鎌倉幕府（1185年～1333年）と室町幕府（1336年～1573年）は、日本の中世に設立された二つの武士政権で、政治体制や役職に違いがありました。
この記事では、中学生向けにわかりやすく「鎌倉幕府と室町幕府の仕組みの違い」について解説します。
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鎌倉幕府と室町幕府の全体像：時代背景と基本構造
日本の歴史の中で、「幕府（ばくふ）」は武士が中心となって国をまとめた政治のしくみです。
鎌倉幕府（1185〜1333年ごろ）は、日本で初めて本格的に武士が政権を握った時代。
室町幕府（1336〜1573年ごろ）は、その後に京都を中心に開かれた、より大きくて複雑な武家政権です。
鎌倉幕府とは？成立の背景と政治構造
開府と幕府誕生：源頼朝からの変遷
- 背景：それまでの日本は天皇と貴族（公家）が政治を行っていましたが、地方で力を持った武士たちは自分たちの力を活かせる政治を求めていました。
- 源頼朝の登場：1180年、平氏政権に不満を持つ人々と手を組んだ源頼朝は、鎌倉（今の神奈川県）を拠点に勢力を広げます。
- 1185年：朝廷から、全国の治安や年貢の管理を行う「守護・地頭」を置く権利をもらい、実質的に全国の武士をまとめる立場に。
- 1192年：「征夷大将軍」に任じられ、鎌倉幕府が正式にスタートしました。
→ つまり、鎌倉幕府は「武士による、武士のための政治」の始まりです。
幕府の役職・組織（執権・評定衆・侍所など）
鎌倉幕府は、武士の国らしく役割分担がはっきりしていました。
- 将軍（しょうぐん）：幕府のトップ。ただし、途中からは名誉職になることもありました。
- 執権（しっけん）：将軍を補佐し、実際の政治を動かす役。北条氏が代々担当しました。
- 評定衆（ひょうじょうしゅう）：重要なことを話し合って決める会議メンバー。
- 侍所（さむらいどころ）：武士の統率や警備を担当。
- 政所（まんどころ）：お金や土地の管理を担当。
- 問注所（もんちゅうじょ）：裁判や訴えごとを処理する役所。
→ 現代でいうと、将軍は「象徴的な社長」、執権は「実務を仕切る社長代行」、評定衆は「役員会議」みたいなイメージです。
※なお、鎌倉幕府の仕組みについての解説や練習問題を以下の記事に載せています。
【中学歴史】鎌倉幕府の仕組みと元寇：問注所・侍所・政所、御恩と奉公などの解説と練習問題
室町幕府とは？成立の背景と政治構造
足利尊氏の登場と幕府樹立の意義
- 鎌倉幕府の滅亡（1333年）：後醍醐天皇が武士の力を使って幕府を倒し、「建武の新政」という新しい政治を始めましたが、武士の不満が爆発。
- 足利尊氏（あしかがたかうじ）：この不満を背景に後醍醐天皇と対立し、1336年に京都で新しい武家政権をつくります。
- 1338年：征夷大将軍に任命され、室町幕府が正式にスタート。
→ 鎌倉幕府は東国（鎌倉）が中心でしたが、室町幕府は京都が本拠地。天皇や貴族と距離が近い政治が特徴です。
幕政を支えた管領・三管四職などの行政機構
室町幕府は鎌倉幕府より組織が大きく、役職も複雑になりました。
- 将軍：トップ。鎌倉幕府よりも権威を意識し、朝廷文化とも深く関わりました。
- 管領（かんれい）：将軍を補佐するNo.2。細川・斯波・畠山の3家が交代で務めたため「三管領」と呼ばれます。
- 侍所の長官（所司）：軍事や警備のトップ。赤松・一色・山名・京極の4家が務め、「四職」と呼ばれます。
- 地方の守護（しゅご）：戦争や税の管理を行い、やがて「守護大名」として大きな力を持つようになりました。
→ 室町幕府は、将軍を中心にいくつもの有力武家が役職を分担して政治を進める「分担型政権」でした。
比較で読み解く！両幕府の統治体制の違い
中央 vs 地方：支配のスタイル
鎌倉幕府の中央集権的支配構造と御家人との関係
- 中央集権（ちゅうおうしゅうけん）とは、「中心にある政府が全国を直接コントロールする」やり方。
- 鎌倉幕府では、将軍のもとで執権が政治をまとめ、全国に派遣した守護・地頭を通して土地や治安を管理しました。
- 御家人（ごけにん）と呼ばれる武士は、将軍に忠誠を誓い、その代わりに領地を守る権利をもらいました。
- 例えると、校長先生（将軍）が各クラスの担任（守護・地頭）を直接任命して、学校全体を管理している感じです。
室町幕府の分権体制と守護大名の台頭
- 分権（ぶんけん）とは、「地方のリーダーにかなりの権限を渡す」やり方。
- 室町幕府では、地方の守護がだんだん強くなり、「守護大名（しゅごだいみょう）」としてほぼ独立した勢力になっていきました。
- 守護大名は自分の領地で軍隊を持ち、税を取り、時には将軍の命令を無視することも。
- 例えると、部活ごとに顧問（守護大名）が強すぎて、校長（将軍）の言うことより自分のやり方で運営しちゃう感じです。
役職の違いを比較
侍所・政所・問注所の違い
鎌倉幕府にも室町幕府にも侍所・政所・問注所が登場します。幕府が違っても各役所の役割は大きく変わっていません。
問注所の役割が室町幕府ではやや変わりました。
また、室町幕府では侍所の長官を有力守護大名4氏で交代で務めていました。このことから侍所を「四職（ししき）」とも言います。
執権と管領の違い
鎌倉幕府の執権、室町幕府の管領、江戸幕府の老中はそれぞれ政治の中心役職です。名称が異なるだけでなく、下記のような違いがあります。
名称が異なり、役割も多少異なります。まったく違っているというほどの差がないので、多くの中学生を混乱させているかもしれ
朝廷との関係性：敵か味方か？
鎌倉幕府と朝廷の緊張関係（承久の乱など）
- 朝廷（天皇や貴族）は京都にあり、政治の「伝統的な権威」でした。
- 鎌倉幕府はもともと朝廷から許可を得て成立しましたが、しだいに武士の力が強くなり、朝廷と衝突することに。
- 承久の乱（1221年）では、後鳥羽上皇が幕府を倒そうとして失敗。逆に幕府が上皇を島流しにし、朝廷をコントロール下に置きました。
- → 関係性は「同じ学校の中で、生徒会（幕府）と校長室（朝廷）が対立して、生徒会が最終的に主導権を握った」イメージ。
室町幕府と朝廷の共存型関係（儀礼・勘合貿易など）
- 室町幕府は京都に本拠地があったため、朝廷と地理的にも近く、文化や儀式で協力することが多かったです。
- 将軍は権威を保つために、朝廷の行事や儀礼に参加し、海外との貿易（勘合貿易）でも朝廷の名義を使うことがありました。
- このため、朝廷は「象徴的な存在」、幕府は「実際に政治をする存在」として共存しました。
- → これは「校長（朝廷）が式典で話し、実際の学校運営は生徒会（幕府）が行う」という関係に近いです。
鎌倉幕府と室町幕府の違いまとめ
鎌倉幕府と室町幕府の仕組みの違いをまとめると以下のようになります。
| 拠点 | 主要役職名 | 地方支配 | 朝廷との関係 | |
| 鎌倉幕府 | 鎌倉 | 管領 | 幕府の直接支配 | 対立 |
| 室町幕府 | 京都 | 執権 | 守護大名 | 友好的 |
拠点: 鎌倉幕府は鎌倉に、室町幕府は京都に拠点を置きました。
主要役職: 鎌倉幕府では「執権」が実権を握り、室町幕府では「管領」が幕政を担いました。
地方支配: 鎌倉幕府では幕府（将軍や執権）が直接支配しやすい体制でしたが、室町幕府では地方の守護大名が力を持ち、分権的でした。
朝廷との関係：鎌倉幕府は朝廷とやや対立的（承久の乱など）、室町幕府は友好的でした。
文化・社会に見る違い
鎌倉文化の特徴：武家らしい実用重視の精神
- 鎌倉時代の文化は、「武士の暮らしに合ったシンプルで実用的な文化」が特徴です。
- 当時の武士は戦いと領地経営が中心だったため、華やかさよりも質実剛健（しつじつごうけん）なものを好みました。
- 例：
- 建築：禅宗様（ぜんしゅうよう）の質素な寺院。代表は円覚寺や建長寺。
- 文学：『吾妻鏡』や『平家物語』など、歴史や武士の物語。
- 宗教：浄土宗、禅宗、日蓮宗など、戦乱の時代に心のよりどころになる宗教が広まりました。
- イメージすると「派手な服よりも、動きやすい道着を選ぶ」という感じです。
室町文化の華やかさ：北山文化・東山文化・能・建築美
- 室町時代は京都を中心に、貴族文化と武家文化が融合した華やかな文化が発展しました。
- 将軍や大名が芸術や建築を保護し、日本独自の美が育ちました。
- 北山文化（3代将軍 足利義満の時代）：
- 金閣寺（鹿苑寺）に代表される、きらびやかで豪華な文化。
- 中国との貿易で輸入された美術品も使われました。
- 東山文化（8代将軍 足利義政の時代）：
- 銀閣寺に代表される、わび・さびを大事にした落ち着いた美。
- 茶の湯、花道、書院造の発展。
- 能（能楽）：世阿弥（ぜあみ）が芸術性の高い演劇を完成させ、上流階級のたしなみに。
- イメージすると「日常着もあるけど、特別な日は豪華な服や舞台で楽しむ」という感じです。
滅亡への道：それぞれの崩壊要因
鎌倉幕府崩壊の構図：御家人の不満と後醍醐天皇の討幕
- 鎌倉幕府は元寇（げんこう）（1274年・1281年）でモンゴル軍を撃退しましたが、戦いの成果としての土地がほとんど増えず、御家人に恩賞を与えられませんでした。
- その結果、御家人は生活が苦しくなり、幕府への不満が増加。
- 1331年、後醍醐天皇が倒幕（とうばく）を目指して挙兵。1333年には新田義貞らが鎌倉に攻め込み、幕府は滅亡しました。
- → 「働いたのに給料が増えず、社員が社長に反発して会社が倒産」みたいな状況です。
室町幕府の衰退：応仁の乱と守護大名の抗争
- 室町幕府はもともと分権的だったため、地方の守護大名が力を持ちすぎ、将軍の言うことを聞かなくなりました。
- 1467年に起きた応仁の乱（おうにんのらん）では、将軍家の後継争いに守護大名たちが巻き込まれ、西軍と東軍に分かれて11年間戦い続けました。
- この戦争で京都は焼け野原になり、幕府の権威は地に落ちました。
- その後は戦国時代に突入し、事実上室町幕府の力はなくなります（正式な滅亡は1573年）。
- → 「生徒会のトップ争いに学校中の部活が巻き込まれ、学校運営がめちゃくちゃになった」イメージです。
定期テスト対策のポイント
鎌倉時代や室町時代の幕府の仕組みについて、以下の点がテストでポイントになります。
執権と管領の違い
鎌倉幕府の「執権」が北条氏により実権を握ったこと、室町幕府の「管領」が幕政の実務を担当したことを覚えましょう。
また、鎌倉幕府の執権は「北条氏」が担い、室町幕府の管領は「細川氏など」が担っていたことも覚えておくとテストで点につながりやすいです。
幕府の所在地
幕府の本拠地も、鎌倉幕府と室町幕府で違っていました。
- 鎌倉幕府→鎌倉
- 室町幕府→京都
資料問題などでも、京都を示す記述があれば「室町幕府/室町時代の資料だ」というヒントになります。
守護大名の役割
室町時代には守護大名が地方を支配し、幕府からある程度の独立をしたことがポイントです。
鎌倉時代には鎌倉幕府が支配していました。
中学歴史の問題：鎌倉時代・南北朝時代・室町時代の一問一答
ここまで説明してきた「鎌倉幕府と室町幕府の仕組みの違い」も踏まえて、以下の問題を解いてみましょう。
テストで正解しておきたい基本問題
(1)モンゴル帝国を建国した人物は誰か。
(2)モンゴル帝国の都を大都に置き、国号を元に定めた人物は誰か。
(3)元に仕えて日本を「世界の記述」で紹介した人物は誰か。
(4)元の軍勢が二度日本に来襲した。このことを何というか。
(5)元寇などによって生活が苦しくなった御家人を救済するために幕府が出した法令を何というか。
(6)1333年に鎌倉幕府を滅ぼした天皇は誰か。
(7)後醍醐天皇が始めた、天皇中心の政治を何というか。
(8)京都と吉野に朝廷がわかれていた時代を何というか。
(9)室町幕府を開いた人物は誰か。
(10)国内の武士と主従関係を結び、国司に代わって国を軍事的・経済的に支配するようになった者たちを何と呼ぶか。
(11)南北朝を統一した将軍は誰か。
(12)室町幕府で将軍の補佐を担っていた役職を何というか。
(13)室町幕府で御家人の統率を担っていた役所を何というか。
(14)室町幕府で裁判を担っていた役所を何というか。
(15)室町幕府で財政を担っていた役所を何というか。
(16)足利義満は中国の王朝と貿易を開始した。その王朝名を答えなさい。
(17)日明貿易では勘合符を使って正式な貿易船を見分けた。このことから、日明貿易のことを何と呼ぶか。
(18)14世紀末に朝鮮半島では高麗が滅ぼされた。高麗に代わって朝鮮半島を支配した国はどこか。
(19)15世紀に沖縄島を統一した尚氏が建てた国を何というか。
(20)北海道は当時何と呼ばれていたか。
(21)蝦夷地に住んでいた民族を何と呼ぶか。
(22)豪族の安藤氏がアイヌ人との交易で使っていた拠点はどこか。
解答
(1)チンギス・ハン
(2)フビライ・ハン
(3)マルコ・ポーロ
(4)元寇
(5)（永仁の）徳政令
(6)後醍醐天皇
(7)建武の新政
(8)南北朝時代
(9)足利尊氏
(10)守護大名
(11)足利義満
(12)管領
(13)侍所
(14)問注所
(15)政所
(16)明
(17)勘合貿易
(18)朝鮮国
(19)琉球王国
(20)蝦夷地
(21)アイヌ民族
(22)十三湊（津軽）
テストで差がつく問題
(1)元の軍勢は二度日本に来襲している。①1274年の襲来、②1281年の襲来をそれぞれ何と呼ぶか。
(2)元寇のときの執権は誰か。
(3)元軍の戦い方で日本軍は苦しめられた。その戦い方を2種類答えなさい。
(4)鎌倉時代末期、荘園領主や幕府に従わない武士が現れた。その武士たちのことを何というか。
(5)当初後醍醐天皇の味方をし、のちに建武の新政に反対して後醍醐天皇を京都から追い落とした人物は誰か。
(6)後醍醐天皇は足利尊氏との戦いに敗れた後、どこに逃げて南朝を開いたか。
(7)日明貿易で貿易船を襲い、中国大陸沿岸をあらした集団を何というか。
(8)京都でお金の貸付を行っていた業者を何か。2つ答えなさい。
(9)朝鮮でつくられた独自の文字を何というか。
(10)高麗を滅ぼした朝鮮国を建国した人物は誰か。
(11)琉球王国は明国と日本や朝鮮半島、東南アジアなどの貿易の中継国をしていた。この貿易方法を何というか。
(12)室町幕府の役所で、関東などの支配を行っていた役所を何と呼ぶか。
(13)鎌倉府の長官を何と呼ぶか。
(14)日明貿易で日本が主に輸入していたものは何か。
(15)15世紀半ばにアイヌ民族と日本の豪族との間で戦いが起こった。アイヌ民族を率いていた人物は誰か。
(16)元帝国の都のあった大都は、現在のどの都市か。
解答
(1)①文永の役、②弘安の役
(2)北条時宗
(3)集団戦法・火薬（を使う武器）
(4)悪党
(5)足利尊氏
(6)吉野
(7)倭寇
(8)酒屋・土倉 ※順不同
(9)ハングル
(10)李成桂
(11)中継貿易
(12)鎌倉府
(13)鎌倉公方
(14)銅銭
(15)コシャマイン
(16)北京
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Step B……ハイレベルな応用問題
実力をさらにアップする問題を中心にしています。
Step C……難関レベルの発展問題
難関校の入試問題も含めた、難易度の高い問題を集めました。◆歴史の理解度を確認できる「テーマ別問題」と「総合実力テスト」つき
増進堂・受験研究社より引用
◆くわしい解説で、独学でも理解しやすい別冊解答
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最後に紹介するのは、難関国公私立入試対策の定番である「最高水準問題集」です。
難問をメインに構成されており、学校のテストで80-90点を安定して取れている人が入試に向けてレベルアップをするのに最適です。
「最高水準問題集」と「最高水準問題集 特進」に分かれており、「特進」のほうが難問ぞろいです。
歴史↓
歴史 特進↓
地理↓
地理 特進↓
公民↓
高校入試対策用↓
出版社：文英堂
特徴：
最高レベルの入試対策! 難関高校の入試を突破するための問題集
Amazonより引用
◇◆本書の構成は、本冊160頁 + 別冊 解答・解説64頁 となります。◆◇
特長1.過去の入試問題を徹底分析
国立・私立難関高校の入試問題を全分野から厳選。よく出る問題には「頻出」マークを、特に難しい問題には「難」マークをつけて、問題を解きながら、問題のレベルや傾向がわかるように配慮しました。
特長2.重点的に強化できる単元別の配列
各自の学習計画に合わせてどこからでも学習できます。また弱点分野の補強や、入試直前の重点演習もできます。
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まとめ
中学生向けに、鎌倉幕府と室町幕府の仕組みの違いを説明し、「鎌倉・南北朝・室町時代」の範囲で定期テストによく出てくる問題を一問一答形式でまとめました。
「元寇」「勘合貿易=日明貿易」「琉球：中継貿易」「足利義満：南北朝合一」「室町幕府の仕組み」など、テストで差がつく問題38問です。
※Z会の中学生コースについて下記記事でくわしく紹介しています。
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