時期が早いです。どちらも一応、専願が原則なのでほとんどの大学では総合型選抜と学校推薦型選抜の併願はできません。
違いが分かりづらいですが、学校推薦型選抜は高校での成績(評定平均)が重視されるのに対して、総合型選抜は学業以外の実績がかなり重視されています。
総合型選抜では、「大学が求める学生像に合致するかどうか(アドミッションポリシー)」を重視しており、入学後何をしたいのか・どうなりたいのかという意欲が問われています。そのため、受験生にプレゼンテーションをしてもらって選考する大学もあるほどです。
学校推薦型選抜と一般選抜との違い
学校推薦型選抜と一般選抜との違いについてもまとめておきます。
選考時期 | 出願条件 | 主な選考方法 | 専願・併願 | |
学校推薦型選抜 | 11-12月 | あり (所属する高校からの推薦が必要) ※評定平均4.0以上など | 書類審査、小論文、面接など | ・国公立大は専願のみ ・私立大は実質的に併願可能 |
一般選抜 | 1-2月 | なし | 英語、数学、国語、理科、地歴公民などの学科試験 | ・国公立大は専願のみ ・私立大は併願可能 |
学校推薦型選抜は一般選抜よりも選考時期が早く、出願条件があり、選考方法も一般選抜と全く違います。小論文対策や面接対策といった、通常の学科試験の対策とは別の対策が必要です。
ただ、専願・併願は学校推薦型選抜と一般選抜であまり違いはなく、国公立大学は専願で私立大学は併願ととらえておいてほぼ大丈夫です(※絶対併願OKではありません)。
学校推薦型選抜をもらうにはどうすればいいか
一般選抜だけでなく学校推薦型選抜での大学入学者も多く、大学進学を考えている高校生にとって重要な選択肢の1つです。
そんな学校推薦型選抜はどうすればもらいやすくなるか、お伝えします。
高1から評定平均4.0以上を目指す
まず、高1から評定平均4.0以上を取っておきましょう。
学校推薦型選抜は「学業重視」です。評定平均4.0以上、4.3以上といった出願条件を設けている大学・学部が多いです。出願条件を満たしていなければそもそも出願できない=合格できません。
高1時点で志望大学・学部が決まっていない人は多いですが、高3になってからあわてて準備しても推薦入試は間に合いません。オープンキャンパスに行くなどして大学・学部の候補を大まかに決めておくか、どの大学・学部を志望することになっても大丈夫なように評定平均4.0以上を取っておくほうが良いです。
※関連記事:大学の選び方を解説
※関連記事:【文理選択】理系文系の選び方:年収の違いや理転・文転の注意点を解説
定期テストで高成績を取る
評定平均4.0以上を取るには、高校の定期テストで高得点を取る必要があります。全科目80点以上を目標に普段からコツコツ勉強しましょう。
定期テストは範囲が限定されていますが、中学のときのように「テスト直前に一夜漬け」ではなかなか点数が取れません。科目数が多く、丸暗記しようにも量が多くて覚えきれません。生物基礎や化学基礎も用語の説明自体が難解になり、理解して覚える・計算練習を繰り返すようにしないと混乱しがちです。
※関連記事:【高校生】定期テストで90点以上を取れる勉強方法
※関連記事:生物基礎の一問一答問題
※関連記事:化学基礎の一問一答問題
部活に入るなら積極的に関わる
学校推薦型選抜で求められるのは学業成績だけではありません。部活動で活躍していればそれもアピールポイントになります。
ただし、「毎日休まず部活に行きました」では全然アピールになりません。「どうがんばったか」「その結果、どのような実績を残したか」が大切です。
顧問や先輩に言われたとおりに活動するだけでなく、練習の仕方を工夫して周囲に相談してみるなど、積極的に関わるようにしましょう。
英検取得にも力を入れる
国際学部や英語学科では英検など英語資格が役立つ場合もあります。出願条件に英検資格が入っている場合、評定平均が足りていなくても英検資格で条件を満たしていれば出願できることもあります。
学校推薦型選抜の出願時期が9月なので、英検の取得は高3の6月(第一回目の検定)が期限です。高1やそれ以前からコツコツ英検対策をしておきましょう。
※関連記事:英検2級のレベルと対策方法
時間がない人は通信教育がおすすめ
近くに良い塾や予備校がない、部活が忙しくて塾・予備校に通う時間がない。
こういったケースはよくあります。
そんなときは通信教育がおすすめです。
なかでも、難関大学を目指す高校生はZ会を検討してみてください。1回15~30分ほどで勉強でき、難関大学によく出る難問や記述問題の対策ができます。
【下記リンクは難関大に進学したいけれど予備校に通う時間がない(通える範囲内に予備校がない)人向けの、Z会のPRです。】
Z会高校生向けコース、開講中! 資料請求はこちら※Z会を活用して、部活と並行して難関大に進学するための方法を下記記事で紹介しています。
Z会だけで難関大学に合格する方法
苦手を克服するにはオンライン家庭教師がおすすめ
苦手な科目が気になるけどまとまった勉強時間が取れない、帰宅したらもう夜になっている。という人には、オンライン授業がおすすめです。
自宅で受けられますから、21時や22時からでも安心して授業を受けられます。塾や予備校だと22時までには授業も終わり、自習室も閉めざるを得ません。
ところが在宅受講なら22時からさらに1時間授業を受けても23時半には寝られます。気になる箇所を1対1の個別授業で解説してもらえば、すっきりした状態で1日を終えられます。
しかも遅い時間帯だと、予備校で教えているプロ講師が予備校の授業後にオンラインで個別授業をすることもあります。どうしても分からない問題に1人で悩んでいるより、実力のある講師に教わるほうが効率よく学力を伸ばせます。
【下記バナーは月額27,500円で「勉強しほうだい」「質問しほうだい」のオンライン自習室・個別指導のPRです。自宅だとサボってしまうけど自主的に勉強を進めたい高校生におすすめです。】
まとめ
大学入試の推薦入試の1つである学校推薦型選抜について解説しました。指定校推薦と公募推薦に分かれており、どちらも評定平均が非常に大切です。
高校から推薦をもらうには、定期テスト80-90点を目指して日ごろからコツコツ勉強しましょう。
また、よく似た推薦入試で総合型選抜があります。総合型選抜は学業以外のアピールポイントも重視しているという点で学校推薦型選抜と違っています。
どちらも国公立大は専願なので、本当に行きたい大学に出願するようにしましょう。
また、小論文で受験するケースが多い入試です。小論文の参考書を以下の記事で紹介しています。
小論文の参考書:高校生向けに小論文の構成や書き出しが分かりやすいものをピックアップ
コメント