高校生向けに日本史の一問一答問題と解説を用意しました。今回は奈良時代(天平文化の仏像、歴史書、文学など)です。
歴史総合や日本史探求の定期テスト対策、大学入試対策などにご活用ください!
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天平文化とは何か?
天平文化の時代背景
天平文化は奈良時代(710~794年)を代表する文化であり、律令国家としての日本が成熟期に入った時期に栄えました。
この時代は唐の影響を強く受け、国際的な文化が花開きました。また、仏教の隆盛とともに社会的安定を目指した聖武天皇の政策が天平文化の形成に大きく寄与しました。
奈良時代における文化の発展の要因
奈良時代の文化発展の背景には、唐との積極的な国際交流がありました。遣唐使を通じて進んだ学問や技術、思想が日本にもたらされ、これが日本独自の文化形成に活用されました。
また、中央集権化を目指す律令制度や仏教振興政策が文化発展を支えました。
天平文化が生まれるまでの経緯
天平文化は、飛鳥文化や白鳳文化など、以前の文化の基礎の上に発展しました。唐文化の受容と仏教思想の広がりが、天平文化を特徴づける要素となりました。
また、聖武天皇による仏教政策や大規模な公共事業が文化の基盤を整えました。
天平文化の特徴を押さえよう!
仏教文化の発展と聖武天皇の役割
天平文化を理解するうえで、聖武天皇の果たした役割が重要ポイントです。
聖武天皇による仏教振興政策
聖武天皇の時代、長屋王の変や藤原広嗣の乱が起きています。どちらも聖武天皇にとって近しい人物だったため、非常に大きなショックを受けたと言われています。
この経験から聖武天皇は、国家の安定と繁栄を祈念し、仏教を重視しました。以下の年表のように、その後の国分寺建立や大仏建立へとつながっています。
年号 | 出来事 |
729年 | 長屋王が謀反の疑いで自害する(長屋王の変) |
740年 | ・藤原広嗣の乱が起こる ・聖武天皇が恭仁京の建設を開始する |
741年 | 国分寺建立の詔が発布される |
743年 | ・大仏造立の詔が出される ・墾田永年私財法が施行される |
752年 | 東大寺大仏の開眼供養が行われる |
仏教寺院の建設や僧侶の育成を推進し、特に大規模な国家プロジェクトとして東大寺大仏の建立を行いました。
東大寺大仏建立の目的と影響
東大寺の大仏は、国家の安寧と疫病退散を願って建立されました。

この大事業は、市井の僧である行基を登用して当時の最先端技術を結集し、日本の仏教文化の象徴となりました。
国分寺・国分尼寺の設置
聖武天皇は、国ごとに国分寺と国分尼寺を設置し、地方における仏教の浸透を図りました。これにより仏教は国民の精神的支柱となり、地方社会の安定化に寄与しました。
「日本書紀」と天平文化の関係
「日本書紀」の完成と意義
「日本書紀」は、720年に完成した日本最古の正史です。天平文化の背景にある国家意識の高揚を反映しており、律令国家の歴史的基盤を示す重要な資料です。
天平文化と文学の関わり
「日本書紀」をはじめとする歴史書の編纂は、当時の知識層による文化活動の一環でした。また、漢詩や仏教経典など文学的活動も活発化しました。
奈良時代の歴史書の特徴
奈良時代の歴史書は、漢文で書かれ、唐文化の影響が顕著です。また、国家統治の正統性を示す意図が色濃く反映されています。
美術・工芸品が語る天平文化
天平文化は、唐に集まった国際色豊かな文化の影響を受け、華やかでエキゾチックな点が特徴です。
正倉院宝物が伝える技術と文化
正倉院に収蔵されている宝物は、天平文化の高度な技術を物語ります。唐文化の影響を受けた品々は、当時の国際交流の活発さを示しています。

仏像彫刻と奈良時代の信仰
天平文化では、仏像彫刻が特に発展しました。東大寺の盧舎那仏をはじめ、金銅仏や木彫仏が信仰の対象として広く作られました。
漆工芸や螺鈿細工の発展
天平文化では、漆工芸や螺鈿細工など装飾技術も発展しました。これらの技術は、工芸品に華やかさを加え、文化の豊かさを象徴しています。

天平文化が奈良時代の社会に与えた影響
奈良時代とほかの時代との違いが分かりにくいと感じる人も多いです。天平文化の特徴をしっかり把握しておくと奈良時代を理解しやすくなります。
教育と学問の普及
大学寮と教育制度
奈良時代には、官僚養成のために大学寮が設置されました。この制度は、律令国家の運営を支える知識人を育成しました。
留学生と天平文化への影響
遣唐使によって派遣された留学生が持ち帰った知識や技術は、天平文化の発展に寄与しました。また、留学経験者は国家運営にも活躍しました。
このように天平文化、もしくは奈良時代は、唐から知識や文化を持ち帰ることで発展しました。
天平文化と日本の国際交流
当時の唐は世界中から人や文化が集まる場所でした。その国際色豊かな文化が、遣唐使を通じて日本に持ち込まれていました。
遣唐使がもたらした新技術と思想
遣唐使によって、先進的な技術や思想がもたらされました。これにより、奈良時代の文化は国際的な視点を取り入れて発展しました。
奈良時代の国際性とその後の文化的影響
奈良時代の国際性は、後の平安文化にも影響を及ぼしました。天平文化の要素は、日本文化の独自性を形成する基盤となりました。
高校日本史のテスト頻出!天平文化を攻略する方法

天平文化関連の重要用語と年号一覧
- 重要用語: 聖武天皇、東大寺、日本書紀、正倉院宝物、長屋王の変、藤原広嗣の乱
- 重要年号: 720年(「日本書紀」完成)、743年(大仏造立の詔)、752年(大仏開眼供養)
記述問題に役立つ天平文化のまとめ方
記述例:「天平文化が奈良時代の社会に与えた影響を説明せよ。」→ 仏教文化の振興、国際交流、教育制度の充実を具体例とともに記述する。
天平文化を年表で覚える!効率的な学習法
奈良時代の年表を作成し、「東大寺大仏造立」や「日本書紀完成」などの重要事項を順序立てて整理することで効率的に学習できます。
710年 | 平城京に遷都される |
718年 | 『養老律令』が藤原不比等らによって撰定される |
723年 | 三世一身法が制定される |
729年 | 長屋王が謀反の疑いで自害する(長屋王の変) |
740年 | ・藤原広嗣の乱が起こる ・聖武天皇が恭仁京の建設を開始する |
741年 | 国分寺建立の詔が発布される |
743年 | ・大仏造立の詔が出される ・墾田永年私財法が施行される |
752年 | 東大寺大仏の開眼供養が行われる |
753年 | 唐より鑑真が来日する |
757年 | 橘奈良麻呂の変が起こる |
758年 | ・淳仁天皇が即位する ・藤原仲麻呂が「恵美押勝」の名を賜る |
764年 | ・藤原仲麻呂の乱が起こる ・孝謙上皇が重祚して称徳天皇が即位する ・淳仁天皇が淡路に配流される(淡路廃帝) |
769年 | 宇佐八幡宮神託事件が起こる(道鏡が天皇になり損ねる) |
784年 | 長岡京に遷都される |
785年 | 藤原種継が暗殺され、早良親王(桓武天皇の弟)が流罪となる |
なお、奈良時代の年表と主要な出来事の解説を以下の記事で紹介しています。
奈良時代の年表:奈良時代の流れや出来事の解説と年表を使った中学・高校のテスト対策の仕方を紹介
【高校日本史のテスト対策】天平文化(奈良時代の文化)の一問一答問題
(1)奈良時代は農業の生産性が向上したものの税負担の重さで農民の生活は苦しかった。山上憶良が農民の生活の苦しさを歌った歌を何といいますか。
(2)貧窮問答歌は何という歌集に収められていますか。
(3)『帝紀』『旧辞』は6世紀前半に作成され、天武天皇がある官人に暗唱させました。この官人は誰ですか。
(4)稗田阿礼が暗唱した『帝紀』『旧辞』を筆録して『古事記』にまとめた人物は誰ですか。
(5)『日本書紀』を編纂した人物は誰ですか。
(6)日本諸国の産物や伝説などをまとめた書物は何ですか。
(7)現存している日本最古の漢詩集は何ですか。
(8)万葉集は漢字の音に合わせて仮名を用いて書かれています。その仮名を何といいますか。
(9)律令制下では、官吏を養成するための機関がつくられました。そのうち、中央で貴族の子弟を養成する機関を何といいますか。
(10)律令制下では、官吏を養成するための機関がつくられました。そのうち、地方で郡司の子弟を養成する機関を何といいますか。
(11)石上宅嗣(いそのかみのやかつぐ)が設立した、日本最初の公開図書館を何といいますか。
(12)聖武天皇の遺物を納めた建物を何といいますか。
(13)正倉院の北倉と南倉は何という建築様式で建てられていますか。
(14)仏像のつくりかたで、粘土でつくる彫刻方法を何といいますか。
(15)仏像のつくりかたで、漆で塗り固めてつくる彫刻方法を何といいますか。
(16)東大寺法華堂日光・月光菩薩像は塑像、乾漆像のどちらですか。
(17)興福寺阿修羅像は塑像、乾漆像のどちらですか。
(18)唐招提寺鑑真和上像は塑像、乾漆像のどちらですか。
(19)東大寺法華堂室金剛神像は塑像、乾漆像のどちらですか。
(20)東大寺法華堂不空羂索観音像は塑像、乾漆像のどちらですか。
(21)741年聖武天皇は全国に国分寺・国分尼寺の設置を進める法令を出しました。この法令を何といいますか。
(22)743年聖武天皇は大仏を建てるという宣言をしました。この宣言を何といいますか。
(23)鑑真の伝記をまとめた『唐大和東征伝』を記した人物は誰ですか。
(24)行基を大仏建立に協力させるため、何という役職に任命されましたか。
(25)光明皇后は貧困者や孤児の救済のため何という施設をつくりましたか。
(26)光明皇后は貧困状態にある病院救済のために何という施設をつくりましたか。
(27)現存している日本最古の印刷物は何ですか。
(28)正倉院に納められている、現存している唯一の五本の弦を張った琵琶を何といいますか。
(29)仏教の力で国家の安泰を願うことを何といいますか。
(30)平城京を中心に奈良で栄えた6つの仏教宗派をまとめて何といいますか。
(31)平城京を中心に位置する、朝廷の保護を受けた7つの官寺を何といいますか。
解答
(1)貧窮問答歌
(2)万葉集
(3)稗田阿礼
(4)太安万侶
(5)舎人親王
(6)風土記
(7)懐風藻
(8)万葉仮名
(9)大学
(10)国学
(11)芸亭
(12)正倉院
(13)校倉造
(14)塑像
(15)乾漆像
(16)塑像
(17)乾漆像
(18)乾漆像
(19)塑像
(20)乾漆像
(21)国分寺建立の詔
(22)大仏建立の詔
(23)淡海三船(おうみのみふね)
(24)大僧正
(25)悲田院
(26)施薬院
(27)百万塔陀羅尼
(28)螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんのびわ)
(29)鎮護国家
(30)南都六宗
(31)南都七大寺
高校日本史の問題集
最後に日本史のおすすめ問題集を紹介します。
※関連記事:日本史文化史の参考書と覚え方
『金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本 改訂版』
1冊目は日本史参考書の定番、「金谷の日本史」です。古代~近現代まで3冊と文化史1冊の合計4冊に分けて解説してくれています。
内容はオーソドックスで、教科書をさらにくわしく解説してくれています。
すべてじっくり読むというより、問題集で問題を解きつつ因果関係が分かりにくいときに参考書として使う人も多いです。
特に、共通テストを受ける人は『文化史』だけでも読んでおくと役立ちます。

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流れを理解できるようになったら、問題演習をして記憶に定着させる必要があります。
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日本史一問一答【完全版】2nd edition (東進ブックス 大学受験 一問一答シリーズ)
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『よくわかる高校日本史探究』
学研が出版している「標準レベルまで」の参考書です。教科書よりも解説がくわしく、日本史探求に苦手意識を持っている人も理解しやすいです。
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天平文化に関するQ&A
Q1: 天平文化とはどのような文化ですか?
A: 天平文化は奈良時代を代表する文化で、律令国家の成熟とともに発展しました。仏教の隆盛を背景に、東大寺大仏の建立や国分寺・国分尼寺の設置が行われ、唐文化の影響を強く受けた国際的で華やかな文化です。
Q2: 天平文化が発展した背景にはどのような要因がありますか?
A: 唐との国際交流や遣唐使を通じた技術・思想の受容、聖武天皇の仏教振興政策、律令国家の安定が天平文化の発展を支えました。また、疫病や災害を克服するために仏教が推奨されたことも大きな要因です。
Q3: 聖武天皇が天平文化に与えた影響は何ですか?
A: 聖武天皇は、仏教を国家の安定の基盤と考え、東大寺大仏の建立や国分寺・国分尼寺の設置を行いました。これにより仏教文化が広がり、天平文化の象徴ともいえる壮大な建築や工芸品が生み出されました。
Q4: 「日本書紀」は天平文化とどのように関わっていますか?
A: 「日本書紀」は720年に完成した日本最古の正史で、天平文化の国家的な文化活動を象徴する作品です。律令国家の歴史的基盤を示し、当時の国家意識の高揚を反映しています。
Q5: 天平文化の美術や工芸品にはどのような特徴がありますか?
A: 天平文化の美術・工芸品は、唐文化の影響を受けながらも日本独自の様式が発展しました。正倉院に収められている宝物は、漆工芸や螺鈿細工など高度な技術を示し、仏像彫刻では東大寺大仏などが制作されました。
Q6: 天平文化が教育と学問に及ぼした影響は?
A: 天平文化の時代には、大学寮などの教育機関が整備され、律令官僚を育成するための制度が確立されました。また、遣唐使を通じて学んだ知識や技術が導入され、日本の学問の発展に大きく寄与しました。
Q7: 天平文化は国際交流にどのような影響を与えましたか?
A: 遣唐使を通じてもたらされた唐の先進技術や思想が天平文化を豊かにしました。奈良時代は日本が最も国際的だった時期の一つであり、その影響は後の平安文化にも受け継がれました。
Q8: 天平文化関連で高校日本史のテストに出やすいテーマは何ですか?
A: 高校日本史のテストでは、聖武天皇の仏教政策、東大寺大仏の建立、正倉院宝物、「日本書紀」などが頻出テーマです。また、天平文化の影響や特徴についての記述問題も出題されることがあります。
Q9: 天平文化を効率的に覚える方法はありますか?
A: 重要な出来事を年表に整理し、時系列で覚えるのが効果的です。また、「東大寺大仏建立」や「日本書紀完成」などのキーワードを具体例として覚え、背景や影響をセットで理解することで記憶が定着しやすくなります。
まとめ
いかがでしょうか。
高校生向けに日本史で奈良時代の文化(天平文化)の一問一答を用意しました。日本史探求のテストに出やすいものをまとめています。
塑像や乾漆像の仏像例、古事記や日本書紀の編纂者、悲田院と施薬院の違い、南都六宗、南都七大寺など。
定期テスト対策、大学入試に向けてご活用ください。
奈良時代のほかの範囲の問題や解説を下記の記事で紹介しています。
日本史の一問一答:奈良時代の統治体制の問題や解説(班田収授、租庸調、二官八省一台五衛府など)
日本史の一問一答:奈良時代の政治・外交の問題や解説(遣唐使、平城京、蝦夷討伐、土地私有など)
奈良時代の天皇:各天皇の事績とその時代の出来事や中心人物を解説します
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