中学受験をするときに、塾は第1志望校合格に向けて大きな武器になります。ひと昔前なら中学受験は集団塾が当たり前でした。今はその状況がかなり変わりつつあります。
個別指導塾と集団塾の併用や、個別指導塾のみで受験対策をしている家庭もかなり多くなっています。
個別指導塾には集団塾のようなカリキュラムがありません。中学受験対策を任せて本当に大丈夫なのでしょうか。
結論を言うと、個別指導塾だけで中学受験対策は問題ありません。
むしろ、子どもの自主性を育てながら受験勉強をしたいご家庭には個別指導塾のほうが合っています。
今回の記事では、個別指導塾の特徴と中学受験に向けてどのように活用すればいいのかを説明いたします。
この記事は下記の方向けです。
- 中学受験に向けて塾選びを考えている方
- 塾に通われているが成績の伸びに悩まれている方
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中学受験生はどのくらい塾に通っているのか
中学受験は高校受験とちがって選抜試験です。受けたい子だけ受けるため、入試問題のレベルがたかく、対策の難易度がたかいのが特徴です。
そのため、塾に通って対策する子が多いです。
実際、どれくらいの中学受験生が塾に通っているのでしょうか。
下記のグラフをご覧ください。
このデータは、首都圏の偏差値60以上の私立中学に通っている子を対象にした通塾調査です。

この調査によると、小学校3年生の2月(新小4)に通い出した子が%と1番多くいます。
その一方で、塾なしで中学受験をした子も全体の20%以上もいます。
中学受験対策で個別指導塾はどのくらい利用されているのか
塾に通って受験対策する場合、
個別指導塾を利用している人はどれくらいいるのでしょうか。
以前であれば、集団塾・個別指導塾の位置づけは下記のとおりでした。
- 進学目的→集団塾
- 補習目的→個別指導塾
この位置づけからいえば、
- 中学受験→集団塾
- 小学校の苦手フォロー→個別指導塾
となりそうです。
小学生で個別指導塾に通う子はかなり少数派で、中学受験となるとかなり少なそうな気がします。
ところが、この状況はかなり変わってきています。
下記のグラフは小学生全般を対象に、通塾している子向けに集団塾と個別指導塾のどちらに通っているかを調査した結果です。

個別指導塾に通っている子は45.2%、
集団塾に通っている子は49.2%とほとんど同じです。
塾といえば今や2人に1人は個別指導塾なのです。
この変化は中学受験生の塾通いにも表れています。
中学受験を予定している子を対象に、塾の授業形態(集団・個別など)を調査した下記の結果をご覧ください。

集団学習を受けている子が全体の62.7%と1番多いですが、
個別指導塾に通っている子も25.9%います。
4人に1人は個別指導塾で中学受験をする時代なのです。
この調査は首都圏対象なので、地域によって状況は異なるでしょう。
ただ、オリコン「おすすめの中学受験 個別指導塾 首都圏ランキング・比較」で明光義塾やスクールIEのような大手個別指導塾が中学受験指導で満足度ランキング5位までに入っているのをみても、全国展開している大手個別指導塾が進学指導にも力を入れているのがわかります。
まだ個別指導塾での中学受験の実績が乏しい地域でも、この流れは波及していくでしょう。

個別指導塾で中学受験対策をする方法
それでは、中学受験生が個別指導塾に通えば、集団塾と同じように受験対策を受けられるのでしょうか。
現実的にそれはむずかしいかもしれません。
集団授業ならではの「ライバルとの切磋琢磨」を個別指導に求めても、授業環境がちがいます。
前述のような変化は、受験対策方法の多様化です。
集団塾の対策スタイルとは別のスタイルを選択するご家庭がふえているのです。
「(集団)塾にお任せして、親は塾の言うとおりに宿題管理とフォローをする」
以前はこれが当たり前でしたが、
今では受験スタイルはさまざまなのです。
受験対策を塾ではなく家で行って難関中学に合格している家庭も多数(2割)いらっしゃるぐらいです。
こうした変化のなかで、個別指導塾の特徴を活かした中学受験対策が可能なのです。
そもそもカリキュラムについては、どの個別指導塾も対応できます。
中学受験内容はひと通り勉強する必要があるので塾によって内容が変わったりしないからです。
志望校の入試傾向に応じた対策は、入試問題をみればわかります。
では個別指導塾の1番の特徴は何かというと、
集団塾にくらべて自由時間が長いことです。
小学校6年生になると、集団塾では週4-5日の授業日数が当たり前です。
塾の宿題で毎晩遅くまで起きている子も多いです。
自由時間と言える時間はほとんどなくなり、習い事もつづけるのがむずかしくなります。
逆にいうと、そこまで受験対策に集中するのが集団塾での受験対策のメリットです。
一方の個別指導塾はどうかというと、
小学校6年生でも授業は週3日程度が多いです。
宿題の量は塾や教室によってちがいますが、
集団塾にくらべてかなり少なく、週2日もあれば終わるところが多いでしょう。
1週間のなかで授業と宿題で5日費やしても、残り2日は空いています。
この特徴を活かした受験対策のポイントは3つあります。
【個別指導塾の受験対策】
①受験勉強に対して子どもに主体者意識を持たせる
②子どもの単元理解度をあげ、思考力を養う
③知的好奇心を刺激するタイミングを日常的にもつ
この3つのポイントに沿って個別指導塾の活用方法を説明します。
子どもに主体者意識を持たせる
受験生(子ども)の多くは、受験したいと自ら希望して受験勉強をはじめています。
ですが、やる気を失っている子どもは多いです。
下記のグラフは中学受験生の保護者の方が子どものサポートについて悩んでいる内容を調査した結果です。

調査の結果、中学受験生の保護者の悩み第1位は
「やる気の引き出し方・モチベーション管理」でした。
この項目が圧倒的に1番でした。
これだけみると、「受験生なのにやる気ないの!?」と思ってしまいます。
もちろん、やる気がないわけではありません。
問題がむずかしくなり勉強の負担が増えたために、やる気が消えてしまったのです。
問題をサクサク解けて成績がどんどんうなぎ昇りであれば、モチベーションを失うこともないでしょう。
順調なときは誰でもがんばれます。
親から言われたから、塾の先生に怒られるから勉強するという子は、勉強が苦しくなってくると勉強から逃げようとします。
苦しいときにがんばれる子に第1志望校合格の可能性があります。
諦めずに粘れるかどうかは、受験勉強を自分事としてとらえられるかどうかが大きいです。
※関連記事:中学受験やめようかなと思ったら:やめどき・判断基準3つ
子どもと一緒に勉強スケジュールを考える
集団塾の場合、授業・宿題・自習で子どものスケジュールを埋めてしまうことで、誰でも一定以上の学力まで引き上げようとします。
個別指導塾であれば、スケジュールにかなり空きがあります。
その空き時間に何をするかを自分で決める余裕があります。
ここに本人の意思を入れるのです。
志望校に合格したいなら、どれだけの勉強量があるのかを調べさせ(テキストのページ数を数えるなど)、自分のスケジュールに入れさせるのです。
小学生ですから、もちろん1人ではむずかしいでしょう。
親がサポートしてスケジュールの作成と管理を一緒に行います。
※関連記事:【中学受験】勉強スケジュールの作成・管理方法を解説
受験勉強の全体像を自分で把握すれば、勉強に対して主体性が出てきます。
勉強に気が乗らない日や苦手単元で苦しんでいる時期も当然あります。
そういうときに、
「いつまでにこの単元を終わらせて、次の予定に移りたい」
と自分で考えて、空き時間にちょっと復習しようかなと自ら取り組むようになります。
勉強していてどうしてもわからない問題も出てきますが、
そもそも通っている塾の授業が個別指導です。
分かるまで解説と演習を繰り返せます。
単元理解度をあげ、思考力を養う
中学受験の問題は小学校で習わない内容がメインです。
新しく習うことがたくさんあります。
受験に限りませんが、新しいことを教わったとき、1度で完全に理解できることはめったにありませんよね。
- 自分でもう1度かみ砕いて理解しなおす
- いろいろなパターンの問題を解いてみる
この作業をとおして徐々に理解を深めていきます。
その点、個別指導塾は集団塾より自分の復習時間をながく持てます。
納得感がでるまで繰り返し復習してみましょう。
※関連書籍:『自己肯定感と脳科学で小学生は3倍勉強上手になる』
答えが出せたら終了ではなく、理解して問題に正解できるまで繰り返すのです。
次の授業、次の宿題がすぐ待ちかまえているわけではありませんから、
あわてて解法を暗記する必要はありません。
理解できるまで繰り返し解いてみましょう。
理解しようと頭をつかって考えると、問題や解法の理解が進みます。
そうすると、応用力があがります。
算数の「割合と比」や理科の「てこ」の問題など、多くの中学受験生が頭を抱える箇所にも対応できる力がつきやすくなります。
※関連記事:【中学受験】割合の問題の解き方
※関連記事:【中学受験】「比」の解き方
知的好奇心を刺激する
最後のポイントは「知的好奇心の刺激」です。
勉強は効率よく進めることも大切ですが、効率性だけを求めるとつまらなくなります。
勉強は知的好奇心を満たす行為です。
知的好奇心をくすぐるような寄り道をするほうが、モチベーションがつづきます。
前述の調査でみられるように、
やる気を失っている子どもの対応に多くの保護者の方が苦戦されていらっしゃいます。
授業と宿題で追われる毎日なので、寄り道をする時間がもてないのです。
個別指導塾なら自由時間が長めにあるわけですから、知的な寄り道をする時間を比較的取りやすいです。
個人的な経験ですが、具体的には下記のような行動を取る子どもが、個別指導塾で成績が上がりやすいです。
- 夜空を見上げて星や星座をみながら理科の「天体」で学んだ内容を思い出す。
- 自分でテスト問題を作成して弟や妹に解かせて優越感にひたる。(単元と出題者の意図への理解が深まります)
- 塾への送迎時間と移動距離から平均の速さを出してみる。別のルートを同じ速さで進んだら送迎にどれくらい時間がかかるか割り出してみる。
- 宿題をするのに持ち出してきた国語辞典をつかい、宿題に関係ないページをのんびりながめて楽しむ。
気づくと1人でこういう寄り道をしている子もいますが、最初のうちは保護者の方が声かけをして一緒に楽しんであげるほうがいいでしょう。
慣れてくればときどき自分でそういう時間を楽しむようになります。
寄り道のし過ぎで勉強を忘れてしまわないか気になるかもしれませんが、こういうときのためにも勉強スケジュールを一緒に作成しておくのです。
勉強スケジュールの進捗管理を子どもにさせておくとさらに便利です。
寄り道しすぎたなと思ったら、少しずつですが自分で考えて予定を調整できるようになります。
※関連記事:【中学受験】国語辞典を使う習慣をつくって語彙力と読解力を伸ばす方法
まとめ
中学受験生の4人に1人は個別指導塾だけで受験対策をしています。
個別指導塾での受験対策は、授業・宿題以外の自由時間が比較的長くとれるという特徴があります。
子どもの自主性を育てながら受験勉強に励むスタイルを取りたい方はぜひ検討してみてください。
また、個別指導は対面だけでなくオンライン個別指導もあります。
オンラインだと、保護者の方が仕事で忙しくても塾への送迎や準備をする必要がありません。共働き家庭にとって非常に便利な授業形態です。
しかもリビングで授業中の様子をみられます。
※関連記事:【中学受験】オンライン家庭教師だけでできる受験対策の仕方:メリットと始め方
また、オンライン授業のようにリビング学習で中学受験に向かうなら、通信教育もおすすめです。
中学受験の専門コースも開設され、多くの小学生が難関中学にも合格を勝ち取っています。
※関連記事:小学生向けオススメの通信教育5社
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